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東芝が力を入れるシミュレーテッド分岐マシンと量子暗号通信

連載
大河原克行の「2020年代の次世代コンピューティング最前線」

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 東芝は、2022年6月に打ち出した長期ビジョンにおいて、ハードウェアとソフトウェアを分離するSoftware Definedを推進するとともに、デジタルとデータの力を活用してカーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーの実現に貢献する企業を目指す方針を示した。

 東芝の島田太郎社長兼CEOは、「収益の柱をデータサービスにする会社に、東芝を変貌させたい」とコメント。それを実現するために、DE(Digital Evolution)およびDX(Digital Transformation)とともに、量子技術を活用したQX(Quantum Transformation)に取り組む姿勢を強調した。重電メーカーの一角を占める東芝にとって、デジタルとデータを活用した事業モデルの構築は、大きな変化を感じるものだといえる。長年、デジタル領域で経験を積み、東芝入りした島田社長兼CEOらしい方針だ。

 QXは東芝独自の用語であり、東芝が30年近く研究開発する量子技術を活用し、新たなソリューションを提供。とくに、量子暗号通信技術を生かして、データ保護だけでなく、数100km離れた量子コンピュータのメモリー情報を同時更新したり、量子インターネットによる安全で高度な通信を実現したりすることを目指すという。

 さらに、東芝では、独自のシミュレーテッド分岐マシン(SBM=Simulated Bifurcation Machine)を開発。島田社長兼CEOは、その成果である量子インスパイアド最適化ソリューションである「SQBM+ (Simulated Quantum Bifurcation Machine+)」に力を注ぐ姿勢をみせる。

 SQBM+は、組み合わせ最適化問題を世界最速、最大規模で解くことができるソリューションであり、最大で10万変数までの複雑かつ大規模な組み合わせ最適化問題を高速に解決できるイジングモデルソルバーだ。「多くの社会課題解決に貢献できるソリューションである。金融分野での実証や、創薬領域でも成果が出ている」と語る。

 そうした取り組みに触れながら、「東芝の技術は、量子コンピュータの実現に隣接しており、次のブレイクスルーにも貢献できる。また、東芝は、量子技術の分野では最大の特許数を持っており、データや通信を量子で守る時代において、東芝は最も優れた技術を保有している企業である。今後、量子技術は社会的価値を持ち、未来の社会を実現することになる。巨大なマーケットが生まれる量子領域で商機を掴み、リーディングカンパニーになりたいと考えている」と意欲をみせた。

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