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特許から見るデジタルセラピューティクス(DTx)

連載
知財で読み解くITビジネス by IPTech

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DTxと特許の組み合わせによって得られるメリット

 DTxとなるためには、治験により医学的エビデンスを取得し、医療機器として薬事承認される必要があります。そして、保険適用が認められるには、厚生労働省の中医協で、公的医療保険の適用対象として認められる必要があります。

 治療用アプリを開発し、臨床試験を実施し、薬事承認を取得するまで、およそ5~6年かかり、その費用はおよそ数億から数十億円ほどかかるとの試算があります。このように、DTxとして承認されるには、長い期間と大きな費用が必要です。現状において日本で薬事承認を取得できた治療用アプリは、CureApp社のCureApp SCのみであり、どのようにすれば薬事承認を取得できるのか知見が広がっているわけではありません。そのため、薬事承認を取得できれば、特許を取得していなくても、競合企業に対して有利な立場を取ることが可能です。

 しかし、特許を取得しておけば、さらに有利な立場をとることが可能です。例えば、同様のアプローチによる治療支援を他社が実施することはできません。また、後発品の承認手続きにおいて、先発品に係る特許権の侵害性を考慮するという、いわゆるパテントリンケージにより、同様のアプローチによる薬事承認を取得することができません。このとき後発他社は、同じ疾患の治療を支援するための治療用アプリであっても、異なるアプローチを用いた治療を開発して別途臨床試験を実施し、薬事承認を取得する必要があります。

 一方、特許を取得していなければ、同様のアプローチで他社も薬事承認の取得に挑戦できます。時間と費用はかかりますが、他社も薬事承認を取得できるかもしれません。このように、特許を取得することで、他社に対して一からのアプリ開発を強いることが可能となり、有利な立場でいられる期間を伸ばすことが可能となります。

 治療用アプリがDTxとして認められた場合、その治療用アプリの実装と対応した特許を有していれば、他社に対して競争優位な状況を長く維持することが可能となります。

 以下、日本の企業であるCureApp社、サスメド社、Save Medical社の知財について見ていきます。なお、海外において実績がある企業が、国内の製薬大手と組んで治療用アプリの開発を進めていますが、海外企業は、すでに外国での特許権を取得しているため、ここでは説明を割愛します。

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