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交通違反をリアルタイム検知、ドライバーに注意喚起するスマホアプリ「AI-Contact NOW」

6月25日「無事故(ムジコ)の日」に提供開始

 スマホとクラウドでクルマの交通安全を管理する「AI-Contact」を運営するジェネクストは2021年6月25日、企業向け交通安全アプリ「AI-Contact NOW」を提供開始した。

 AI-Contact NOWは、従来のAI-Contactが持っていた交通違反検知やリアルタイム運行管理といった機能に加えて、運転中の交通違反をリアルタイムで検知し、それを音声でドライバーに知らせて危険を喚起する機能を備えている。

 同社は「事故のない社会へ」をミッションに、交通安全管理システムの運営のほか、ドライブレコーダーの映像を解析して交通事故の鑑定を行なう事業を展開するなど、多方面で交通安全事業を展開している。今回のリリースにあわせて、同社取締役 COOの山地 瞭氏に話を伺った。

交通安全教育コストの負担増が「AI-Contact NOW」のニーズを産んだ

 企業のコンプライアンス意識の高まりにつれて、社内で多数のクルマを運用している企業において安全運転に対するニーズが高まってきている。

 しかし、社用車の運行管理者または安全運転責任者を置いて従業員に対する交通安全指導はコスト負担となる。たとえば、従来はドライバーが交通ルールに違反しているかどうかを調べるため、ドライブレコーダーの画像をすべてチェックするなどの作業が必要になっていた。

 このような企業のニーズに応える形で、同社はクラウド型の交通安全管理システムであるAI-Contactを開発・運営してきた。同サービスは、ドライバーがどこでどのくらい交通ルール違反を犯しているか、運行管理者が把握可能だ。さらに今回リリースしたAI-Contact NOWを活用すると、ルール違反を犯した場合、またはルール違反が発生しそうな地点に近づいたときに、リアルタイムで音声を用いて注意喚起をアナウンスしてくれる。同アプリを常時使うことにより、運行後の管理者による教育コストを劇的に下げることができる。

 この「リアルタイムでアナウンス」はAI-Contact NOWの目玉機能の1つだが、山地氏によればさらに重要な機能があるとのことだ。

 「ルール違反のアナウンスに注目が集まっているが、それ以上に重要な機能が2つある。1つはドライバーの特性や運行環境の違いに応じてアナウンス内容を変えていく機能。もう1つはアナウンスをしたにも関わらず交通ルールを守らなかったドライバーを抽出できる機能です。

 1つ目の機能では、一時停止を事前に設定した閾値以上の割合で良く守っているドライバーに対しては、一時停止を実行するように促すアナウンスが流れなくなる、といったもの。さらに生活道路や高速道路など、運行環境によって企業がドライバーに重視してほしいと考える交通ルールは異なるので、交通ルールごとの閾値を運行環境別に設定できるようにしています。

 もう1つの機能は運行後の安全運転教育コストを下げるもので、AI-Contact NOWで実装した音声アナウンス機能を使っていてもなお交通ルール違反を犯してしまうドライバーを抽出することができる。より効果的・効率的な交通安全指導できるということで、ユーザー企業でのフィールドテストでも非常に高い評価をいただいている」(山地氏)

「AI-Contact NOW」で実現狙う交通安全文化

 同サービスは、従来のナビアプリとは異なるレベルの製品になっている。通常のナビアプリでは一般道路は制限速度60キロ、高速道路は100キロなどとして到着時刻を予測している。しかしこのレベルの精度では交通安全管理システムには使うことができない。たとえば30キロ制限の生活道路を60キロで走ってしまっては一発免停になってしまう。

 同社は独自に日本全国の標識情報データベースを持っている。すなわち、1本1本の道路ごとにそれがどのくらいの速度制限になっているのか、どこに一時停止が設定されているのを認識することができる。こういった情報を持っているからこそ、細かい注意喚起アナウンスが実現できるという。

 また、AI-Contact NOWでは一定の間隔を置いてGPSのデータを取得し、それによって車両の運行状況を把握しているが、スマホのGPSは精度が低く、それだけで交通ルールを正確にアナウンスすることは難しい。たとえば五差路以上の複雑な交差点では、進行方向の測定に少し誤差が生じるだけで、侵入できる/できないなど誤った交通ルールを適用してしまう可能性がある。

 そこで、道路情報と位置情報とのマッチングをGPSによる「点」単位で行なうのではなく、車両の進行方向の文脈に沿って「線」で照合する新しいマップマッチング技術を開発した。これにより、従来のGPSに依存した運行状況の把握にはない精緻な違反検知を実現しているという。

 このような技術の裏付けによって開発されているが、山地氏はまだまだ満足していない。

 「フィールドテストでお使いいただいたお客様からは、アナウンスの数が多すぎるとか、車間が狭いといったアナウンスは煩雑に過ぎるのではないかといったコメントを頂戴しており、まだまだ調整が必要だと感じている。アナウンスの数や間隔などは、AI-Contact NOWをローンチした後も、お客様やパートナー企業のみなさまの声を聞きながら、継続して調整していきたいと思っている」(山地氏)

 一方で、高度な機能を持つアプリケーションを1つ開発しただけで、交通安全を実現できるというほど現実は甘くないと山地氏は語る。システム以上に、車両運行に関わる全ての人たちの安全運転に対する意識を高めることこそが重要で、「AI-Contact NOW」はその文化の育成に寄与するツールという位置づけだ。

 「AI-Contactを導入した企業では、社員の間で交通違反に関する話題が増えたと言われている。あそこの交差点で一時停止違反になりやすいから気をつけろよといったような、アプリの攻略法みたいな話題が増えていると聞いている。こういう会話が増える、意識が高まるということが重要だと思っている。

 このアプリは交通違反の多い「悪いドライバー」を見つけ出すツールではない。むしろ安全運転を励行している人を見つけ、褒めていくというところに使ってほしいと思っている。ドライバー単位ではなく、支店や支部など拠点ごとの安全運転順守率を測定できるようにしているのもそのため。交通ルールを守ったドライバーや、そういった人の集まる拠点を評価する。このアプリを通じてその姿勢を見せることによって、全体の引き上げを図るというポジティブな文脈で使っていただくことを前提として作っている。それによって企業に安全運転の文化が根付くことを願っている」(山地氏)

ジェネクスト株式会社 取締役 COO 山地 瞭氏

 AI-Contact NOWの初期費用は0円で、月額は年一括払いの場合で1人1628円、月払いの場合だと1958円で導入ができる。対応OSはiOS/Androidだが、アプリを利用するには別途「AI-Contact NOWプラン」の契約が必要となる。


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