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STARTUP×知財戦略 第80回

「スタートアップが知っておきたいPRにつながる商標、知財戦略とは by IP BASE in 福岡」レポート

独自のブランドを確立するには? スタートアップが知るべきPRにつながる商標、知財戦略

2021年02月16日 09時00分更新

文● 藤原達矢(アバンギャルド) 編集●ASCII STARTUP

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 特許庁ベンチャー支援班は、2020年12月18日、スタートアップ向けセミナー「スタートアップが知っておきたいPRにつながる商標、知財戦略とは by IP BASE in 福岡」を福岡市で開催した。テーマは商標と知財戦略。弁理士やブランディングのプロが、商標を登録しておくことの重要性や、知財戦略の立て方について講演を行なった。また、実際に活躍するスタートアップ企業が、疑問を専門家に質問する機会も設けた。

 会場となったのは、福岡市のスタートアップ支援施設、「Fukuoka Growth Next」。同施設には、150社を超えるスタートアップ企業が入居している。施設側は、アントレプレナーやエンジニアの育成といった成長支援、協業、資本の呼び込みなどの支援プログラムを実施している。

 登壇したのは、WEIN Group VP of PR/BRANDINGの瀧本 裕子氏、弁護士・弁理士の田中 雅敏氏、福岡のスタートアップ企業から23(トゥースリー)株式会社 代表取締役CEOの清水 淳史氏、株式会社Reright 代表取締役の松田 拓也氏、株式会社 airamp Japan 代表取締役で元シルク・ド・ソレイユのbeatboxアーティスト 齊藤 和生氏、司会進行にはビジネスタレントの髙田 理世氏。

スタートアップを取り巻く課題とPR/知財戦略について

 広報・ブランディングのプロというだけでなく、弁理士としても活躍する瀧本裕子氏が演壇に立った。瀧本氏は、PR代理店やブランディング会社で12年間勤務した。その後、弁理士として5年間、大手通信会社で知的財産のライセンスや権利活用などを担当。現在は独立し、スタートアップを中心に、ブランディングや知財戦略の支援をしている。

WEIN Group VP of PR/BRANDING 瀧本 裕子氏

 スタートアップの課題として、ブランディングに必要なノウハウが十分に確立されていないことや、知的財産の権利化ができていないことがあるという。「それでも、手間と費用を惜しんで、対処をしていない企業が大半です」(瀧本氏)。

 良いものをつくっただけでは売れない、と瀧本氏は語る。ファン化やノウハウの管理、資金調達や採用に有利な広報といった、ブランディングが必要なのだ。ブランド力があれば、顧客のロイヤルティが育ち、継続した関係が築ける。また、商品価値が認められるので、「近くに安いお店ができたので、次からはそこで買おう」などといった立地条件や価格競争などの外部環境に左右されにくくなる。

 ブランドを確立するには、まず商圏での自社のポジションを確認する必要がある。競合他社との差別化を図るポイントを明確にしなければならない。次にブランドコンセプトを構築する。誰にどんな価値を届けるのかという商品やサービスのコンセプトを決める。そうやって構築したブランドを、特許や商標などの知的財産権で守るプロテクションをしたのち、ユーザーに知ってもらうために周知を行なう。

 名称開発をする際には、他社の商標登録や出願はないか、必ず特許庁のデータベース等で確認しなければならない。商標登録がされていなくても、他社の著名な商標は使用できない。たとえば、過去に「パー・ソニー」という商標がおもちゃ分類で出願された際には、「SONY」と混同されるという理由で認められなかった。SONYは、おもちゃ分類で商標を登録していない。「特許庁のホームページには、このような判例が掲載されているほか、個別に問い合わせをすることもできるので、活用して欲しい」と瀧本氏は呼びかけた。

特許の効用と商標を取得する際のポイント

 続いて登壇したのは、弁護士だけでなく、弁理士としての資格も持つ田中雅敏氏。スタートアップの支援も行なっており、会場となったFukuoka Growth Nextにも入居しているという。

明倫国際法律事務所 代表弁護士 田中雅敏氏

 プロモーション活動をする中で、「世界初!」「業界初!」「業務効率を30%アップ!」など、「初めて」のサービスであることや、何かと比較して優位であることを示すには、景品表示法等の法律に注意しなければならないそうだ。根拠を示す必要があり、不十分だと判断されると、不当表示になる。2020年には、ウイルス除去などの商品で、摘発事例が多かったという。

 「自社の商品で『世界初!』『業界初!』などのプロモーションをしたい場合、特許をとるのがおすすめです」(田中氏)。特許を取得するには、サービスや商品の新規性と進歩性が求められ、申請時にエビデンスも要求される。取得できた場合には、効果の裏付けとなるので、安心して商品をPRできるというわけだ。

 商標を取るには、区分の選択も重要なポイントだ。例えば、お土産のラーメンセットを販売するときには、「ラーメンの麺やだし」についてはもちろん、「どんぶり」や、フランチャイズ化を目指すのであれば「フランチャイズに関する財政サービス」についても取得する必要がある。「偽物が出るのを防ぐためだけに商標登録をするわけではありません。自分で売っているラーメンの名前でどんぶりを売られたら嫌ですよね。しかも、そこが変なやり方をしていたらブランドイメージが傷つくでしょう。ブランドイメージを守るためにはある程度広く商標登録をする必要があります」(田中氏)

