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現場DXを推進するインフラ版Figmaが登場。土木・建設業界向けコラボレーションツール「LinkedViewer」

強力な3Dモデル処理が実現したユーザー間での可視化・共有ツール

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このスタートアップに聞きたい

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点群データから自動で鉄筋を検出し3Dモデル化する「Modely」

 点群データは3Dスキャナーなどによって現実空間内の物体の位置情報および色情報を計測したデータで、人の立ち入れない場所のデータを取得したり、設計と実際に製造したものとの差異の確認などに利用できる。一方でノイズが入りやすかったり、そのままではCADで利用できないなど、具体的な業務への適用には課題があった。

 そこでDataLabsは点群データから3Dモデルを自動生成するツール「Modely」を開発した。Modelyは配筋の点群データからその3Dモデルを自動生成し、建設現場における基本的な現場検査の1つである配筋検査をPC上で実施できるようにする。

 「これ(下図)は国土技術政策総合研究所の建設DX実験フィールドで取った点群データです。点群データだけだとピッチを測るにしてもノイズが乗ってしまい正確な値を測るのが難しかったり個人差が生じてしまう。Modelyを使うと配筋検査をする領域を3回クリックするだけで配筋の3Dモデル(下図中の赤い部分)を生成できる。

 そして配筋のピッチだとか本数、ラップ長などを全自動で帳票にできる。写真やコメントも任意の箇所に入力できるので、それらを複合的に見て、現地に行かなくても配筋検査が実施できるようになります。開発にあたっては国土交通中部地方整備局様と連携しつつ、発注者・受注者間でメリットがあるシステム設計を何度も協議したり実証実験も繰り返しています」(田尻氏)

 配筋検査を容易にする技術に対するニーズは高く、例えば国土交通省中部地方整備局が2021年12月に募集した55種類の技術シーズの1つに挙げられていた。同局による評価の結果、DataLabsのModelyが採択されている。

国土交通省中部地方整備局HPより

3Dモデルの共有&コミュニケーションツール「LinkedViewer」

 建設の現場には多くの企業・作業者が関わってくるため、その進捗を共有することは作業の安全や効率性にとって極めて重要になる。特に土木現場では作業が進むにつれて山の形や植生が変わっていくため、常に最新の3Dデータによって作業者全体で情報共有しておかなくてはならない。

 また、建設業界では作業開始前に設計図等を使って作業者全体で合意を取っておくものの、実際に作業が始まってみると設計変更が頻発することが少なくない。設計変更が発生した場合も、コストにおいても大きな差異が発生する場合が多い。

 誰がいつどのような目的で変更を適用することになったのか、その履歴を残しておかなくてはトラブルの原因となってしまう。

 「工期延長や費用負担の可否やその協議で時間が掛かるということは少なくない。だから3次元モデルや点群データで現場の状態をデジタルツイン的に表現できる環境の中で、『現状のこの部分がこう設計と変わっているのでこういう対策が必要です』とか『その設計変更のために○か月の工期延長が必要になりそうです』といった、具体的な調整や合意形成を行なえるような環境提供までできるような世界観が作れると業務効率化ができるのではと感じている。

 一方で建設変更はセンシティブな協議にもなるので、どのようにそれが実現できるのか慎重に関係者の皆様にヒアリングしながら最適な形を模索したい。また、現場視察のために往復数時間を掛かってしまっていて、その回数を減らしたいというのが発注側・受注側のインセンティブになっている。(3Dデータを共有して)それを見ながら、これで行きましょうという合意形成を現場に行かずにやりたいという声がある」(田尻氏)

 「LinkedViewer」は、土木工事現場や建築物をブラウザに3D表示する機能をベースに、表示された3Dマップ上にコメントや写真・帳票データなどへのリンクを貼り付けることによって、利用者間での情報共有を促進するコミュニケーションツールだ。

 Adobeの買収でも話題になったデザインコラボレーションツール・Figmaの土木・建設版と説明するのがわかりやすいだろう。1つの3Dデータ化された現場を舞台に、関係者が容易に閲覧やコメント、データ調整などが可能となっている。

 もちろんコミュニケーションツールである以上に、現場のニーズに対応した機能も重視されている。表示されている3Dマップ上で距離計算や面積計算などが可能で、例えば法面(のりめん。切土や盛土により作られる人工的な斜面)に吹き付けるコンクリートの量の見積もりなどが簡単に計算できるようになっている。

2021年7月3日静岡県熱海市土石流災害ドローンALB計測データ、©静岡県交通基盤部建設政策課未来まちづくり室、【表示4.0 国際】ライセンス https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/

 「例えば土砂災害が発生したときには、工期の延長の可能性を調べるためにドローンを飛ばして点群データを取ったりしますが、LinkedViewerを使えば(共有リンク経由で)そのデータを誰もがブラウザやタブレットで見れる。どのくらい土砂が漏れているか体積を測れるようになると、ダンプ何台分追加が必要だとか、さらには工期がこのくらい遅れるなとかいった進捗管理が可能となる。具体的な数字に基づいた合意形成ができる。

 こういう形のコラボレーションツールにしていくというところで価値を感じてくださっている方も多い。ベータ版で30アカウント位を使ってもらっていて、その中には鹿島建設様やフジタ様、建設コンサルさんだと応用地質様とか八千代エンジニヤリング様等、大きな会社さんから地方の方まで使ってもらっている。建設業の中でもっと広く、いろんな業種業態の方に使っていただきたい」(田尻氏)

 また、点群データだけでなく3Dモデルデータも入れられるようになっているため、下図のように建築物の点群データに基礎杭等のデータを統合モデル的に表示できる。この3Dモデルは利用者が作成しておく必要はなく、LinkedViewerに入力した地層データや位置データから自動生成させることができる。

 なお、LinkedViewerも国土交通省中部地方整備局が募集した技術シーズの1つとして採択されている。

国土交通省中部地方整備局HPより

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