メルマガはこちらから

PAGE
TOP

東芝が力を入れるシミュレーテッド分岐マシンと量子暗号通信

連載
大河原克行の「2020年代の次世代コンピューティング最前線」

1 2 3 4

東芝の量子暗号通信技術の特徴

 東芝が、もうひとつ力を注いでいるのが、量子暗号通信である。

 現在の暗号通信は、暗号を解くための暗号鍵を、暗号アルゴリズムを使い、インターネットなどで送信する仕組みであり、解読するための計算に、古典コンピュータでは数1000年以上かかると言われていた。だが、量子コンピュータでは素因数分解問題や総当たり探索などを得意とし、これを高速で計算することができるため、現在の暗号技術を瞬時に解読してしまう危険性が指摘されている。

 国家機密や外交機密、軍事機密情報など、機密保持期間が長期間に及ぶデータの場合、現在の最新の暗号化技術によって、いまは解読されない状態でも、データさえ入手しておけば、量子コンピュータが登場したときには解読することができるようになるといわれている。

 量子暗号通信は、暗号鍵を光の最小単位である光子に乗せて、光ファイバーを通じて送信する技術であり、量子力学の原理によって、鍵の安全性が無条件に保証されている。今後、どんなに高速な計算機が登場しても、暗号鍵が通信の途中で盗聴者に漏れることはないとも言われている。

 とくに、東芝の量子暗号通信技術では、秘匿性の高いデータを膨大に扱うための「高速性」、暗号鍵情報を乗せた微弱な光子を無事に送り届けるための「安定性」、量子暗号通信の社会実装に欠かせない量子鍵配送ネットワーク技術などによる「通信インフラ親和性」や「相互運用性」が特徴となっているという。さらに、量子鍵配送(QKD)システムの中継点を極力減らして安全性を高める「長距離化技術」や、量子暗号通信をより身近な場所で使いやすくするために、装置に関する「小型化技術」の開発にも取り組んでおり、そこにも東芝ならではの技術が生かされているという。

1 2 3 4

バックナンバー