弁理士の日にスタートアップが語った「知財活動をやって良かったこと」
令和4年度弁理士の日記念式典「スタートアップ×知財~成功の秘訣!~」レポート
これまで知財関係で困ったこと、トラブル、失敗
4つ目の質問は、「これまで知財関係で困ったこと、トラブル、失敗」について。自分自身の知識が浅いということと、スタートアップにありがちな自分たちの事業を説明するが弁理士などに理解してもらえないという認識のギャップがあったと宮城氏は回答する。四六時中自分の事業のことを考えているメンバー間では1を聞いて10を知るような感覚になっているが、そういった関係にない弁理士などの社外の人に自分たちの事業を説明して理解してもらう重要性を知るきっかけだったと振り返った。
安高氏からは、弁理士としても新しい業界の知識を仕入れ続けないといけないとコメントがあった。
梶氏からは、受託開発を行なうことが多く、大企業との取引の中で契約に関して紛糾することが多いという。特に知財をすべて企業側が得るような契約など非対称性の高い要求が多く困っているという。公正取引委員会のスタートアップとの関係性に関する文書などガイドラインになるものが出たことで交渉も楽になったという。
安高氏は、今でこそオープンイノベーションと言われて経産省でもモデル契約書の雛形が公開されるなど、公的機関の文書が役に立つ局面があるので、ぜひ活用してほしいとコメントがあった。
佐藤氏も弁理士事務所によって出願の可否の判断が異なったことなどがあり、事業を進めるべきかどうか迷ったことがあると振り返った。安高氏も、大企業の場合には知財に関する出願フローが定まっているので比較的スムースだが、スタートアップにはそういったものが整っていないため弁理士側にもヒアリングするなどのスキルが必要になるとコメントがあった。
最後に出たのは、「今後の事業の展開、その中で知財をどう活用するか」という質問だ。
宮城氏は、今後は知財の登録活用が重要になると見込んでおり、それは法人向けのFintechになると予想している。今までは個人向けが主流だったが、今後法人でも働き方の多様化によって新しい事業者向けの金融サービスのニーズが高まる。顧客が欲しいというものを作る段階から、欲しいという声はないが実際は求めているものを作ってゆくステージになると、本当に「発明」になると知財の重要性をにじませた。
梶氏は、経営層ではないので事業の展望を語るのは難しいが、受託開発をAIプラットフォーム事業としているのは、AIのプラットフォーマーになりたいという目標があるためで、その時にプラットフォームの中心となっているAIモジュールを守れるようになっておきたい。守るための知財として活用してゆきたいと展望が述べられた。
佐藤氏は、人が幸せに生きるための技術だと思っているので、社会とつながって生きがいを持つ、存在価値を考えられる知財に集中していきたい。国や人種などを超えてあらゆる人が必要とする普遍的な価値を求めて国内外の知財へとつなげていきたいと表明。
安高氏は今回のパネルディスカッションを振り返り、スタートアップのリアルが聞けたと評価。こういった話を受けて弁理士など知財専門家もスムーズな支援ができるようにしていきたいと締めくくられた。