自動配送ロボの国内実用化を進めるには?アイシン、ドコモ、東芝、LOMBYが講演
「自動配送ロボのラストワンマイルシリーズ03」レポート
2022年7月22日、NEDO講座「自動配送ロボのラストワンマイル」シリーズ03が開催された。本シリーズは、令和2年度補正NEDO事業「自動走行ロボットを活用した新たな配送サービス実現に向けた技術開発事業」で得られた実証実験の成果を発表するもの。3回目となる今回は、株式会社アイシン、株式会社NTTドコモ、株式会社東芝の実証事例を紹介するほか、特別講演としてLOMBY株式会社が登壇し、自動配送ロボットの国内で実用するための要素を解説した。
冒頭では、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) プロジェクトマネージャー/主査 鶴田 壮広氏が登壇し、NEDO講座の概要を説明した。
自動配送ロボットは、ラストワンマイル配送におけるドライバー不足の解消、買い物弱者対策、非接触型の配送サービスとして、早期の実装が期待されている。
この4月には低速・小型の自動配送ロボットの実用化に向けた制度化を含む道路交通法の一部を改正する法律が成立し、2023年までに施行される予定だ。
2022年2月には、民間による一般社団法人ロボットデリバリー協会が発足され、自主的な安全基準の制定や認証の仕組みづくりに着手している。
NEDOでは2020年度から配送ロボ事業を実施し、自動走行ロボット・システムの実用化および配送サービスの社会実装を目標に研究開発に取り組んでいる。NEDO講座「自動配送ロボのラストワンマイル」では、本事業に参画した10テーマ12社の実証成果を5回に分けて発表していくもので、本セミナーはその3回目となる。
なお、2022年度以降の事業では、より事業化・サービス化を意識した目標を設定し、4事業者を採択。2022年~2024年度までの3年間にわたり、自動配送ロボットの研究開発を推進していく計画だ。
株式会社アイシン「施設内における移動/配送サービスへの取り組み」
トヨタ系列の自動車部品メーカーである株式会社アイシンは、商業施設内移動サービス&モビリティ「ILY-Ai」を開発。子どもと一緒に乗ることができ、ショッピングカートとしても使えるのが特徴で、実証実験としてショッピングモールでの貸し出しを実施している。周辺障害物を検知する衝突回避システムを搭載するほか、シェアリングサービスに向けて貸し出し用アプリや、自動で充電場所に戻る自律走行機能の開発も進めている。
NEDO配送ロボ事業では、「大型商業施設向け商品自動配送サービス実証」を実施した。
ショッピングセンターでロボットによる自動化サービスを導入するには、低コストでのシステム化と安全性の担保が要求される。シンプルなシステム構成でサービスを確立するため、「ILY-Ai」で培った技術をベースに安価な2D LiDARのみでの屋内のテナントから駐車場までを自律走行するロボットと、受発注と運用管理システムを開発し、実際のモールでカーブサイドピックアップをイメージした実証が行なわれた。
①ユーザーがオンラインで商品を注文、②テナントが受注した商品をロボットに入れる、③ロボットが屋外駐車場へ自律走行、④ユーザーが指定駐車場で商品を受け取る――までがサービスの流れだ。
実証の結果は、安価な2D LiDARでもセンサーの構成で歩行者に囲まれても自己位置判定は可能としている。ただし、歩行者との安全性を配慮したインタラクションとして、相手の挙動を予測した回避制御などのシステム設計/開発が必要だ。また、サービス向上には、直感的にわかりやすいUXの実現と複数ロボット運用に向けたシステム構築が要求されることがわかった。 カーブサイドピックアップは一定のニーズがあるが、サービス実現には導入費用対効果を明確にすることが重要だ。
同社では、今後も大型施設内での実証を継続し、サービスの実現性を検証しながら、ロボットの仕様を明確化し、自律走行ロボットの開発を進めていくとのこと。
オンライン視聴者との質疑応答では、「館内のお客さんからの反応は?」という質問には、「驚かれるお客さんもいるし、子どもは後をついて歩いてきたりする。ロボットがどう動くのかがわからないと、お客様は不安に感じられるので、インターフェースをどのようにするかが今後は重要」と回答した。
「大型施設にこだわる理由は?」という質問には、「いかに早くサービスインできるかを重視している。法規に影響しない、私有地施設内として大型施設を想定した」と答えた。