Web3はなぜ重要? NFTが地方創生に効く? NFT Summit Tokyoで示された可能性
NFT Summit Tokyo 2022 Summer
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Web3(ウェブスリー)を幅広く話し合うイベント「NFT Summit Tokyo 2022 Summer」(Pivot Tokyo主催)が2022年7月13日、14日の2日間、大田区産業プラザPiO(東京都大田区)で開かれた。
NFT(非代替性トークン、ブロックチェーンを活用した所有証明書付きデジタルデータ)や DAO(分散型自立組織)、メタバース(インターネット上の仮想現実空間)、DeFi(分散型金融)などをめぐって、公式スピーカー70人よる講演やパネルディスカッションが繰り広げられた。Web3に関心のあるクリエイターやエンジニア、NFTサービスプロバイダー、インターネット広告事業者、政策立案者など幅広い分野から、2日間で延べ622人が参加した。
14日のオープンニングでNFT東京ファウンダーであり司会のNatsuko(満木夏子)氏は、「シリコンバレーと東京に会社があり、Web3に早くから注目してきた。米国とのタイムラグがあるので、その差を埋めて世界の状況を日本に届け、日本でWeb3を推進していく場をつくりたい」と開催の趣旨を説明した。「日本が遅れていると捉えるのではなく、日本でしかできないことをやっていくスタンスだ」とも話した。
Web3がなぜ国民や国家にとって重要なのか
続いて「Web3と政府 各国政府のWeb3施策を一気に学ぶ」と題して、ベネディクト・マコン・クーニー氏が登壇した。英国元首相のトニー・ブレア氏が率いる「トニー・ブレア・グローバル・チェンジ研究所」でテクノロジー施策ディレクターを務めるベネディクト氏は、3月に開催した第1回の「NFT Summit Tokyo」に続いて登壇した。
ベネディクト氏は、英語のスピーチを背景の大型スクリーンにAI(人工知能)による翻訳を表示させながら、「なぜWeb3が国民や国家にとって重要なのかを広い文脈で話したい」と講演した。世界約30の政府をコンサルティングするトニー・ブレア・グローバル・チェンジ研究所にとってWeb3は主要な研究テーマという。以下、ベネディクト氏の発言を日本語訳に基づいて紹介する。
「技術革命は100年以上前の産業革命よりもはるかに速く、大きなスケールだ。経済秩序や政治、地政学を根底から覆して5年後には全てが変わり、どの企業も基本的にはテクノロジー企業になっているだろう」とベネディクト氏は語り始め、「真の経済成長を遂げる国は、デジタル革命をマスターし、デジタルインフラを構築して未来のテクノロジーに投資を始めた国だ」と述べた。
暗号遺産は復活する、ゲームで全く新しいデジタル領域が誕生
「Webは今、古くて新しいことが同時に起きている、人々の生活の基盤だ。誰もがスマートフォンを持っているが、インターネットを始めてまだ数十年しか経っていない」とベネディクト氏は述べた上で、Web3は新しいパラダイムシフトであり、ティム・バーナーズ=リー氏が生んだ「Web1.0」の基本的精神と、「Googleマップ」のような「Web2.0」の実用性を組み合わせたものだと説明した。
「パラダイムシフトを推進したのは暗号ベースの技術とブロックチェーン」で、Web3で最初の成功例となった暗号資産に言及。ただ2022年初めに世界市場で3兆円を見据えたものの、現在は大幅に下落して「暗号資産の冬」と言われている。「投機商品」との懐疑的な見方がある中でベネディクト氏は、「重要な市場修正で今は谷間だが、暗号資産はまたピークを迎えると確信している」と話した。
さらにベネディクト氏は、「主にゲームや『Play As you earn(プレイ・アズ・ユー・アーン 遊びながら稼ぐ Play To Earn)』の分野でまったく新しいデジタル領域を切り開いている」とし、最前線にはVR(仮想空間)開発の英国Improbableのような企業がいると指摘した。
DAOは新しい参加型インセンティブ
次にベネディクト氏は、特に関心を持っているDAOに言及した。DAOは、ブロックチェーン(分散型台帳)技術を活用して、株式会社で一般的な「株」の代わりに「トークン」を割り当て、参加者全員による意思決定を可能にする。企業だけでなく行政の枠組みを超えた新たな自治にも活用でき、独自のコミュニティーをつくって管理、運営できる。
「DAOは、バイオテクノロジーやグリーンテクノロジーと組み合わせると参加意欲を高める。これこそが新しいイノベーションによる新しい参加型インセンティブ」という。そして国家の役割について、「イノベーターがDAOの中で活躍できるように、どの国の政府も独自のベンチャー部門が必要だ。雇用や経済成長に応用できるか、DAOで公共サービスの改革ができるかどうかを判断すべき」とした。割に合わなければやめてもよいが、できるだけ早い段階で関わることが大切になる。
エンジニアと政策立案者は協力を
ベネディクト氏はまた、エンジニアと政策立案者が協力することの重要性も説いた。「開発者は速く動くが、政府はゆっくりで関わりたくないと思うこともある」。新しいテクノロジーの採用と実践を早期に設計し、適用するために政府がすべきなのは、「技術の基礎を理解し、政府内のスキルセットを構築すること」とした。
例えば、デジタル通貨に関する中央銀行の議論は5年間続いたものの、最後に「もう10年かけて見直す」となった。「そのレビューが行なわれる頃には技術は大きく進歩して、ほぼ永久にレビューしなければならなくなる」とベネディクト氏は皮肉を込めた。コンセンサスを得てから制度設計する今までのやり方ではうまくいかないので、実践し適応していくトライ&エラーでやるべきという。
政府は分権にもっと慣れて
ベネディクト氏はこのほか、「政府はもっと分権に慣れるべき」と指摘した。Web3の世界で技術を中央集権的にコントロールしてもうまくいかない。この点に関してベネディクト氏は「日本政府は最近、Web3で一連の政策を発表した」と述べ、2022年6月閣議決定された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」などを「政府が取るべき正しいアプローチだと思う」と一定の評価をした。
経済財政諮問会議を経て閣議決定された実行計画には、「ブロックチェーン技術を基盤とするNFTの利用等のWeb3の推進に向けた環境整備」が盛り込まれた。ベネディクト氏は、「政府としての取り組みが遅れてテクノロジー開発を放置すると、国家ベースで取り残される。早い段階でエコシステムと関わり、発展する条件を整え、イノベーションを起こすことを可能にすることが重要だ」とプレゼンを結んだ。
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