NEDOシンポジウム「AI&ROBOT NEXT」、「革新的ロボット要素技術分野の発表」の講演内容
NEDOは2020年1月にAIやロボット導入による新分野・産業での需要創出に向けた シンポジウム「AI&ROBOT NEXT」を開催する。
シンポジウムでは各種の講演と展示が行なわれ、ここでは予定されている「革新的ロボット要素技術分野(革新的なアクチュエーション技術(スマートアクチュエーション/革新的なロボットインテグレーション技術)」の講演内容に関して紹介する。
1月17日(13時~14時)
革新的ロボット要素技術分野
革新的なアクチュエーション技術(スマートアクチュエーション)
「可塑化PVCゲルアクチュエータを用いたウェアラブルロボットの開発」
登壇者:橋本稔氏(信州大学繊維学部 特任教授)
概要:PVCゲルアクチュエータは、モーターやソレノイドでは困難と思われる静音性や軽量、親和性といった福祉機器に必要不可欠な要件を満たすことができる次世代アクチュエータ。腰サポートウェアのプロトタイプを開発し、医療・介護の現場や・農作業・運輸などの労働シーンでの腰の負担を軽減する。
「高効率・高減速ギヤを備えた高出力アクチュエータの研究開発」
登壇者:藤本康孝氏(横浜国立大学・教授)
概要:モーターのエンコーダ情報から負荷トルクの推定が可能なアクチュエータを紹介。複合遊星減速機に動力伝達効率最大化手法を適用したバイラテラル・ドライブ・ギヤにより実現。製造が容易で安価なことに加え、1/20~1/1000の幅広い減速比で逆駆動が可能な減速機を設計できるほか、ノンバックラッシ化する技術も提案・実現。
「全方向駆動機構を核とした革新的アクチュエーション技術の研究開発の実際」
登壇者:多田隈建二郎氏(東北大学・准教授)
概要:球状全方向車輪を基本構造およびコア技術として、各種ロボット機構を研究開発。外部保持式球状全方向車輪・双リング式全方向車輪・スクリュー式差動回転機構、交差型ヘリカル歯車機構、これら全統合した能動双リング機構および円形断面型クローラ機構に関しての事例とその具体的開発過程を説明。
「スライドリングマテリアルを用いた柔軟センサおよびアクチュエータの研究開発」
登壇者:竹内宏充氏(豊田合成株式会社 特機部 eR要素開発室 室長)
概要:スライドリングマテリアル(超分子)用いた誘電アクチュエータ・センサー(e-Rubber)の開発状況とその特徴について報告。このアクチュエータにより実現した心臓手術シミュレータ「SupeR BEAT」と、その他の応用事例について紹介。
「人間との親和性が高いウェアラブルアシスト機器のための可変粘弾性特性を有する革新的ソフトアクチュエータシステムの開発」
登壇者:奥井学氏(中央大学・助教)
概要:人間の動きのように粘弾性を構造的に変化できるアクチュエーションシステムを開発。空気圧人工筋肉と磁気粘性流体デバイスで駆動され、人間の関節のように関節のトルクや角度だけでなく粘弾性を構造的に変化できるため、人との自然な接触や安全な協調作業などが可能となる。提案システムの概要や、その応用例である外骨格アシスト装置について講演。
「機能性ポリマーを用いた濡れ性による吸着機構の研究開発」
登壇者:福田敏男氏(名城大学 教授)
概要:食品を対象とした吸着パッドの研究。形状が不定なものを把持するため、凹凸面を持つ対象でも吸着可能な濡れ性を用いた吸着パッド(Super Wet Adsorption pad: SWA pad)の研究開発を行なっている。講演では吸着パッドの作成方法や評価について報告。
「分子から作る『人工筋肉』」
登壇者:小長谷明彦氏(東京工業大学・特任教授)
概要:光刺激により収縮し、天然筋肉の10分の1の収縮力を持つ人工筋肉を分子から作ることを目指している。DNAオリガミ、分子モータおよび微小管等の生体分子を用いて分子人工筋肉の要素となる人工サルコメア構造を試作。光造形技術を用いて人工筋肉を人工物に装着、収縮させるシステムや人工サルコメア構造の創生を支援するための超分子構造設計支援システムを開発。
1月17日(14時5分~15時15分)
革新的ロボット要素技術分野
