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ギアボックスを掃除します
動かなくなっていたパタパタ時計の掃除の続きです(前回「数十年モノのパタパタ時計 モーターがひどいことになっていたので清掃しました」)。
ギアボックスを開けたところ、ここのグリスもやっぱり暗い褐色に変色していました。
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ギアボックスの中も全体的に茶色っぽくなっていました。ギアは変色し、隅には黒褐色のグリスが溜まっています
左上にある円柱の付け根には黒っぽいグリスが溜まり、右上のたぶん白かったであろうギアは歯のところが茶色になっています。モーター部分のグリスが水飴みたいにベタベタになっていたことを考えると、ここもヤバそう、というか確実にヤバい。このままでまともに動くとは思えないのでバラして掃除します。
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まず金属プレートが付いたギアを外します。下のギアは真っ茶色
見える範囲で8枚のギアが重なっていました。一番上にあるのが左上の金属プレートが付いた黒いギア。モーターのギアと噛み合うギアです。まずはこれから外していきます。
このギアは一見なんともなさそうですが、その下のギアやケースを見るととても問題がないとは思えません。黒いからわからないだけで、劣化したグリスでベタベタなはずです。
一体化したギアをバラして拭き掃除
それが決定的になったのが、他のギアを外した時。黒いギアのすぐ下、右上にある白いギアを外そうとしたら、めっちゃ抵抗があって抜けてこなかったんですよね。黒いギアはスッと外れたのに。なんていうか、くっついちゃってるみたいな感じです。
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ギアがくっついてしまっていて、まとめて外れてきました
その感覚は正しくて、もしかしてと思って大きいギアを摘んでみたら、ほかのギアも一緒に外れてきてしまいました。グリスで接着されたような状態です。こんなんじゃたとえモーターがまともだったとしても回るはずがありませんよね。
ギアはちょっと引っ張ったぐらいでは剥がせず、ベタベタになった飴で張り付いたみたいになっています。
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ギアを剥がして1枚ずつグリスを拭き取っていきます
ギアの固まりから1枚ずつ剥がして模型用の塗料皿に入れ、模型用塗料の薄め液をチューっとかけて2、3分放置。グリスが少しやわらかくなったところで皿から出して、今度は綿棒やキッチンペーパーに薄め液を付けてゴシゴシしていきます。
歯と歯の間のグリスはそれでは取れなかったので、つまようじの先端を細くカットしたものでかき出しました。歯が30個以上あってなかなか面倒な作業でしたけど、こういうのって嫌いじゃないので黙々と作業。30分もしないうちにきれいになりました。
ケースもきれいにして組みなおします
ほかに隠れたギアはなくて、見た目どおり全部で8個でした。特に汚れていたのが右上にある同じ形をした3つのギア。どんなに拭き取っても茶色っぽさが消えず、どうも染まってしまっているようです。まあ、これはあきらめるしかありません。正しく動いてくれるならそれで十分です。
ギアがきれいになったところで次はケースの番。内側の底に溜まっていたグリスを綿棒+薄め液、つまようじなどいつものメンバーを駆使してきれいにしていきます。
金属プレート付きのギアがはまっていた円柱状の部分は複雑な形に見えましたが、グリスを拭いてみたらそうでもありませんでした。ギアの軸と金属プレートが引っかかるピンがあり、1ヵ所凹んで見えたのは穴。どうやら向こう側に貫通しているようです。
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ケースの外にあるフタを開けると中は汚れたグリスで真っ黒
ケースの外側を見るとモーターのカバーに付いてたのと同じようなフタ状のものが付いていました。開けてみると中はまたもや真っ黒で、グリスが詰まっています。フタには空気穴があるので、これもモーターのところと同じで、少しずつ注油するためにグリスを溜めておくスペースなんじゃないかと思います。
ここも綿棒&薄め液で全部拭き取り、スプレー式グリスをシューッと入れてフタを閉めます。ちょっと気になるのはスプレー式グリスじゃサラサラすぎる点。それしかなかったので使いましたが、あっという間に全部流れ出ちゃいそうな気がするんですよね。
もしこの時計がちゃんと動くようになるようなら、シリコングリスなどのもっと粘度の高いグリスに入れ替えようと思います。
小さいギアは周波数切り替え