 費用や手間のことを考えると、最初に商標をたくさん取っておくのは難しい。田中氏は「初めから全部取得しなくてもいいけれど、売れたら出そうと覚えておいて欲しい」と呼びかけた。「くまモン」は、まず、「文房具類、印刷物」などで商標を登録し、そこから徐々に布団カバーや毛布など、商標区分を増やしていったそうだ。

スタートアップ代表と瀧本氏・田中氏の質疑応答

 最初に質問をしたのは、収益分配型ストリーミングサービスを開発中の株式会社airamp Japan代表取締役 齊藤和生氏。当日の朝、特許を出願したという斎藤氏は、「会社設立時には田中先生に大変お世話になりました。将来こういうことがあるよというのを書面に落とせたと思っていて、特許を出すのは良いことだと感じています。ありがとうございました」と田中氏に感謝を伝えた。

株式会社airamp Japan代表取締役 齊藤和生氏

 「スタートアップ企業がやろうとしていることを、弁理士さんがどれくらい理解しているかがわからない状態で、依頼するのは心理的なハードルが高かった。お金をあらゆるところに使っていかなければならない中で、優先的に特許出願を行なうのは難しいと感じました。スタートアップが知財戦略を練る中で、優先順位などがあれば教えて欲しいです」と斎藤氏は質問を投げかけた。

 「たしかに、スタートアップはスピードが勝負。いちいち秘密保持契約などを気にしていたらビジネスチャンスを逃してしまう可能性もあるので、そこはある程度切り分けて考える必要があると思います」と前置きをした上で、「ただ、広く特許を出願することもできます。大雑把に出しておいて、審査請求をするまでの期間で業界の様子を見ながら作り込んでいくということはできるので、出願はできれば早くしておきたいですね」と田中氏は答えた。

 「特許は絶対に取っておいた方がいいと思います」と瀧本氏。大手会社は、スタートアップとの協業や投資を検討する際に、必ず「特許を取っているか」も判断材料の大きなひとつになるからだ。「まだ確立されたサービスがなくても、素晴らしい技術があって、それがきちんと特許や商標で守られていれば、投資をする理由にはなります」と語った。

 続いて登壇したのは、おすすめ商品検索特化の検索エンジン「ソクシル」を運営する株式会社Reright代表取締役の松田拓也氏だ。インターネットで欲しい商品を探すのに時間がかかるようになったことに着目し、評判の良い商品をすぐに検索できるサービス、「SOKUSIRU」を開発した。現在はウェブサービスとして展開しているが、アプリの開発も検討しているという松田氏。「アプリの多くが、商標を取っておらず、一般名詞でアプリをリリースしていますが、それは実際にやっていいことなのでしょうか?」と質問をした。

株式会社Reright代表取締役 松田拓也氏

 「アプリであれば、たしかに一般名詞を使っているものが多いという印象を受けます。一般名称だと商標を取る必要がない、というかそもそも取れません。アプリの場合は、デザインで差別化をしているのだと思います。ただ、やはり、サービスがある程度普及したり、アプリを事業の主軸とすることが決まった場合は、他と差別化できる名前を付けて商標を取ることをおすすめします。ただの『ラーメン』よりも、『田中ラーメン』の方が覚えてもらえます」と瀧本氏は答えた。

 田中氏は、「一般名詞をつけてはいけないというわけではありません。例えば、『Amazon』はアマゾン川という一般名詞ですが、それをショッピングサービスで使うことが新しかった。そういうものであれば商標を取ることもできますので、探してみるのもいいかもしれません」と話した。

 最後に質問をしたのは、UI/UXデザイン、システム開発、動画制作など各種コンテンツ制作を主事業とする23株式会社代表取締役CEOの清水淳史氏。同社は、立ち上げてから4ヵ月という若い会社だ。地方にクリエイティブ力が足りない、クリエイティブ業界に若手や外国人が足りないという課題感を持った22名の学生メンバーで活動している。主にウェブやアプリの開発、映像の制作などのクライアントワークを中心に事業を展開している。

23株式会社代表取締役CEO 清水淳史氏

 清水氏が質問をしたのは、「ビジネスモデル特許」に関してだ。「これからプロダクトを考えていきたいのですが、スタートアップの参入障壁としてビジネスモデル特許が挙げられると思います。本当に効力があるのか、成功事例などを教えていただきたいです」(清水氏)

 「みなさんご存知のところでいくと、成功事例は『いきなり!ステーキ』さんだと思います。要は、7番の人が肉を200gオーダーしたら、肉を切り、7番という札を付けておいて、焼いて、お客さんのもとに持っていく、という特許です。同業他社から異議申し立てをされて、特許の範囲が狭まりましたが、模倣店が出るまでに1年4ヵ月くらいかかりました。飲食業界は模倣店が出現しやすく、これだけの期間、模倣店が出なかったというのは珍しい事例です。1年4ヵ月の間にたくさん出店をして、消費者や同業他社に『立ち食いステーキはあそこの店のものだよね』というイメージを植えつければ、頭ひとつ飛び抜けて引き離すことはできます」(田中氏)

 事業を展開することに注力するあまり、スタートアップが後回しにしがちな知財戦略。せっかくいいサービスが作れても、商標や特許を取っていなければ、なかなか信用してもらえない場合もある。イベントに参加したスタートアップの経営者たちは、知財戦略についても怠らずにやらなければならないという意識を持てただろう。

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