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STARTUP×知財戦略 第91回

HVC KYOTO 2020ポストイベント

ピッチと動画で未来を拓く!「ヘルスケアベンチャーのための発信力向上講座」レポート

2021年03月29日 06時00分更新

文● アイデアスケッチ 編集●ASCII STARTUP

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 日本貿易振興機構(JETRO)と京都リサーチパーク株式会社(KRP)は、2021年2月22日、京都大学産官学連携本部(SACI)、京都大学イノベーションキャピタル(株)、関西イノベーションイニシアティブ(表幹事機関公益財団法人都市活力研究所)の協力のもと、ヘルスケア分野を中心に、研究の事業化に必要な基礎知識を踏まえ、グローバル市場に対する発信力を磨くための実践的なプログラムを企画。第4回は、知財戦略と情報発信についての学びと気づきの機会をテーマに、オンライン配信した。

※HVC KYOTO 2021(7月2日)開催に向け只今ピッチ登壇者募集。くわしくはこちらをご確認ください。 

ヘルスケアベンチャーのための発信力向上講座~ピッチと動画で未来を拓く!~

 講義は、経済産業省 特許庁 総務部 企画調査課 ベンチャー支援班長の鎌田哲生氏が担当。「特許庁のスタートアップ支援策と近年の技術動向に関して」と題し、特許庁の支援策や最新の出願動向、スタートアップがつまずく課題とその対応策について説明があった。

 情報収集の方法やベンチャー企業×知財審査における支援策、スタートアップの取引慣行実態調査、オープンイノベーション促進のためのモデル契約書、特許出願動向、人工関節の市場環境調査に至るまで、幅広いテーマを網羅した講義となった。

経済産業省 特許庁 総務部 企画調査課 ベンチャー支援班長の鎌田哲生氏

 後半の鼎談「スタートアップの広報と法務」では、パネリストとして筑波大学医学医療系 教授 小栁 智義氏、株式会社角川アスキー総合研究所 ASCII STARTUP鈴木 亮久(ガチ鈴木)、弁護士の黒田 真稚惠氏が登壇し、発表と意見交換を行った。

「スタートアップの広報と法務」ノンコン資料の作り方/法的問題との付き合い方

 小栁氏から「オープンイノベーションを進める上でありがちなトラブルについて」という投げかけがあり、黒田氏よりさまざまな契約に際し注意すべきは、「契約書の目的条項などを参考に、何のための契約でこれをしたらどういうことになって、次にどういう段階へ移行するのかを確認した上で契約をしていく必要がある」というコメントがあった。

筑波大学医学医療系 教授 小栁 智義氏(左上)、株式会社角川アスキー総合研究所 鈴木 亮久(下)

 契約に慣れている人にとっては当たり前のことであるが、初めて契約をするスタートアップ企業の場合は、きちんと中身を読まず、「●●契約」といったタイトルのイメージやテンプレートを使用していることの安心感だけで進めてしまうことがありがちだという。「まずは、自分がこの相手と何をしたいか、それが契約の中に落とし込まれていて、自分が困る条項になっていないか、を確認することから始めていく必要がある」と説明。

 小柳氏からは「契約内容が実態を反映した文章になっているのかを確認しなければならない。日本語でありながら難解な場合も多いので、法律の専門家の先生に教えていただきながら、最初は勉強していくしかない」というアドバイスがあった。

 黒田氏は、「テンプレートはそのまま使うのではなく、状況に合わせて修正するもの。自分がやりたくないことが書いてあってもテンプレートだからこんなものなのかなと済ませてしまうと、そこで間違いが起きてしまう」と指摘。相談する際も、弁護士はその会社が「何をしたいのか」を知っているわけではないので、自分たちにとって何が重要で、どういうことがしたいのか、どういうことをしたくないのかを伝えることが重要だという説明があった。

 鈴木からはノンコン資料のつくり方として「メディア側から見たスタートアップPR、露出強化のポイント」の紹介があった。

株式会社角川アスキー総合研究所 鈴木 亮久による「ノンコン資料のつくり方」

 企業が発信する情報・プレスリリースの目的の中では、新製品やプロダクトの発表が一般的、業務提携やオープンイノベーションの成果発表なども露出できるポイントとなる。プレスリリースの配信サービスは数多くあり、ベンチャーやスタートアップの場合は無料で使用できるものも多い。プレスリリースを出すハードルは以前と比べると相当下がっている。

