スポーティーで上品な走り
目的地に1秒でも速くたどり着くためのスペック
まずはBMWアルピナというか、不肖に対して疑念を抱くポルシェ原理主義の担当編集Sから。走行モードをチェックすると、COMFORTとSPORTがあり、それぞれにSTANDARDとPLUSが用意されています。そのうちCOMFORT PLUSがBMWアルピナ専用モードということなので、こちらで走行開始。
ビ・ターボのシルキーシックスが生み出す700Nmというビッグトルクは、恐ろしい位に滑らかな走りをドライバーに提供します。その滑らかな走りに、車内に同席した誰もが感嘆の声を挙げます。担当編集Sは以前、M440i xDriveクーペ(1038万円)も試乗していますが「こ……これは違いすぎる」と一言。「まず足が違いますよね。BMWは地に足がついた安定感というか、重厚さがあるけれど、BMWアルピナの方が、滑らかなカーペットの上を歩いているかのような感覚」とBMWアルピナの足周りを称賛。
そのまま高速道に乗ってクルージングも体験。BMW 3シリーズには先進の車線監視機能付きの運転支援がありますが、今回は使わずに自分で運転してもらいましょう。「段差とかわだちとか、まったく関係なく、ストレスフリーで突き進む感じですね。このクルマでの長距離移動はラクですよ」と評します。ではジェントルでつまらないクルマなのかというと、そのようなことはなく、アクセルを踏めば怒涛の加速をみせるから恐れ入ります。
そこでお楽しみのSPORT PLUSにチェンジ。車内には排気音が轟き、足が引き締まったことを実感。何よりわずかにアクセルを踏み込むだけで、脅威的な加速をみせるではありませんか。「これはスゴい! 強烈!」と喜ぶ担当編集S。ですが彼は早々にCOMFORT PLUSに切り替えてしまったのです。長年、彼のドライビングを見てきましたが、試乗してスグにSPORTモードに切り替える男が、COMFORTに戻す姿を初めて見ました。「どうしたんですか?」と尋ねると「このクルマ、COMFORT PLUSが良すぎるんですよ。これで十分満足っス」というではありませんか。いくら高速道が混んでいるからといって、お前、ホントに担当編集Sなのか? と目を疑う不肖。「このクルマ、本当に緊張感を強いないクルマですよ。リラックスして速い。ポルシェのような精密感とも違う。さすがとしか言いようがない」というのが担当編集Sの言。
ここで唯お嬢様に選手交代。最初からこのクルマに乗っていそう、というオーラを感じる同行スタッフたち。それくらい似合うのです。まずはCOMFORT PLUSで一般道を走行。「乗り心地がいいのは助手席でも確認できましたが、運転すると一層感じますね」と唯お嬢様。「確かにほかのBMWと違う、質の高い足です」と分析します。さらに「この排気音がとてもイイ。うるさくなく、それでいて、しっかり主張する。いつまでも聞いていたくなる音です」と、エキゾーストノートにも絶賛。
「そもそものクルマの大きさ、パッケージングがイイんですよ。車線幅の狭い道でも苦になりません。これ以上大きくなると、恐らくストレスを感じてくるでしょうね。3シリーズって、本当によくできた大きさですね」と感心しきり。「ハイパワー車と聞いて、ちょっとビクビクしていたのですが、そういったことを感じさせないんですね。スムースで、とても扱いやすい。ブレーキのタッチも剛性を感じさせますし、運転していて不安を一切感じさせないんです」と、とても20代前半のお嬢様とは思えないコメントを連発。
そのまま高速道路へ合流。一気に速度を上げます。「車速が一気に乗りますね。それに巡航中の排気音も適音ですね。エンジンもスムースに回りますし、イイクルマであることを強く感じます。確かに疲れないというのはその通りだと思います」と称賛。ここでスポーツモードに変更。MT乗りの唯お嬢様はAT車のパドル操作をしたことがほとんどないのですが、我々から「ギアを4速まで下げてみて」と言われ、左手側でカチカチっと変更。するとエンジンが素晴らしいカンツォーネを歌いあげるではありませんか。さらにアクセルを話すと「パンパン」と乾いた音まで。ここで唯お嬢様は「なるほど!」と一言いうと、担当編集S同様COMFORT PLUSに走行モードを変更し、車速を下げて、ノンビリモードに。
