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アクセラレーションプログラムFASTAR 第7回

自社の魅力を整理して採用につなげる効果的なマーケテンィング手法を解説

人材獲得で中小企業に役立つ「採用ブランディング」とは

2021年03月17日 18時00分更新

文● アイデアスケッチ 編集●ASCII STARTUP

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 独立行政法人中小企業基盤整備機構は、2020年12月9日に「ベンチャー・中小企業向けの採用ブランディング」というテーマで、FASTAR会員企業向けのオンラインイベントを開催。採用活動を行う上で抑えておきたい、自社の見せ方や魅力を効果的に設計する方法について、ベンチャー企業の採用ブランディングや人事採用支援を行う株式会社ポテンシャライト代表取締役の山根 一城氏を講師に招いて解説した。

応募前の「採用マーケティング」を理解する

 最初に山根氏は、本日のテーマであり「2021年に抑えておきたい採用関連の用語として上位に入るキーワード」として、「採用マーケティング」というワードを紹介した。採用マーケティングとは、採用したいペルソナに対して、「認知」「検討」「興味」のプロセスを踏み、応募してもらうための手法だ。

 採用マーケティングの施策は、応募前のフェーズで行われる。応募が来てからの対策も当然検討する必要はあるが、社名の認知からスタートして実際に応募してもらうまでの施策の重要性は日々増しているという。「従来、採用戦略を立案した後のステップは、求人情報を媒体に出稿するか、エージェントに依頼するかのほぼ2択だったが、戦略立案後のステップに採用ブランディングが入ってきている」と山根氏が位置付けを解説した。

採用マーケティングは、採用戦略と採用設計手法の間に位置付けられている

 山根氏は採用マーケティングの事例として、採用活動における魅力を発掘・言語化・整理する「採用ブランンディング」と各魅力を狭く・深く打ち出す「採用広報」、各魅力を薄く・広く打ち出す「採用ピッチ資料」の3つを解説した。

採用マーケティングの事例

 採用ブランディングを行う際には、自社の魅力を理解する必要がある。「福利厚生が充実している」「代表や役員が魅力的」「通いやすい立地」など、候補者にアピールできる魅力を発掘していくつ挙げられるかが採用活動では重要だという。「事前に準備をせず思いつきで話しても伝わらないので、きちんと整理・文言化することも大切」と山根氏は話した。

 採用広報は、文字通り採用における広報活動だ。企業が自社の採用ページに掲載する社員紹介や社員インタビューも採用広報の一種だという。採用広報では、洗い出した自社の魅力からいくつかの項目に絞って、狭く深く打ち出していく。

採用広報では、社員インタビューなどを通じて企業の魅力を深く掘り下げていく

自社のHPに社員インタビューを載せる企業も増えている

 一方、全ての魅力を網羅して広く展開する活動が「採用ピッチ資料」にあたる。営業担当が顧客に提示するプレゼン資料と同じように、採用面に絞って自社の魅力をまとめればよい。採用広報や採用ピッチ資料については、サイボウズ株式会社や株式会社SmartHRなどが参考になると山根氏から紹介があった。自社の採用活動に特化した会社概要の資料をHPに埋め込んで、誰でも閲覧できるようにしている。

採用ブランディングで自社の魅力を整理

 イベントでは、採用ブランディングを深掘りして解説が行われた。採用ブランディングについて山根氏は、「企業を魅力的に表現するための情報を引き出して整理することと定義される」と説明する。ポテンシャライトでは、約2年前に自社がブランディングしていた約50社の魅力を洗い出して一覧化し、重複する部分を除いて整理したところ、「事業内容」や「社長の経歴」「福利厚生」など、23の項目に分けられる結論に達したという。さらに、各項目は5つに分類できるそうだ。なお、現在はさらに細かい項目も立てており、項目は8つに分類できるというが「今回は、ひとまず23個を抑えておけばOK」と山根氏は解説した。その中でも山根氏は、「ベンチャーや中小企業は、創業前に感じていた業界の課題や、代表がどのようなミッションを掲げて立ち上げたかなどは、特にしっかり打ち出した方が良い」とアドバイスした。

 魅力を洗い出す際の注意点についても解説。「『事業内容は事実の一つで、魅力にできるかは御社次第』とお伝えしている。仮に唯一無二の事業であれば、そのまま話すだけでも魅力的なブランディングができる。しかし、競合他社が多い事業だと、単に紹介しても興味を持ってもらえないため、競合他社との違いを明確にする必要がある」(山根氏)。

企業の魅力は23の項目に分類できる

洗い出した企業の魅力を8つに分類した図

 「仮に自分が転職をするのであれば、8分類のうち何を軸に転職活動をするのかを思い浮かべてほしいと」山根氏は話す。採用候補者の中には、さまざまな指向を持つ人がいて、優先順位も千差万別だ。「当然、どの企業も8分類の中で重視する項目はあるが、どの方向でも勝負できるカードも出せるように魅力を設計した方が良いだろう」(山根氏)

