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ASCII STARTUP イベントピックアップ 第68回

「第10回 豊洲の港からpresentsグローバルオープンイノベーションコンテスト」東京選考会

ヘルスケアデータの統合エコシステムと金融認証サービスがグランドフィナーレに進出

2020年01月13日 09時00分更新

文● 柳谷智宣 編集●ASCII STARTUP 撮影●曽根田元

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 NTTデータは2019年12月2日、ビジネスコンテスト「第10回 豊洲の港からpresentsグローバルオープンイノベーションコンテスト」の東京選考会を豊洲文化センター(豊洲シビックセンター)にて開催した。今回は、世界16都市の選考会にて各地域の課題やマーケットニーズに焦点を当てたテーマにコンテストを実施。各選考会での優勝企業は、2020年1月24日に開催されるグランドフィナーレに出場する。

 「豊洲の港からpresentsグローバルオープンイノベーションコンテスト」は、大企業とベンチャーのマッチングによる新規事業創出を目的にNTTデータが2014年より開催しているビジネスコンテスト。参加した企業はコンテストの入賞に関わらず、NTTデータやNTTデータの顧客企業との事業連携につながるのが特徴だ。過去9回のコンテストからは20件以上のビジネスが生まれており、昨年は、中国のスタートアップ企業CloudPick社との業務提携で、レジ無しデジタル店舗出店サービスを5ヵ月間で事業化を実現している。

 今回の東京選考会には、Holo-Light、ToneTag(Brand of Naffa Innovations Pvt. Ltd)、株式会社OsidOri、Grapevine World GmbH、株式会社レトリバ、株式会社AILL、株式会社MILIZE、Qurate Inc、株式会社Authlete、Visionaries 777 Ltd.――の10社が出場した。

世界のあらゆるヘルスケアデータをやりとりするエコシステムを構築

 Grapevine World GmbH社は、ヘルスケアデータを安全にやりとりするためのブロックチェーンを活用した分散型ボーダレスエコシステム「Grapevine World」を開発しているオーストラリアのスタートアップ。現在、病院、製薬会社、保険会社などが保有する医療や健康データは、各機関や組織が個々に保有している。そのため、患者は自分の健康データを利用できず、医師もほかの機関が保有するデータを見ることができない。Grapevine Worldは、IHE(Integrating the Healthcare Enterprise)の標準規格とブロックチェーンを組み合わせて、あらゆる医療データを統合し、安全に情報交換・活用できるようにするものだ。

 同社のシステムは、データ自体は保有せず、データが保存されている場所やアクセスの来歴といったメタデータのみを保存し、ヘルスケアデータを求める相手と保有者をつなぐマーケットプレイスとして機能する。個人は、自分の健康データをアプリで一元管理し、医療機関などに自身の医療データを提供するかどうかを自分で決められるようになる。世界中のヘルスケアデータが統合されれば、症例や治験者が見つけやすくなり、より効率的に新しい治療法や医薬品が開発できる。また、ヘルスケアアプリや保険商品、健康関連サービスなどの幅広いビジネスで活用が広がりそうだ。

Business Development Officer フィリックス・ビーラー氏

共働き夫婦をメイン顧客とした「家族ウォレットアプリ」

 共働き世帯では、家計管理が曖昧になりやすく、家計を一方に任せるのは、負担や不満のもとだ。株式会社OsidOriの開発する「OshidOri」は、共働き家族のためのウォレットアプリ。夫と妻の個人ページと、夫婦が共有する家族のページがあり、個人のお金と家族のお金を1つのアプリで管理できるのが特徴だ。家族のページに家計口座や子供の学資保険などを登録しておくと、夫婦がそれぞれ自分のアプリから家庭のお金の状況を把握できる。

 主要な金融機関との連携サービスに対応しており、口座の残高やカードの利用履歴が自動的に反映される。個人のページはお互いに見えないが、個人の口座から光熱費などを支払った場合、明細をスワイプして相手や家族のページに簡単にシェアする機能や、口座をつくらずに簡易的に共同貯金をする機能があり、プライバシーを守りつつ家計を管理しやすい。

 アプリは無料でiPhoneとAndroid版を提供。リリースから3ヵ月で3万弱のユーザーがダウンロード済みだ。ビジネスモデルとしては、銀行のアプリに組み込むなど、金融機関とのサービス連携を目指している。

株式会社OsidOri CEO 宮本 敬史氏

プログラミングなしでオンプレミス、クラウド環境のアプリを統合

 Workato(ワーカート)は、2013年にシリコンバレーで設立されたSaaS型iPaaSベンダー。企業のシステム統合は、これまでのオンプレミス環境とクラウド環境のデータの同期からさらに一歩進み、業務フローの自動化が進められている。

