最新パーツ性能チェック 第298回
Comet Lake-Sことインテル第10世代Coreを第3世代Ryzenや第9世代Coreと比較!
Core i9-10900KとCore i7-10700K、Core i5-10600Kの性能を速攻検証
2020年05月20日 22時00分更新
製造プロセスは周回遅れでもAMDに食らいつくインテル
では、まずは定番のベンチマークソフト「CINEBENCH R20」のスコアーからチェックしよう。前述の通り、第10世代CoreプロセッサーについてはTurbo Boost Power Max(PL1)=125Wとなるように設定したので、第9世代CoreプロセッサーはPL1を95W設定にして比較する(グラフ中では「(95W)」表記)。だが今回は、Power Limitを制限しない従来のやり方(グラフ中は無印)でのパフォーマンスもチェックしてみたので参考にしてほしい。
注目のCore i9-10900Kはマルチスレッド時で6300ポイントオーバーで、8コア/16スレッドのCore i7-10700KやCore i9-9900Kに比べると大幅にポイントを伸ばしている。それでいてシングルスレッド時も533ポイントまで伸ばして競合の第3世代Ryzen勢を降し、高クロックモデルならではの強みを見せた。ただし、シングルスレッドテストでも5.3GHzを出せるのはほんの一瞬(この時のCPUコア温度はすべて60度未満)であるため、温度的にはそれほど高くなくても、TVBは常時効くわけではないようだ。
同じ8コア/16スレッドでもCore i9-9900K(PL1制限なし)とCore i7-10700Kを比べた場合、Core i7-10700Kのほうがわずかにスコアーが高くなったのもおもしろい。TBM3.0によって最大5.1GHzまで伸びるほか、メモリークロックが高くなったことが効いているようだ。
そして、Core i5-10600KはCore i7-9700K(PL1制限なし)相当と、見事に旧世代の格上モデルを新世代の格下モデルが食らうという状況を作っている。Core i9-9900K対Core i7-10700K、Core i7-9700K対Core i5-10600Kという図式で見た場合、性能はほぼ同等なのに初出価格では安くなっている。今回のモデルチェンジは大幅な価格改定と言ってしまっても良いほどだ。もちろん、マザーボードは交換必須なので合計価格で考えるとお得感は薄れるが……。
ただし、Ryzenとの比較を視野に入れてしまうと、第10世代Coreプロセッサーの輝きは今ひとつパッとしない印象になるのも確かだ。Ryzen 9 3900Xは12コア/24スレッドとコア数が多いため、Core i9-10900Kを上回るのは当然としても、Ryzen 7 3800XはCore i7-10700Kとほぼ同等からやや上、Ryzen 5 3600XとCore i5-10600Kも同様の結果を出している。むしろ周回遅れの14nmプロセスを使い続けながらも、Ryzenにぎりぎりで食らいつくインテルの執念の結果、とも言えるだろう。
消費電力はそれなりに増加
パフォーマンスと消費電力は表裏一体。とりわけプロセスルール据え置きで高クロック&論理コアの増加を果たした第10世代Coreプロセッサーで一番懸念されるのは消費電力だ。そこで、ラトックシステム製Bluetoothワットチェッカー「REX-BTWATTCH1」を利用し、システム全体の消費電力を計測してみた。
今回は超高負荷テストツール「Prime95」のSmallFFTテストを10分実行した時の消費電力を比較する。グラフで「高負荷時(ピーク)」とあるのは処理を始めてすぐの安定値で、ごく短時間で終了する。その後「高負荷時(安定)」の値に移行する。
なお、この2つの値が大きく変動するのは第9/10世代Coreプロセッサーのうち物理8コア以上のモデルに限定され、6コアモデルはほとんど変わらない。高負荷時(安定)の数値がないCPUはその値がピーク値とほとんど変わらないことを示すものだ。また、アイドル時とはシステム起動10分後の安定値となる。
予想通りCore i9-10900K搭載システムの消費電力のピークはRyzen 9 3900X搭載システムよりも100W程度高くなった。前述の通り、Core i9-10900Kをはじめとする第10世代CoreプロセッサーはすべてPL1=125W設定での計測値となるが、PL1を無制限にするとピーク時は387Wまで到達し、途中でBSODを出して再起動してしまった(この時のCPUパッケージ温度は100度近くまで到達)。PL1=125WならCore i9-9900KのPower Limit無制限時よりもピーク消費電力は比較的低くて済むが、Power Limitを無制限にすると14nmゆえの消費電力が爆発するわけだ。
Core i9-9900K対Core i7-10700Kでも、PL1を各CPUのTDPに合わせた状態(PL1=95Wまたは125W)ではCore i7-10700Kのほうが(TDP125Wなので)消費電力は高くなるが、Corei9-9900K側をPL1無制限(BIOSのデフォルト設定)にした場合はCore i7-10700Kのほうが省電力動作で高パフォーマンス動作となる。第10世代Coreプロセッサーは第9世代Coreプロセッサーと同じプロセスルールだが、高クロック化するため若干Power Limitの制限を緩くして出した製品と考えれば当然の結果だ。
ただ実際に使ってみると、超高負荷をかけない限りはTDP125Wになったからといっても使用感は前世代と変わらないと考えてよいだろう。TDP(PL1)が上がったぶん、CPUクーラーの選択には気をつけるべきだとは思うが、それほど警戒する必要はない、といったところだ(CPUの使い方にもよるだろうが)。
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