 採用ブランディングの解説終了後は、参加者を3〜4名のグループに分けてオンラインでワークショップを実施した。最初に、個人ワークとしてポテンシャライトが用意した「採用ブランディングスコアシート」を各参加者が記入。シートには、「ミッション/ビジョン誕生の背景も含め、魅力的に、且つ具体的に語れるかどうか?」など、山根氏が解説した魅力に関連する43の項目が設定されており、参加者は1〜5点で自己採点を実施した。後半のグループワークでは、採点内容と洗い出した魅力に対して、ファシリテーターとして参加した同社の社員がフィードバックを行った。

明日から使える採用ブランディングテクニック5選

 ワークショップ終了後は、明日から使える5つのブランディングテクニックを紹介した。自社の魅力を洗い出したり語ったりする上でも参考になる。

・「業界の問題点」は魅力を語る上で活用しやすい

 自社の魅力を設計する際に、「業界の問題点」は非常に活用しやすいワードだという。医者が参加できるSNS「MedPeer」を運営しているメドピア株式会社は、代表の石見氏自身が医者という経歴を持っている。石見氏は同社の創業前から、ネット社会の台頭により、医者同士が学会などで直接情報共有や意見交換をする機会が減っていることに、強い危機感を抱いていたという。日本の医療業界全体の集合知が低下していることへの問題意識が、創業のきっかけになったという。

・参入する業界の海外競合事例も把握する

 「参入している業界の海外競合事例も話せれば強い」と山根氏は話す。CtoCのライブ配信アプリ「17Live」を運営する17LIVE株式会社は、2017年に設立。当時は、日本にライブ配信文化を初めて持ち込んだ企業だったため、採用活動時も事業自体の魅力がなかなか候補者に理解されなかったという。そこで、日本の市場ではなく、ライブ配信が進んでいた中国や台湾の事例を紹介し、中国では3人に1人がライブ配信を利用していることや、時価総額1兆円の企業が誕生していることなどを紹介して、日本市場の可能性をアピールしたそうだ。

・福利厚生は誕生した背景を語る

 白猫プロジェクトなどのスマホ向けゲームを配信している株式会社コロプラでは、福利厚生の一環として、朝にフルーツバー、昼にサラダバーを社員に提供しているという。山根氏が当時副社長だった千葉氏に理由を聞いたところ、「ゲーム業界はブラックなイメージを持たれがち。そこで、社員の健康増進に寄与できる福利厚生を考えていた。社員の健康を保つことで本人も周りの家族もハッピーになる」と答えたそうだ。「背景を話すだけで、福利厚生の魅力が何倍にもアップする」と、山根氏はポイントを話した。

・情報を「加工」「修飾」する

 自社が持つ魅力を加工・修飾して伝えることは非常に重要だという。例えば、単に「この業界はすごく成長しています」とだけ話すのではなく、「この業界は前年対比155%成長しており、日本の業界の2017年度成長率ランキング2位でした」などと紹介することで、より刺さりやすくなる。

・「ワーディング」が重要

 盛り込むワード次第で、相手が抱くイメージはまったく異なる。ポテンシャライトがブランディングを担当した、調剤薬局向けのシステム開発を請け負う株式会社カケハシでは、事業の魅力を伝えるために、「5億6000万回のコミュニケーションを変革している企業」というキャッチフレーズを作ったという。カケハシは、提供するシステムで薬剤師の業務時間を短縮し、空いた時間で患者とのコミュニケーションを充実させてほしいという理念がある。そこで、処方箋をやり取りする回数だけコミュニケーションが発生していると想定し、日本で一年間に発行されている約5億6000万枚という数字から、上記のキャッチフレーズを生み出した。「調剤薬局向けのシステム開発企業」と、そのまま説明しても魅力が伝わりにくいと悩む企業に、別のワードを用いて解決策を提示した事例だ。他の企業でも、数字や相対比較を盛り込んでワーディングをしていると山根氏は話した。

トラブルや低迷期を織り交ぜたストーリーを作る

プロジェクトXの構成を参考に自社のストーリーを作ると魅力が増す

 最後に山根氏は、企業や団体のサクセスストーリーを描くテレビ番組「プロジェクトX」を例に挙げて、ブランディングのポイントを紹介した。プロジェクトXは、どの回も構成が大体同じだという。番組では大まかに「順調に滑り出す創業時期」「問題が起きた時期」「問題を乗り越えて復活した時期」「エピローグ」の4つに分けて、ストーリーが作られている。この構成を自社の企業紹介やプレゼンにも上手く当てはめると面白いと山根氏は話す。

 「ワークショップで自社の採用ブランディングスコアが低くて危機感を抱いた方もいるかもしれないが、どの企業もトラブルや低迷期はあると思う。成功事例だけをアピールするのではなく、トラブルや低迷期にどのような対応をして乗り越えたかをドラマチックに語ることにより、マイナスイメージの払拭に繋がったり、良い形で話を進めることができるだろう」とアドバイスをして締めくくった。

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