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災害備蓄の保管、調達、管理を企業がサブスク利用できる「あんしんストック」

町の機能として災害備蓄がある社会の実現目指すLaspy

連載
ASCII STARTUP 今週のイチオシ!

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顧客の会計メリットを出しつつ自社BS/CFを健全化、金融の経験生かす

 企業側の会計メリットも大きい。3日分の備蓄だと1人当たり安くて6000円、きちんとしたものを揃えると8000円になる。そこにヘルメットを追加すると1万数千円になり、数百人数千人規模で用意すると、大きなキャッシュアウトになる。その点「あんしんストック」を利用すれば、手軽に防災備蓄の十分な機能を得られると言うわけだ。

「我々はお客様の備蓄を預かっているわけではありません。そのため、バランスシートを膨らませたくない企業の代わりに、僕らのバランスシートを膨らませてください、という意味もあります。リスクにはなりますが、僕は金融出身なので、バランスシートをオーガナイズし、キャッシュフローのマネジメントで切り出せます」(藪原氏)

 年に2回までは無料で補充すると言っても、たいした災害ではないのに使われてしまうと、ビジネスが続かなくなる。そこで、災害発生時に気象業務支援センターからデータが来たら、自動的に備蓄利用の有無を判定するシステムを開発した。

 備蓄倉庫の備蓄にはRFIDを付け、手軽に在庫を管理する仕組みも構築した。将来、数千数万という備蓄倉庫を扱うようになるという目標を見据えて、RFID管理システムを採用したそう。

「あんしんストック」のビジネスモデル

町の機能として災害備蓄が備わっている社会を実現したい

 もちろん、最初からスムーズにビジネスが拡大したわけではない。ベンチャーキャピタルには100社ほど話をしたそうだが、ほとんどが「こんなことができるはずがない」とか「そんなニーズがあるわけがない」と言われたという。

 しかし、話を聞いてくれるところと出会い、2021年末と2022年1月にシード調達を実施。サムライインキュベートほか3社から6000万円の出資を得た。商標はもちろん、災害備蓄提供システムや災害備蓄提供方法及びプログラムに関する特許も取得している。

 最初はニーズがあるのかといった調査から着手したが、今は多数の引合いがあり、様々な施策を打っているところ。シード期ということもありいきなり自社倉庫を建てることはせず、現在はデベロッパーと協業して、既存の建物に機能を付加する形でビジネスを展開している。現在は日比谷エリアに移転してくる顧客向けに有楽町近辺でスペースを確保している最中だという。

 2022年7月からは証券取引所のある兜町でもサービスを開始する。ここでは平和不動産にスペースを無償で提供してもらうことになった。平和不動産は兜町でオフィステナントビルの開発を行っており、そのテナント向けのサービスという建て付けだ。歩いて数十メートルで備蓄が手に入るという体制を作っている。地価の高い都心部。「坪単価4~5万円のオフィスの一角を潰して備蓄を用意するのとどっちが楽で安いですか」とサービスを紹介する。

 不動産開発業者が課題認識し、備蓄を社会に行き渡らせようとするのはすごい取り組みと言える。もちろん、備蓄サービスを用意することで、テナントビルの魅力が高まるといった効果もあるだろう。

「今はニーズがあるのも分かってきまして、協業先も増えてきて、関心が集ってきました。今のユーザーからの要望は、本当にワークするのか見てみたい、という点です。やってみせて、“できるね”となれば(事業を)大きくしていきたい。人やチーム、設備投資が必要になるので、次のラウンドの資金調達をするという流れになると思います」(藪原氏)

 今後は、町のあるべき姿として、災害備蓄という機能は設計段階から考慮されなければならない、と藪原氏。同社のサービスを利用する・しないに関わらず、意識しなくても防災備蓄のプラットフォームに囲まれている状態を、デベロッパーと連携して目指しているという。

 とは言え、これから建築される案件にサービス導入するのは3年がかりのプロジェクトになるので、それは進めつつも、まずは既存の建物にサービスを展開していくという。足下ではガソリンスタンドや駐車場、高架下など、活用されていないスペースを活用し、サービスを展開していく予定だ。

「町のあるべき姿として、災害備蓄という機能は設計段階から考慮されなければいけない」

 最後に今後の展開について伺った。

「まずは都心部で拡大して、3年後には大阪などに進出し、5年後には上場したいです。コアとなる価値を確固たるものにして、それをそのままスケールします。BCP(事業継続計画)の中で備蓄はリスクマネジメントのひとつでしかありません。例えば、原材料の在庫を過剰に持てない悩みがありますが、サプライチェーンが寸断されると生産できなくなるというリスクもあります。僕らはストックすること自体がビジネスなので、そこにチャンスがあると考えています。目指すべき所は、電気水道ガス通信にプラスして自分の備蓄庫がある世界です。高齢者や妊婦さんが災害時でも食料調達合戦に巻き込まれない社会を作りたい、と考えています」(藪原氏)

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