革新的なロボットインテグレーション技術
「人共存環境で活動するロボットのためのHRI行動シミュレーション技術の実現」
登壇者:佐竹聡氏(国際電気通信基礎技術研究所 研究員)
概要:実環境での開発時間を削減するため開発したHRI行動シミュレータを紹介。実データに基づき、人とロボットのインタラクションを再現、シミュレータ環境でのロボット・サービスをテスト可能とすることで、開発時間の短縮を実現する。
「接触を許容しながら安全かつ不快感を与えずに移動する自律移動技術の研究開発」
登壇者:今岡紀章氏(パナソニック株式会社 主任技師)
概要:人との接触までをも許容可能な自律移動を行なうために、人への接触を用いた働きかけ手法や、人の状態に合わせて適切に行動するための経路生成手法に関する基礎研究および実証活動の概要について紹介。
「知識の構造化によるロボットの知的行動の発現研究開発」
登壇者:黒田洋司氏(明治大学理工学部 専任教授)
概要:人が沢山存在する空間において、どのように正しく状況を認識し動くか、移動ロボットシステムの行動知能および運動システムに関する研究成果について講演。
「IoT時代に対応したORiN3の戦略及び仕様作成」
登壇者:高本治明氏(一般社団法人ロボット工業会 客員研究員)
概要:ORiNは、FAの世界とITの世界をつなぐミドルウェア。開発中のORiN3の目指す世界と、プロジェクト推進状況を説明した上で、今後のORiN3の展開を説明。
「人間らしい“目”を実現する:煙の先が見えるLidar」
登壇者:上塚尚登氏(国立研究開発法人産業技術総合研究所 電子光技術研究部門 招聘研究員)
概要:人間はエレクトロニクスに比べると極めて遅い動きの眼球を用いて行動する極めて効率的な視覚システムを持つ。このような機能を持つセンサー(Lidar)を実現。今後、自動運転などに適用する。
「非整備環境対応型高信頼ヒューマノイドロボットシステムの開発」
登壇者:金広文男氏(国立研究開発法人産業技術総合研究所 知能システム研究部門 ヒューマノイド研究グループ長)
概要:ロボットに合わせて作業環境を整備することが困難な非整備環境においても信頼度高く動作し、過酷環境における人の活動を代替して労働力不足を補い、人がより創造的な活動に注力できる社会を実現するためのヒューマノイドロボットシステムを開発。
「イメージセンサーを用いた環境認識処理の高速飛行体への適用」
登壇者:村越象氏(エアロセンス株式会社 技術開発部)
概要:ドローン市場では障害物回避、目視外飛行、非GNSS環境における飛行などさまざまな課題がある。小型・軽量・安価なイメージセンサーによる環境認識処理を活用することでインフラ保守や建築進捗管理など、実現例を紹介。
「フライトレコーダの標準化及び小型無人航空機の事故原因解析の研究開発」
登壇者:酒井和也氏(ブルーイノベーション株式会社 コンサルティングサービス部 次長)
概要:ドローンのフライトデータから事故原因を推定する解析システムとフライトデータを事故原因解明に活かすための共通データ仕様を検討する。
「人の手に近い高性能で堅牢性を併せ持つロボットハンドの開発」
登壇者:深谷直樹氏(東京都立産業技術高等専門学校 特任准教授)
概要:独自の”からくり”を用いることで、イチゴや電動ドリルなど様々な物体を容易に把持可能なロボットハンドの開発を行なっており、これまで開発してきた人型ロボットハンドや、産業用3指ハンドについて技術的開発内容、動作事例を紹介。
「支援・被支援双方にやさしい汎用人工手の研究開発」
登壇者:野崎貴裕氏(慶應義塾大学理工学部 専任講師 マサチューセッツ工科大学 客員研究員)
概要:触感伝達技術「リアルハプティクス」を用いて新たに開発した身体感覚を伝送する双腕型ロボットと、本成果が拓く未来社会について紹介。
シンポジウムの会場は新宿「LUMINE 0(ルミネ ゼロ)」(東京都渋谷区千駄ヶ谷五丁目24番55号 NEWoMan Shinjuku 5F)。開催時間は1月16日・1月17日(10時~17時予定)、ロボット展示は1月16日は13時30分~16時50分、1月17日は11時20分~16時50分。入場料は無料(事前登録制)。