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目指すは「空の道路公団」次世代領域でビジネスを動かすA.L.I. Technologies

有人飛行体、ブロックチェーン、AIと広い領域に渡って研究・開発

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 UAV(無人小型飛行体)、ブロックチェーン、AIと広い領域に渡って研究開発、運用を手掛ける株式会社A.L.I. Technologies。一見ばらばらに見えるこれらの次世代領域の各事業は、すべて、彼らが実現しようとする未来に必要なパーツである。代表取締役会長 小松周平氏、代表取締役社長 片野大輔氏に話を聞いた。

株式会社A.L.I. Technologiesの代表取締役会長 小松周平氏(左)、代表取締役社長 片野大輔氏(右)

 株式会社A.L.I. Technologiesは2016年9月に創業したテクノロジースタートアップ。UAV(unmanned aerial vehicle:無人小型飛行体)や有人飛行体、ブロックチェーン、AIと広い領域に渡って、研究や開発、運用を行っている。次世代の領域ではあるが、すでにビジネスは動いており、黒字化も達成しているという。

 東京大学の学生が設立したUAV研究企業・エアリアルラボに小松周平氏が資本参画したのが源流。現在の経営体制でA.L.I. Technologiesがスタートしたのは2017年のことだ。その後、小松氏は代表取締役会長となり、代表取締役社長を務めるのが片野大輔氏。

 「僕はそれまで金融業界でトレーディングをしていましたが、ずっと起業したいという想いがあった。ただし、どうせやるなら、スターウォーズも好きなので、ホバーバイクなど世にないもの作ってみたいと考えた。空飛ぶ車を考える時、空には物理的に道路を作れないので、仮想空間で道路を作るためのルールを作り上げる必要がある。そこで、我々は空の道路公団になりたい、と考えた」(小松氏)

株式会社A.L.I. Technologies 代表取締役会長 小松周平氏

 小松氏は東京大学大学院を卒業した後に、外資系証券会社で勤務。その後海外ヘッジファンドで働いていた。だが2014年に日本に帰国した際に、再会した東大の後輩たちがドローンベンチャーとしてUAVの研究開発を行っていることを知った。

 一方片野氏は、東京大学卒業後はコンサルティング会社に入社。アジア展開もするコンサルファームの日本代表を務めるなど、国内海外問わず幅広い分野で企業の事業展開をリードしてきた。その中でいくつかのエンジェル投資もしていたのだが、その出資先の1社がA.L.I. Technologiesの前身であるエアリアルラボだった。

 当時は社員が5人ほどで、事業構想はあるものの、仲間を集めて組織を作り、資金を集めるといったフェーズだった。小松氏だけでは手が回らないところもあり、前職で新規事業の立ち上げ経験が豊富な友人でもあった片野氏がジョインした。現在では、小松氏は主に開発や関係先へのロビーイングを、片野氏が後述する各事業部のビジネスをまとめあげている。

 「いろいろと事業の話をしたところ、仮想道路やエアーモビリティを含めた事業構想に魅力を感じた。最初は個人の株主として入ったが、2年少し前に、こちらにフルコミットすることに」(片野氏)

株式会社A.L.I. Technologies 代表取締役社長 片野大輔氏

なぜエアーモビリディとシェアードコンピューティングなのか

A.L.I. Technologies

 空の公共インフラを作ることを目標にして、同社はエアーモビリティ事業、ドローン・AI事業、シェアードコンピューティングという3つの事業を手がけている。いろいろな分野に手を出しているようにも見えるが、これは目標を実現するために必要な戦略となっている。

 エアーモビリティ事業では、地上から浮上して走行するホバーバイクを世界で初めて実用化させるべく、研究開発を進めている。しかし、いきなり空飛ぶ車を作っても、現状の世界にはルールがあるので、自由に飛ばすことができない。そのため、同事業ではホバーバイクを道交法の範囲内で扱えるようにするための啓蒙活動に力を入れている。

 同様に、ドローン自体もより認知させ、社会実装させるべく活動している。だがそのためには多数の操縦士が必要で、運用のルールも作っていかなければならない。しかし、操縦士は簡単に増やせるものでもない。

 そこで同社は国際航空連盟(Fédération Aéronautique Internationale:FAI)のレースにも実行委員として参加。先端の操縦士と関わり、レギュレーションを変更できる立場を確保した。狙うは、エアーモビリティの世界を見据え、ホバーバイクレースの開催だ。ホバーバイクがFAIの管轄になれば、今度は空の道の話になってくる。

 なお、「空のインフラ」と言っても、空には物理的な道路は作れないため、仮想的に構築する必要がある。この仮想道路の必要性は、FAIでも議題に上がっており、認知されつつあるという。

 しかし、もしこの仮想道路を1億人が利用する場合、「1億人の空の見え方」があるため、航空管制には膨大な演算力が不可欠になる。その3D航路は、リアルタイムのCGレンダリングで描画することになるため、同時に高速かつ低遅延の通信回線も求められる。さらに、航空インフラととらえるならば、このコンピューターは地域に分散している必要もある。

 株式会社A.L.I. Technologiesが目指すこのような「シェアードコンピューティング」という概念は、いまだドローンなどが空を飛び交っていない現在では使わないものでもある。そこで、まずはクラウドゲームやCGレンダリング、ブロックチェーンの承認作業などに活用しているのだという。

 「シェアードコンピューティングでは演算力を提供する。例えば、AIのディープラーニングをする場合、通常はクラウドでCPUとGPUを借りて自分でセットするなど大変時間がかかるが、僕らのサービスでは1時間で終わらせることもできる」(小松氏)

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