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好きなキャラとつながるオタク的スタートアップビジネス

かーずSPが聞くデジタルコンテンツスタートアップの最前線 株式会社any style 代表取締役CEO 萩原湧人氏インタビュー

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「受付ちゃん」「大森杏子」とコラボ中、ゆくゆくは自社オリジナルIPも立ち上げたい

───最近のトレンドであるVTuberとは、ユーザーの体験は違うのでしょうか?

萩原:VTuberは個性的な「中の人」がアバターを被った配信者さんで、基本的な配信形式は一対多なります。僕たちはキャラクターとの一対一感覚を磨いていきたくて、自分の「推しキャラ」から自分だけに直接メッセージが届くような体験を作っていきたいと考えています。

───声優やキャラが、自分だけに語りかけてくれるところがミソなのですね。「dear.」では、声優ご本人と二次元キャラクターがいます。

萩原:アイドル系のメッセージアプリから着想しているので、リリース当初から声優さんご本人に配信していただいております。今後はキャラクターからメッセージが届く体験も提供していくために、2022年夏から人気イラストレーター天城しのさんのオリジナルキャラ「受付ちゃん」とコラボさせていただきました。

萩原:ボイスは「ウマ娘 プリティーダービー」のダイワスカーレット役などで人気の木村千咲さんに、魅力的な声を吹き込んでいただきました。「受付ちゃん」とつながっている感覚が、よりダイレクトに伝わると思います。第二弾として「大森杏子」のコラボも開始しておりまして、こちらの担当声優は加隈亜衣さんです。

───「受付ちゃん」や「大森杏子」とコラボした、その次の展開は考えてらっしゃいますか?

萩原:今回は他社さんのIPで、半年間の限定で運営しています。それがうまくいけば、自社でもキャラクターを作っていきたいですね。

───そのうちユーザーが送ったメッセージを、AIで個別に応答してくれる未来が来るかも……なんて想像してしまいます。

萩原:僕は元々、大学時代にそういうChatbot AIを作っていたこともあります(笑) 他にも音声合成や声質変換の分野で音響モデルの構築などもやっていました。そういったテクノロジーも駆使して、より高いコミュニケーション体験を提供したいと考えています。

───「dear.」にAndroid版の予定はあるのでしょうか?

萩原:iOS版のリリースからAndroid版に対する多くのご要望を受けておりまして、ぜひ近々開発に着手したいと思っています。

「声優の心地いい声に癒やされたい」別事業で潜在ニーズを発掘

───株式会社any styleさんではPodcast番組、音声メディアの制作を支援する「ear.style studio」も手掛けてらっしゃいますよね。

萩原:Podcast番組を作りたい企業様に対して、番組の企画と制作からランキングを上位にあげるためのマーケティング施策まで一気通貫でご提供しています。

───音声番組をつくるのはわかるのですが、Podcastで上位に表示されるようにできるんですか?

萩原:Apple Podcastを始めとして、SpotifyやGoogle Podcastなどのアルゴリズムについて一通り知見を溜めてきました。コンサルティング的なサービスとして、番組を作るだけじゃなく、どう伸ばしていくかも含めて実践できます。

───Podcastにも、Google検索で上位に上げるSEOのようなテクニックがあるのですね。

萩原:はい、GoogleやYouTube、TikTokなんかはSEOがだいぶ周知されているんですけど、Podcastのハックに関しては、まだ世間的には知られていません。Podcastの番組を伸ばしていくお手伝いもできる、というのは大きなアドバンテージになります。

───「ear.style studio」の業務は「dear.」とはリンクしていないのですか?

萩原:そうですね、「ear.style studio」は法人向けサービスですので切り分けています。ですがPodcastでビジネス系、カルチャー系など様々な音声コンテンツを試していたところ、その中でボイスドラマが一番聴かれていたことが、「dear.」の着想につながっています。

───といいますと?

萩原:ボイスドラマをヘビーに聴いてくださっていたユーザーさんにヒアリングしたところ、「何度も同じボイスドラマを聴くのは、声が心地よくて好きだから」というご意見を頂きました。ジムでトレーニングしながら聴いたり、家事をしながら聴いたり、音楽みたいに繰り返し聴いてくださっていることがわかったんです。

───物語を楽しむだけではなく、声優の演技する声そのものを魅力に感じて、聴いていたというのは興味深いですね。

萩原:心地いい声に癒されているというご意見が多くて、ボイスドラマは好評でした。ですがボイスドラマの制作は大変でカロリーが高いんです。脚本を作って、スタジオのスケジュール管理など事務処理があり、声優さんに収録してもらい、最後に編集、演出を行う……作業工程が多いんです。その中で声優さんの声が一番のコアバリューだったら、まずはそこに特化した方がいいと気づいたのが、弊社の最初のピボット(方向転換)です。

───声優ファンというコア層に焦点を絞ったのには、そういう理由があったのですね。

萩原:国内にはアニメファンが600万人、声優ファンが100万人存在するという統計があるのですが、声優ファンはアニメファンでもあると思っています。「声優ファンであるならば、全員アニメが好き」という部分集合の関係ですね。最初に声優ファンに向けたセグメントを切って、そこからアニメファン向けにコンテンツを拡張していけば、我々が対象とする市場も大きくなっていくと考えます。

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