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学生起業の失敗を許容。多くの失敗から学びを目指すユニークな専門職大学「iU」が目指すもの

情報経営イノベーション専門職大学(iU)の学部長補佐兼グローバル領域長 阿部川久広教授に聞く

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 情報経営イノベーション専門職大学(iU)が、2020年の開学から3年目を迎え、在学中の学生による起業が8社に達した。iUは、経営やICTに加えて、英語を中心とたグローバルコミュニケーションを徹底的に学ぶとともに、学生は在学中の4年間に起業することを目指すユニークな専門職大学である。「全員が起業すれば就職率は0%。一方で、ひとつの会社に留まらず、複数のベンチャー企業に関わる形で卒業すれば就職率は300%にもなる。そんな大学を目指している」(iUの学部長補佐兼グローバル領域長を務める阿部川久広教授)という点も、これまでの大学にはない尺度を用いたユニークな考え方のひとつだ。iUの取り組みを聞いた。

 まず、iUが分類されている専門職大学という制度に触れておこう。

 専門職大学は、2019年に文部科学省が創設した新たな制度で、一般の大学と同様に幅広い教養教育や学術に基づく専門教育を実施することに加えて、実践的な教育や関連する分野の教育を取り入れている点が特徴である。特定の職業のプロフェッショナルになるために必要な知識や理論、実践的なスキルを身につけ、専門性が求められる職業を担うために、実践的で、応用的な能力を育成することを目的としている。

 カリキュラムは、産業界や地域社会と大学が連携して編成し、講義だけでなく、学内や学外での実習が豊富に用意されている。教員には業界や現場のプロフェッショナルや実務家教員が40%以上在籍していることが求められており、授業の3分の1以上は実習や実技であり、受講できる人数は原則40人以下とし、大学のような数100人単位の大教室での講義は行わない。

 4年制の専門職大学のほかに、2年制および3年制の専門職短期大学があり、さらに、2003年には先行する形で専門職大学院の制度がスタート。ここでは、東京工業大学大学院環境・社会理工学院、京都大学大学院経営管理教育部、早稲田大学大学院経営管理研究科などがある。

 専門職大学および専門職短期大学は、2019年に3校、2020年に8校、2021年に6校、2022年1校が開学しており、医療や環境、農林、観光などの領域で専門職を育成するケースが目立つ。iUは、唯一のICTや経営に特化した専門職大学となっている。

 2020年に開学したiUの運営法人は電子学園であり、学長には中村伊知哉氏が就任している。東京都墨田区にキャンパスがあるほか、東京・竹芝のソフトバング本社ビルの8階にもキャンパスがある。墨田キャンパスのエリアは文花地区と呼ばれ、千葉大学墨田サテライトキャンパスが建設中であるほか、アーバンデザインセンターすみだ、iUの付帯施設であるすみだメディアラボ、地域と大学が交流するためのキャンパスコモンなどがある。

 iUが開学するまでは、墨田区は都内で唯一大学がない区であり、そうした背景からも、地域と大学の関係づくりには前向きだ。なお、すみだメディアラボは、提携パートナーとしてBSよしもとが参加。最新の撮影スタジオはじめ、番組配信も可能な部屋を5室用意しているほか、ラウンジやテラスを用意。BSよしもとの番組制作のほか、DXに対応するメディア教育の拠点として、学生作品制作も行っている。墨田区と連携した産学連携、社会連携、地域貢献の拠点として、魅力あるコンテンツの制作、配信を行うことも目指している。

 情報経営イノベーション専門職大学の名称は、日本で一番長い大学名であり、世界で初めてイノベーションを大学名に入れたという。略称であるiUのiには、イノベーションやインフォメーション、アイデアなどの様々な意味を持たせているという。学部は情報経営イノベーション学部だけであり、情報経営イノベーション学科のみを用意。入学定員は1学年200人。現在、1~3年生までで、約640人が在学している。男女比は84%対16%であり、コロナ禍ではありがらも26人の外国人留学生がいる。学生の起業志向は91.7%という高さは、iUならではの大きな特徴だといえるだろう。「親子で入学し、親子で起業を目指している例もある」という。

 現在、540人の客員教授がおり、近い将来には1000人にまで拡大する予定だ。学生数よりも、客員教授が多いという体制になるが、これにより、起業に関わるあらゆる分野の専門家や、業種を問わない知見を活用できる環境を目指しているという。また、現在、11校の海外連携校も100校まで拡大する計画であり、2022年8月には、マレーシア・クアラルンプールのマラヤ ウェールズ国際大学と連携提携を発表している。

 先に触れたように、iUの学びは、社会人として必要な知識やビジネススキルを学び、起業や新規事業を開発できる力を養う「ビジネス」、プログラミングの基本的な知識やスキルに加えて、AIやデータサイエンスなどの業界トレンドまでを網羅的に学ぶ「ICT」、グローバルビジネスの現場で活躍するためのスキルを身につける「グローバルコミュニケーション」で構成される。

 日本の課題と言われるイノベータ不足、IT人材不足、英語力不足といったテーマに真っ向から取り組む姿勢を持った教育機関であり、iUの開学の狙いもそこにある。

 1年次には、ビジネスやICTの基礎を学び、同時に、必修科目を通じて、イノベーションとは何か、イノベーションを起こすためには何をすべきかを自発的に考え、イノベータとしてのスキルとマインドを身につける。2年次には、ビジネスやICTの応用までを学ぶとともに、客員教員が開講するバーチャル研究室や、連携企業との共同プロジェクトにも参加。専門的な知識や技術を養い、プロダクトやサービスの実装と事業化につなげる。3年次は、必修科目として約4カ月間(640時間)の長期インターンシップに全員が取り組み、知識と技術を統合し、実践力を磨くことになる。4年次は、学びの集大成として、イノベーションを形にすることに取り組む。ここでは、総合実践演習(ゼミ)などを通じて、ICTを手段として活用し、ビジネスにイノベーションを起こすことを目指す。

 なお、ICTスキルについては、情報処理推進機構(IPA)のITスキル標準(ITSS)レベル2の標準カリキュラムを網羅する水準を想定している。

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