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北海道・札幌が未来に近づく5日間「No Maps 2019」レポート第11回

NoMaps 2019 セッションレポート、観光業で活躍する「Bebot」の事例

台風で成田空港に足止めされた訪日外国人の心をつかんだAIチャットボット

2019年11月26日 07時00分更新

文● BookLOUD 根本 編集●北島幹雄/ASCII STARTUP

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成田空港でも利用されているAIチャットボットBebot

 商品やサービスに関する顧客からの問い合わせ対応に、リアルタイムのチャットを導入する企業が増えてきた。

 例えばヤマト運輸では、荷物の配達状況の確認や再配達依頼をLINE上で問い合わせできるようになっている。これは利用者の問い合わせに人間が答えているわけではなく、チャットボットと呼ばれるソフトウェアが自動応答しているものだ。FAQに載っているようなよくある質問であれば、その場で解答を得ることができる。

 2019年10月17日、「NoMapsビジネスカンファレンス」のセッションに、AIチャットボット「Bebot」を開発する株式会社ビースポーク 執行役員 兼 日本地区統括本部長の長野資正氏が登壇。ホテル、交通機関、地方自治体などで外国人観光客に利用されているBebotの事例を紹介した。

株式会社ビースポーク 執行役員 兼 日本地区統括本部長の長野資正氏

 Bebotはビースポークが独自に開発した自然言語処理エンジンを搭載しており、ユーザーが入力したテキストの意図を理解して適切な回答を返すことができる。GoogleMapや空港のフライトインフォメーションとシステム連携しており、利用者へ回答できる範囲が広いのが特徴だ。特に、外国人観光客向けのサービスを展開している業界で強みを発揮している。すでに成田空港や東京駅などで使われており、成田空港では1日約2万人の旅行者が利用しているという。

導入事例:成田国際空港

 成田空港から東京駅への行き方を問い合わせるとき、「Best way to Tokyo」という聞き方もあれば、「How do I get to~」や、ただ「Tokyo」とだけ聞いてくる利用者もいる。スペルミスも少なくない。前後の文脈、使われるシチュエーションなどを勘案しないと正しく回答することができない。

 加えて「Best way to Tokyo」という1つの文にも利用者が知りたいであろうことは複数含まれている。例えば、そこにつくまで何時間かかるのか、いくらかかるのか、最初の電車に乗り損ねたら次はいつ来るのか、切符はどこで買えるのか、それ以外の交通機関はあるのか、などである。Bebotは、利用者の増加に伴い質問の意図を正確に把握して回答文を作るノウハウを蓄積してきており、それが強みになっている。

利用者の意図を汲み取るのは簡単ではない

外国人観光客が求める“コト消費志向”の観光

 外国人観光客の傾向は、日本へのリピーターの増加によって、ショッピングや食べ歩きなどの“モノ消費志向”から、日本の自然や伝統文化を自分で体験する“コト消費志向”へと移りつつある。コト消費志向の観光は、モノ消費志向の観光に比べて特に内容理解に対するニーズが高い。例えば観光スポットを見る場合、その歴史や時代背景を理解した上で見るのと全く知らないで見るのとでは、感動の大きさが違うだろう。

 問題は、外国人観光客に向けて文化や時代背景をガイドできる人材の不足である。金沢市では「かなざわ自由時間」というサイトを立ち上げ、そこで金沢周辺のイベントやアクティビティといった観光プランを紹介している。紹介文は一部英語のものもあるが、ほとんどが日本語で書かれている。これは、ガイドが多言語対応できておらず、外国人観光客が来ても対応できないというのが大きな理由なのだそうだ。こういったシチュエーションで、BebotのようなAIチャットボットが活躍する。

 また、多言語対応だけでなく、観光スポットやイベントに関してどのような質問があったのか、満足したのかなどを対話ログから分析・把握できるのもチャットボットを使う利点の一つだ。

チャットボットだからわかること

災害時の外国人観光客を救うAIチャットボット

 Bebotは、仙台空港や東京駅、小田原から伊豆急下田駅の間を走る伊豆クレイルの中でも使える。成田空港では空港内のフリーWi-Fiに接続すると、自動的にBebotの画面に遷移する。そこにフライト番号を入れるとターミナルやゲートの番号、遅延などのステータス情報が回答される。空港でのショッピングについても、買いたいものを入力するとどこの店で買えるかを教えてくれる。

Bebotの導入例

 2019年9月に台風15号が来た際、成田空港では数多くのフライトがキャンセルになり観光客が大混乱に陥った。この時のBebotの利用状況を分析すると、利用者は(1)情報の探し方がわからない、(2)求めている情報が見つからない、(3)情報が間違っている・古い――などのトラブルに陥っていることが分かった。

 具体的には、空港スタッフに状況を聞きたくても聞ける人がどこにいるかわからない、空港内で多言語のアナウンスをしていても雑音が多すぎて聞き取れない、デジタルサイネージがどこにあるのかもわからないし見つかったとしても必ずしも自分の母国語で表示されているとは限らない、最新の情報を本部の人は知っていても現場まで情報が伝達されていない――といった状況だった。

 その結果、Bebotの利用者が一気に増えた。後で分析すると、フライトステータスのチェック、東京駅への電車の運行状況、宿泊施設の有無などの問い合わせなどが多数発生していたとのことだ。

 台風15号の経験を活かし、10月の台風19号の到来時にはいくつかの改良を加えていた。成田空港の最新情報は公式Twitterが多言語発信しているのでそちらに誘導し、Rebot上には台風の最新情報、キャンセルになったフライト情報、電車の情報を表示するボタンを設置した。結果として19号の時は15号の時より少ない混乱に止めることに貢献したという。

台風15号からの学びを活かして

 日本語を理解できない外国人観光客にとって、自分のスマホで、自国の言語で使えるチャットボットがあれば日本旅行の楽しみも倍加することは間違いない。おいしいお店のレコメンドから予約、店舗への誘導、災害時の情報発信までこなすBebotの恩恵を受ける観光客は今後ますます増えていくだろう。

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