 同社のプラットフォームは、1)データの同期、2)業務フローの自動化、3)ボットによる単一UIでの業務の実行、4)アプリに拡張サービスを提供するプロセスインテグレーション、5)オンプレミスとクラウドを含む360以上の外部アプリをプログラミングなしで統合するAPIマネジメント機能を搭載。ただしiPaaSが効果を発揮するには、企業の業務プロセスを把握することが大事だ。広い顧客をもつNTTデータとの提携で、日本にAPIエコノミーを展開していきたいとのこと。

Workato日本カントリーマネージャー 鈴木 浩之氏

グローバルなオープンバンキング市場への進出

 株式会社Authlete は、API認可に特化したソリューションを開発。これまでセブン銀行、楽天銀行の銀行APIの認可基盤として採用されているほか、保険APIや情報銀行「MEY」のID連携などにも利用されている。

 Authleteの特徴は、金融グレードAPI「FAPI」に対応済みであること。FAPIは世界の金融機関で採用が進行中で、英国のOpen BankingもFAPIをベースに作られている。FAPIに対応した10社のソリューションのうち、Authleteは、世界最速で認可を取得したそうだ。また、新しいユーザー認証・認可に関する仕様「CIBA」にも対応。12月2日現在、同社が世界で最初かつ唯一の認定プロバイダーだ。

 NTTデータの金融機関向けクラウドサービス「OpenCanvas」の認可サーバーにAuthleteが採用されれば、FAPI導入コストの削減、世界標準仕様への追随、海外FinTech企業との連携促進、世界各地の銀行への採用などが見込まれる。

株式会社Authlete 事業開発部 岸田 圭輔氏

複数SNSへの投稿から分析まで1つのプラットフォームで管理

 「Qurate」は、SNSやブログなど複数のコンテンツを統合管理するプラットフォーム。企業のコンテンツマーケティングでは、TwitterやFacebook、instagramなどのSNSやブログなど複数のプラットフォームを使っており、それぞれのコンテンツを管理し、ユーザーからの反応の収集や分析をする必要がある。Qurateは、運用しているコンテンツをContent Hubに統合し、投稿、リスニング、分析を1つにまとめて管理することで、運用を効率化し、コンテンツマーケティングの投資対効果の向上が期待できる。

 凸版印刷との協業では、SNS管理に特化した「Social Focus」をリリース。NTTデータとの連携では、オンライン・オフラインのデータを活用してパーソナライズするソリューションを提案した。

Qurate Inc Founder/CEO トム・ブルック氏

機械学習でコンプライアンス違反通話を防止

 株式会社レトリバは、音声通話やテキストの文脈からリスク要因を検出するソリューションを開発するAIベンダー。会話や文章からコンプライアンス違反を見つけるにはキーワード検索では難しく、無関係の文章がたくさん検出されてしまう。レトリバの分類AIは、文章全体の文脈から違反を推定して抽出することで人による監視作業を効率化できる。

 セコムのリアルタイム災害情報サービスでの事例では、SNSから火災情報を抽出する作業にAIを導入したところ、人による情報精査コストを10分の1に削減でき、配信数も増えたそうだ。

 同社の技術はNTTデータのコールセンターの分類にも採用されており、今後は、コンプライアンスチェックに拡大していきたいとのこと。さらに多くの企業との連携で教師データを収集して汎用性を高め、業界共通のコンプライアンスチェック基盤の構築を目指している。

株式会社レトリバ 営業企画部 部長 山川 訓司氏

産業機械の溶接写真から欠陥を発見するAIソフトウェア

 DISCOVERY CONSULTING ENGINEERS社は、産業機器や工場のデジタルプロトタイプを開発しているメーカーだ。ウクライナにモデリングオフィスをもち、英国、米国、カナダを拠点に事業を展開している。

 産業機械や工場では、溶接の欠陥などを確認するため専用の機器や目視による非破壊検査(NDT)を実施しており、製造プロセスの約10%がNDTに費やされているという。NDTの目視試験は作業員に負担がかかり、検査ミスは事故や災害にもつながりかねない。

 そこで同社は、このNDTのプロセスをデジタル化するソフトウェア「AI 4 NDT」を開発。畳み込みニューラルネットワークを用いて、溶接写真から接合部の欠陥をチェックできる。作業員がルーティンワークから解放されるだけでなく、目視試験の時間を最小限に抑えることで、工場のダウンタイムの削減にもなる。

