自動運転をめぐり、トヨタ自動車とNTTが本格的な共同開発プロジェクトを発表した。
2024年11月2日のトヨタのプレスリリースによれば、両社は2025年以降、「モビリティAI基盤」を共同開発し、交通事故ゼロ社会の実現を目指すという。2028年ごろには、社会実装を開始し、2030年ごろまでに普及拡大を図る計画だ。
国土交通省が公表しているロードマップは2025年を「目途」に、高速道路での「完全自動運転」の実現を目指している。本稿執筆の時点で、2025年は2ヵ月後に迫っている。あらためて、日本における自動運転技術と、新しい技術を取り巻く規制の現在地を確認したい。
世界は完全自動運転の一歩手前
自動運転は0から5の6段階にレベル分けされている。レベル5が最高の「完全自動運転」で、人間が操作をしなくても、システムが車両を運転し、目的地まで運んでくれる。10月10日にテスラが発表した「サイバーキャブ」は完全自動運転のタクシーで、ハンドルもペダルもない。中国ではすでに、百度(バイドゥ)が無人タクシーの「Apollo Go」を展開している。
百度のApollo Goは、車両はシステムが操作するが、各メディアの報道によれば遠隔で人間が常に監視し、必要に応じて介入する仕組みを採用している。このため、現時点のApollo Goは完全自動運転の1段階手前のレベル4にあたると考えられる。一方、サイバーキャブについては、まだ実装されてはいないものの技術的にはレベル5に分類されるだろう。テスラのイーロン・マスク氏は、2025年にカリフォルニア州とテキサス州で完全自動運転を実用化させると述べている。
一方、日本では、限られた地域でレベル4の自動運転車が実装されている。8月には、羽田空港に近い複合施設「羽田イノベーションシティ」で10人乗りの自動運転バスの運行が始まった。約800mの2つのバス停を結ぶバスで、最高時速8kmのゆっくりした速度で、1日に5往復する。晴れの日は自動運転で走るが、雨の日は人間が介入するという。実際にレベル4での運行許可を取得した事例ではあるが、現時点では実験的な段階を脱していない。
完全自動に必要な協業
完全自動運転を社会に実装することを目指すうえで、トヨタとNTTの協業は、欠くことのできない取り組みだろう。事故が発生する可能性を極小化するために、走行中の自動運転車は大量のデータを送受信する。
周囲の車両や歩行者の状況だけでなく、たとえば交差点で右折する際には、信号が青に変わるのを待つ歩行者や、歩道を対向してくる自転車などの車両以外の情報も必要だ。車両や信号機、道路沿いのカメラなどから情報を送受信し、場合によっては、遠隔地にあるデータセンターで情報を処理し、最終的にハンドル、アクセル、ブレーキなどを操作する。つまり、完全自動運転の車が行き交う社会は車両の技術革新だけでなく、それを支える無線通信の基盤が欠かせず、これまでとはケタの違う膨大な情報が飛び交うことになる。
10月31日の記者会見でトヨタ自動車の佐藤恒春社長は、2030年には、現在と比べて22倍の通信料、150倍の計算能力が必要になると述べている。トヨタとしては、車体だけでは完全自動運転の技術としては完成しない以上、通信の専門性があるNTTと協業することが欠かせなかったと理解できる。トヨタとNTTは、25000億円規模の投資を想定し、6年後の2030年ごろの社会実装を目指すという。
日本の歩みはゆっくりに見えるが
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