サイネージによる新しいビデオコミュニケーション「NoMado」
BI Challengeの開始からまだ9ヵ月だが、すでにいくつかの企画はプロダクトとして形が見えてきている。スポーツ観戦をAIで支援する「SpoLive」(スポライブ)は、3月に開催されたSXSW 2019に出展。音声書き起こしサービス「CoeNote」は、9月からの商用化を予定している。
事務局と兼務する山本氏と湊氏の「スマートワーク」チームが開発しているビデオコミュニケーションインターフェースが「NoMado」だ。
「スマートワーク」チームでは、新しい働き方を推進するためのデバイスやサービスの開発に取り組んでいる。NoMadoは、縦型のテレビとビデオカメラを組み合わせて、遠隔地の相手と双方向コミュニケーションができるサイネージだ。NTTコミュニケーションズのリアルタイムコミュニケーション(WebRTC)プラットフォーム「SkyWay」をベースに、NoMadoのソフトウェア、テレビ、ビデオカメラと組み合わせたもの。音声認識AIを搭載し、画面に向かって「おつかれさまです」などと語りかけることで、相手とつながる。顔認証システムも実装可能だ。
また、風景配信サービスのランドスキップ社と提携し、使っていないときは、美しい風景の映像が流れる。窓のようなデザインでオフィスや施設の空間に馴染みやすく、従来のビデオ会議システムに比べて、身構えずに気軽にコミュニケーションができるのが特徴だ。
当初は、サテライトオフィスと本社とのコミュニケーションに使うことを想定していたが、実際に自分たちのオフィスに設置してみたところ、思っていたほどには使われなかったという。そこで方向転換し、オフィスのコミュニケーションに限らず、遠隔地同士がつながることで社会問題を解決するためのツールへとシフトしている。たとえば、医師や教員不足に悩む地方では、都心部とつながることで解決できるかもしれない。公民館などにNoMadoを設置し、定期的に東京の有名な医師に診察してもらう、有名な講師の授業が聞ける、といった使い方も考えられる。
「コミュニケーションは、メールや電話などの一対一から、Twitterのように多対多へと変わってきています。既存のウェブ会議ツールは、お互いに同じアプリケーションを使い、相手のIDを知っていないといけなかった。この多対多のコミュニケーションを現実世界で再現するプラットフォームがNoMadoです。その場にいる不特定多数の人が、NoMadoを介して、離れた場所の不特定多数の相手とより気軽にコミュニケーションできます」(山本氏)
現在は、オフィスや地域の施設、ホテル、レストラン、旅行代理店など、さまざまな場所や業種へのインタビューや検証をしているところだ。
「我々のチームだけでは、方向転換は遅れていたでしょう。メンタリングによって外の声を聞いたことで、比較的早い段階に気付けました。このBI Challengeがなかったら、と考えるとちょっと怖いですね」(湊氏)
来年度には5Gの正式サービスがスタートし、動画のコミュニケーションはより身近になる。個人のコミュニケーションツールであるPCやスマホに加えて、不特定多数が使えるコミュニケーションツールとしてのサイネージから新たな価値が生まれるかもしれない。
マネージャーとしてBI Challengeを推進する大貫氏は、「NTTコミュニケーションズは、社名のとおりコミュニケーションの会社。今まではインフラという縁の下の力持ちでしたが、これからは、もっと原体験に近づいたプロダクトで貢献できれば。BI Challengeから多数の成功事例をつくり、事業創出の文化を醸成させるのが経営企画部の使命。スピード感は大事ですが拙速に成果を急ぎ過ぎず、次世代を担う事業へとつなげていきたい」と展望を語ってくれた。