 利用料金は、年間3500ドルのサブスクリプション。現在は、印刷機能のないデモバージョンを提供中だ。

DISCOVERY CONSULTING ENGINEERS LIMITED ナタリア・ルコフスカ氏

AR/VR/MRを活用した設備機器メンテナンスツール

 Visionaries 777は、拡張現実を用いてIoTトレーニングの検証・点検作業と検証プロセスを最適化するメンテナンスツールを紹介。

 同社はこれまで自動車業界を中心にAR/VR/MRのソフトウェアを提供していたが、現在は、ARを活用した保守システム(ARPM)の展開を進めている。渋谷のコワーキングスペース「Plug and Play Shibuya」でPoCを実施しており、従来は紙ベースでチェックしていた建物内の点検業務をXRのナビゲーション空間で管理し、すべての業務をデバイス内で行なっている。工場のピッキング作業に使われているシステムを応用し、GPSやビーコンを使用せずにオフラインでも使用可能だ。

 ARPMのメリットは、作業時間の短縮やペーパーレス、点検データを一元管理できること。点検施設内のARのマーカーを読み取るとチェック項目が表示される仕組みで、経験の浅い技術者でも迷わず作業が可能だ。また、実際に現地に行かないと点検できないため、不正の防止にもなる。今後はIoTやAIとも組み合わせて、機器メンテナンスへの活用へ広げていきたいとのこと。

Visionaries 777 Ltd. 事業開発マネージャー 青柳 奈津子氏

3D図面をAR表示して、品質管理やトレーニングを支援

 Holo-Lightは2015年にオーストリアで設立されたARスタートアップ。同社は、マイクロソフトのホロレンズを活用して、自動車業界向けのARソリューションを開発している。

 自動車のメンテナンスに用いる場合、ホロレンズをかけるとチェックすべき箇所や、部品を取り付ける方向などのマークが表示される。チェックしたデータはサーバーに保存され、追跡が可能だ。製品開発では、3D CADデータをアップロードして実物と同じサイズでシミュレーションすれば、試作のコストを削減できる。現在、BMW、ポルシェ、日産、ホンダ、マグナ、BOSCHに採用され、品質管理や開発、トレーニングに活用されている。

 さらに新製品としてスタイラスペン「Holo-Stylus」も紹介。ジェスチャーよりも細かい入力ができ、試作品のチェックや医療のトレーニングにも使えそうだ。

Holo-Light チーフプロジェクトオフィサー フィリップ・ウシャレヴィッツ

個人情報の売値と相手を自分で決められる情報銀行アプリ

 MILIZEは、個人と企業間でレシートやEC購入履歴を流通させるレシート取引市場アプリ「MILIZE-Rex」を開発。個人の行動・購入履歴といった個人情報は、ビッグデータやAIビジネスでは大きな価値を生むが、今は無償で提供している。この状況を打開し、個人主体で情報を売買し、対価を得られるような仕組みを作るのが同社の狙いだ。

 アプリでは、自分のレシートやEC利用履歴の写真を取り込み、データごとに開示レベルと売値を決定し、売り先の把握や利用方法を確認できる。情報提供に対する対価を得られるだけでなく、購入傾向からライフイベントに合わせたお得情報や人生設定のアドバイスが受けられる。

 また企業側は、直接コンタクトできる顧客を獲得でき、信頼性の高い情報を得ることでターゲティングしやすいのがメリットだ。現在、リリースへ向けて情報銀行への認定手続きを進めている段階だ。

株式会社MILIZE 代位表取締役社長 田中 徹氏

AIが恋愛のコミュニケーションをサポート

 株式会社AILLは、AIがコミュニケーションをサポートするAI恋愛ナビゲーションサービスを開発している。AILLの特徴は、ディープラーニングを用いた会話ナビゲート機能と好感度ナビゲート機能だ。会話ナビゲート機能は、相手の反応の解釈、アプローチ方法をリアルタイムで的確に提案し、会話が長続きする

ようにアシストしてくれる。

 さらに、好感度ナビゲート機能が気になる異性の好感度向上ポイントを感知、見える化し、効率よいアプローチが可能だ。法人向けの福利厚生サービスとして提供し、企業のシステム利用料は月額5万円、従業員は月額5千円で使い放題を予定。

 今後は、海外のマッチングサービスにもOEM提供していく計画だ。NTTデータの協業では、恋愛のAIアルゴリズムを営業や採用などさまざまなコミュニケーションへの転用を提案した。

株式会社AILL 代表取締役 豊嶋 千奈氏

 11組のプレゼンテーションのあと、審査員によるグランドフィナーレに進出する優勝企業が選考された。審査員には、名古屋大学 大学院情報科学研究者 情報システム学専攻教授の山本 修一郎氏、多摩大学客員教授の本荘 修二氏、Global Catalyst Partners Global Catalyst Partners Japan Managing Director & Co-founderの大澤 弘治氏の3名と、NTTデータのテーマオーナーが内部審査員として参加した。

 東京選考会の優勝者は、ヘルスケアデータの統合システムを提案したGrapevine World GmbH社と、金融系認証サービスの株式会社Authlateが受賞。

 また、審査員特別賞は、株式会社AILLが受賞した。優勝した2社は、2020年1月24日に開催のグランドフィナーレに進出する。

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