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新清士の「メタバース・プレゼンス」 第9回

メタ「Quest Pro」仕事に使えるかは疑問だが、とりあえず予約した

2022年10月20日 09時00分更新

文● 新清士

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やっぱり高めの価格設定、仕様的には「欲張りセット」

 そして何より気になるのはやっぱり、1500ドル(22万6800円)という価格ですよね。新開発の有機ELやパンケーキレンズがコストを相当引き上げたのだろうと思いますし、コントローラーにセンサーとチップを搭載したことも大きそうです。RAMやストレージなどの全体的な仕様を見ても「欲張りセット」だなという印象がありました。

 個人的に予約をしてしまったのは、新しい体験をしたいというか、VR系の人間としてはつっこまないと仕方がないというところがあります(笑)。それでも怖いのは、本当に価格相応の価値があるのかということですね。

 この価格はこれまでのVR系の買い物でも最高クラス。最近の製品で言えば、エルザ・ジャパンが日本で販売代理店をしているフィンランドVarjo の「Varjo Aero」くらいじゃないでしょうか。Varjo Aeroを持っている人の評価はとても高いんですが、これくらいになるとPC VRとゲーミングPCをセットで買えるくらいの価格になっちゃいますからね。ゲーミングPCを買えば稼働率は高そうですが、Quest Proは果たして同じだけの稼働をしてくれるんだろうかと。1500ドルの製品でやるのが「Beat Saber」だったら……(笑)。Beat SaberのAR機能も実験的なものとして紹介されていたので、必ずやると思うんですけど。

 いずれにしても、Quest Proを購入するのがQuest 2とは違う層になることは価格的には避けられないですよね。Quest 2はコンシューマー向けのローエンド製品で、誰でも手に入れるところがコンセプトになっていて、年末もゲーム機的な商品展開をすることで成功してきたので、その流れを今年も継続すると思います。Quest Proはそれに比べてはるかにリッチで、発表を見ているだけでも、本当に最高の体験を追求したのだろうということがよくわかりました。

 Quest Proは、VRハードの歴史の中、本格的なAR機能に取り組んだハードとして、常識を大きく変える製品になることは間違いないと思います。ただ、価格の高さから普及には限界を抱えることは間違いなく、まずは一部の人が未来を垣間見るという状況になるのでしょう。それでもやはり実際に手にしてみないと、ここに長期的な未来があるのかどうかははっきりとしません。

 その意味で10月25日の発売日を楽しみに待ち、自分のハードを入手できたら使い込んで可能性を探っていきたいと思います。

 

筆者紹介:新清士(しんきよし)

1970年生まれ。「バーチャルマーケット(Vket)」で知られる株式会社HIKKY所属。デジタルハリウッド大学院教授。慶應義塾大学商学部及び環境情報学部卒。ゲームジャーナリストとして活躍後、VRゲーム開発会社のよむネコ(現Thirdverse)を設立。VRマルチプレイ剣戟アクションゲーム「ソード・オブ・ガルガンチュア」の開発を主導。著書に8月に出た『メタバースビジネス覇権戦争』(NHK出版新書)がある。

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