ギアがまとめて外れてきた時に、白い大きなギアの裏側に張り付いていた小さな黒と白の2つのギア。ギアを元どおりにはめ込んでいくついでに、これらが何の役に立っているのかをチェックしてみました。
差し込む所は周波数切り替えレバーにつながっていて、レバーを動かすと左右にカチカチと動きました。東日本用の50Hzでは黒いギアが、西日本用の60Hzでは白いギアが黒い最終ギアに接するようになっています。
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レバーを50Hzに合わせた状態。左下の黒い最終ギアに小さい黒いギアが接しています
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レバーを60Hzに合わせた状態。黒いギアが離れて白いギアに切り替わっています
この黒白2つのギアを回すギアの歯数は13。2つのギアは上半分と下半分で違う歯数になっていて、下半分が最終ギア側です。
黒の歯数は上が13で下が12、白は上が13で下は10。つまり黒が1回転すると最終ギアを12歯分だけ回すのに対し、白は10歯分しか回転させないということになります。
同じ歯数だと60Hzは50Hzの1.2倍速く動いてしまうので、ギアを切り替えることでその差を調整しているんですね。どうやって切り替えてるんだろう? と思っていたんですが、機械的にやっていたとは。
ギアの金属プレートは逆回転防止の機構
また、最初に外したギアの金属プレートはたぶん逆回転防止だと思われます。
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モーターが回転すると、動作の邪魔にならない位置にプレートが移動します
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モーターの軸にあるギアには周囲2/5ぐらいに出っ張りがあり、それが金属プレートを押すようになっています
この金属プレートはギアに固定されているわけではなく、自由に回るようになっています。モーターのギアにはプレートに当たる位置に出っ張りがあり、ぶつかっちゃうんじゃないかと思ったんですが、試しにモーターを差し込んで手で回してみたところ、特に何の支障もなく回転しました。どうやらモーターの出っ張りに押され続けているだけで、回転には何の影響も与えていないようです。
役割がわかったのはモーターを逆回転させた時でした。少し回すと引っかかって止まってしまったのです。
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モーターを逆回転させるとプレートが中央に出てきてギアの回転を抑止します
モーターを外してみると金属プレートがギアの歯を隠すように右に動いていました。どうやら逆回転させると、このプレートを噛んで止まるようになっているみたいです。
パタパタ時計は自重でプレートが落ちて表示が変わるため、その機構上、逆回転ができません。そのためここで万が一の逆回転を防いでいるのではないかと思います。
掃除で直りました!
掃除の途中で撮影してあった写真を元にギアボックスを組みなおし、中にスプレー式グリスを吹き付けて掃除は完了。ギアボックス、電磁石、モーターの順に取り付けていき、テストをしてみます。
表示部分の内部機構が壊れていたら自分にはお手上げなので、これで直ってくれますようにと祈りつつ、いざ通電。
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ケースに入れる前に動作テスト。縞々がぐるぐると回り、1分でパタンと分表示が変わりました
結果はバッチリチリバツ! ユラユラと左右に揺れて見えていた縞縞模様は右から左に流れるようになり、2:01だったのが1分後には分のところがパタンと動いて2:02に。
どうやら動かないのは機械的に壊れているわけではなく、グリスの劣化のせいだったようで、すっかり普通に動作するようになりました。ラッキー!
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ケースがめっちゃ汚かったので中性洗剤で洗いました
あとは元通りケースに入れれば終了と思ったんですが、ケースをよく見てみたらめっちゃ汚い。カビかもしれません。せっかくきれいにしたのに見た目がコレじゃアレなので、パネルを外して洗います。
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これで異常なし。普段使いできます
洗ったあと、しっかり乾かしてから組み立てて完成! 小窓からは縞々が横に流れているのが見え、照明もアラームもちゃんと動くことを確認しました。せっかく直したので普段使いしたいと思います。
それにしても、こういうのが1個あると、当時の物がいろいろ欲しくなっちゃうんですよねー(買い物フラグ)。
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