加速する都市のデジタルツイン化。3D都市モデルを取り巻く世界の状況
「3D都市モデルでスマートシティはどう進化するのか」レポート
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日本でも活用が進んでいる3D都市データ
同社は、日本国内でも3D都市データをソリューションとして提供した実績を持つ。大成建設のプロジェクトで作成したのは「銀座バーチャルシティー」だ。大成建設の「建設だけではなく、エリアマネジメントというビジネスを検証したい」という要望に応えるかたちで開発。特撮映画の背景に使われるような精緻な3Dモデルを使って、どのビルにどのような広告が出ているかまで識別できるリアルな3Dモデルを構築した。
国土交通省のスマートシティモデルプロジェクトに選ばれている「スマートけいはんなプロジェクト」においても、「けいはんなデジタルツイン」として3D都市データを提供している。けいはんな学研都市をモデル化したもので、オンデマンド交通やシェアサイクルなどの実証実験の進捗状況を一元的に把握することを目的としているほか、人流データやバスの稼働状況などもモデル上で可視化できる。
3D都市モデルの課題と、スマートシティへの実装
ここからは、終盤のトークセッションの模様を抜粋して紹介する。トークセッションは、内山氏がモデレーターを務め、熊野氏がそれに回答する形式で進行した。
はじめのテーマは、グローバル市場における3D都市モデルやデジタルツイン市場の状況だ。内山氏が「グローバルな領域で3Dモデルビジネスを展開するダッソー・システムズから見て、3D都市モデルやデジタルツインの市場は成長していると思いますか?」と質問。
熊野氏は「ここに来て、かなり加速していると思っています」と、業界全体の伸長を示唆した。一方で、その活用領域やニーズに関しては「いまのところは、日本と同じだと思っています」と回答。「先進的なことを試してみたい」というニーズを受けて開発するケースが多く、未だ、一般的な普及には至っていないことを明かした。
またジャンルとしては、モビリティー関係での活用が活発化しているとも語った。自動運転システムの内部に3D都市モデルを組み込むパターンと、試行中の自動運転システムに対して、対象領域を3Dモデル化して、デジタルツイン上で検証を行うパターンの、双方が見られるという。
続いてのテーマは、3D都市モデルや、デジタルツインが普及していく際の障壁について。
熊野氏は「日本の場合は、国土交通省がPLATEAUを作ってくれましたが、いかにコストをかけず、クオリティーの高い3Dモデルを作っていけるか。また、そのための技術が用意できるかがポイントになる」と話す。
「カメラで撮った情報からモデルを作ったり、LiDER(Light Detection And Ranging:レーザーの照射で点群データを取得する技術)のデータを3Dに置き換えたりすることは普及を見せている」と熊野氏は話す。だが、「BIM(Building Information Modeling:建築物の基礎情報のほか、資材やスケジュールなどを含んだ建築向けのデジタルデータ)からスムーズに容量の少ない3Dデータを得るといった技術については課題が残る」とも語った。
内山氏も、データ作成に関して、「LiDERの点群データをサーフェス化してポリゴンに変換し、CityGMLに置き換える技術などは、それほど見られない」と話し、「そこのコストが下がってくると、さまざまな領域の人が参加しやすくなって、データ活用も広がっていくと思います」と述べた。
3D都市モデルの作成を前提としていないデータから、あるいは前提としているとしても、いかに素早く、コストをかけないで、多くの人が3Dモデルを作成できる状況が生まれるか。それが、いま以上の3D都市モデル発展のキーとなりそうだ。
また、ダッソー・システムズの今後の展望について熊野氏は、「災害対策や防災、モビリティー、エネルギーマネジメントなど、個々のユースケースの開発は進んでいます。でも、それをサステイナブルにしていくには、“統合されたもの”にする必要があります」と回答。
プラットフォームとプラットフォーム同士、システムとシステム同士が連携し、一元的に管理できる状態になることで、「デジタルツインにつながっていく(熊野氏)」とも話した。
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