「え? 何しているの? なんで踏まないの?」と言う不肖に対し「こういうクルマは、ゆったり味わうものです。金持ち喧嘩せずです」と言い出すではありませんか。唯さんはいつも踏みっぱの方なのに、なんと考え方までお嬢様になってしまった模様。改めてクルマで人は変わると認識しました。
筆者は運転することなく、終始後部座席から二人の様子を見ていたのですが、走行中の後席の素晴らしさは見事のひと言。身長185cmの筆者でも窮屈さを感じることはありませんでした。もともとBMWの設計基準は185cmなので、当然といえば当然なのでしょうけれど、それに加えてレザーの良さと足の良さで快適そのもの。もちろん5シリーズに比べると狭いのですが「ノーマルの5シリーズを買うより、こっちの方が賢い買い物では?」と心底思った次第です。
【まとめ】いい意味で緊張感をなくすことが
ドライブには大事
このように2人の共通するインプレッションは「運転中に緊張を強いない」であり「運転がラクで快適」であり、「このクルマは素晴らしくイイ」ということ。クルマ選びの終着駅という不肖の言にも「そう考えるのも不思議ではない」「ある意味、一つの極点」と納得されたようです。
最後にB5やB7と、B3の違いについて触れましょう。B3は、B5やB7と比べてスポーティーな方向に振ったクルマであると感じました。それはB5の方が段差の当たりは柔らかく、B3にはわずかに硬さを覚えたから。だからといって、すべての面においてB5が優れているとは思いません。というのも、たとえば東京~大阪間を快適に過ごしたい人はB5を好ましく思うでしょうし、ワインディングを楽しみたい人はB3が最適解といえそうだから。つまり求める方向が違うのです。B3で箱根日帰り旅、B5で一泊二日神戸巡り……どちらも素敵なカーライフであり、実に悩ましいとB3の後席で妄想したのでした。
イイクルマは、人をより一層幸せにし、豊かな気持ちにさせてくれます。そして人を成長させてくれるようにも思います。今回BMWアルピナB3に触れる被験者2名を後席から見ながら、表情から2人の成長をうかがうことができました。クルマは単なる乗り物という枠におさまらず、人と寄り添い、人を高める存在なのです。
BMWアルピナに合わせたファッション
BMWアルピナに合わせ、唯さんは世界29ヵ国で240店舗を擁する英国ロンドン発のプレミアムコンテンポラリーブランド「ALLSAINTS」のオータムコレクションのワンピースドレスとライダースジャケットをチョイス。
ワンピースドレスはオールセインツの定番の形で、今年はパーティーシーンに向けてアップデート。ロングスリーブ、タイトなシルエット、ショート丈でよりフェミニンなドレスに仕上げられています。ポイントはフロント腰部分のドレープの繊細なディテール。タイトなディテールですが、腰部分のドレープのおかげでくっきりとラインを拾いすぎないのが◎。
ライダースレザージャケットは定番のシルエットながら、新色のオータムカラーを採用した点に注目。中間色あるがゆえにモノトーンベースのカラーはもちろん、カジュアルなスタイルにもなじんでくれるので合わせやすいのが◎。バイカーモチーフをデイリユースにアップデートされており、エポレットやウエストベルトまわりが、クラシカルな王道デザインながら、ボックスシルエットなため、ウエストのキツさがないののがポイント。一見ハードなデザインですが、ワンピースやスカートと合わせるのが今風コーデ。
これからの時季にピッタリのALLSAINTSのアイテム。冬のお出かけ前にチェックしてみては?
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