 ベンチャー企業が大きくなってくるとすべての社員に情報が届かないというようなケースでは、プレスリリースが社員向けの情報発信につながるという一面もあると説明した。

 プレスリリースで記者が注目するのは「国内初」「世界初」という部分。メディア側は、プレスリリースの情報に根拠が掲載されていないと記事にすることはないという。

 また、最近流行している「Clubhouse」では、海外のカンファレンスに参加しやすくなっており、3分間または5分間のピッチ動画を送って欲しいと言われるケースが多くなっている。カンファレンスの中で次々と動画が流され、その後海外の投資家の方から連絡が来たという事例もある。海外と直接つながることができるという点では、ハードルが下がっているので、新しいツールとして活用の可能性を探っていただきたいと鈴木氏から提案があった。

 小栁氏からは「Clubhouseの特質は情報が記録されない、情報が残らないこと。一方でYahoo!の場合は記録が丁寧に残っているという対比が面白い」という感想があった。ピッチ動画に関しては、どこまで情報を出すのかという問題について鈴木からは、「インパクトの強い部分だけが記憶に残るのは仕方がない部分。基本は出せる情報しか出せない。その中でいかに自社のPRポイントを強調できるか。根拠をしっかり出したものがメインになっていくだろう」とコメント。

 また、「Clubhouseに視聴者側で入っている際、これを話してしまっていいの? というような話が多々あった。Clubhouseだから残らないからと前置きしながら話す人もいる」とビットコインや医療マスクなどの具体例を挙げて、その危うさについて指摘があった。

 「SNSではリリースではないけれど情報が洩れるという点について情報開示としてはいかがなものか」という問題点に対して、黒田氏は「(NDAで守秘義務を負っている情報については、)証拠が残るか残らないかに関わらず話すと契約違反になる。また、自社製品の情報について不用意に話すことで、研究開発の優位性を基礎づける情報や特許取得に関わるデータが流出してしまうと影響は大きい。Clubhouseのようなノリの場所では、つい話してしまうことがあるので気を付けるべき。秘密保持義務を課していた、資料にもコンフィデンシャルと記載していた、といっても、情報がいったん外に出てしまうと、回収は困難で、実態としての影響は生じてしまう。オンラインが増えると感覚が麻痺しがちであるが、どこまで情報を出すかはコントロールしなければならない」とコメント。

 鈴木は「取材自体もオンラインが多い。スタートアップピッチのイベントを取材して記事にするケースでは、情報開示された資料は公にしていいものだという判断になる。あとで投資家向けの資料の中で外に出せないものがあったと言っても、出す出さないはメディア側の自由」とメディア側の意見を述べた。これまでスタートアップピッチをクローズドの環境で行ってきた方々は、その感覚で公のピッチで資料を出してしまうのはリスクの高い行為であり、それを踏まえた上でどうインパクトを出していくかが重要だという説明があった。

 「利害関係者でない場合、NDAを結んでも保護されるとは限らないという感覚がある。NDAの実効性やコミュニケーションの重要性について知りたい」という参加者からの質問に対し、黒田氏は「秘密保持契約違反の立証は難しい場合が多い。(相手との連携の)段階ごとで必要な情報は変わってくる。NDAを結んだからといってすぐにすべての情報を出すのではなく、段階に応じた情報コントロールが必要。契約を結んで義務を課すのとは別に、どの段階で何をどこまで出すのかというビジネス上の判断は必要」とアドバイス。テクニックとしては、鈴木氏からフィンガープリントを埋め込んでトラッキングできる方法なども紹介された。

 最後に改めて、「医薬品広告規制」については、黒田氏から厚生労働省のホームページが共有され、「アピールだけを考えて資料を作ってしまうとこれらの点に違反してしまうことをまず知っておくべき」と広告資料を作る際の注意点について説明があった。

 小柳氏からは、「事例集は多くあり、法令は情報開示がされているにも関わらず、そこにリーチできていない。特許庁の鎌田氏からも多くの情報や事例が公開されていることの紹介があったが、今後はぜひ活用してほしい」、鈴木氏からは「ヘルスケアの分野だけでなく、AIでも言えることだが、メディア側はどれくらいの精度でできるのかを調べることができない。ヘルスケアの場合、効果を派生させるにはメディアを利用するケースは多い。ベンチャーから“効きます”と言えなくてもメディアは、“腰痛を解決するベンチャーが現れた”という書き方ができる」というメディアを活用してブランド力を高める方法についての説明があり、講座は終了した。

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