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海外事業の分離も控え「さらなるトランスフォームが必要」、創立20周年を“第2の創業”に

NTT Com庄司社長が2019年度戦略語る、開発中サービスも次々披露

2019年04月15日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 NTTコミュニケーションズ(NTT Com)は2019年4月9日、代表取締役社長の庄司哲也氏が出席して2019年度の事業戦略発表会を開催した。今年は創立20周年を迎える節目の年であり、同時に7月にはNTTグループとして大幅な組織改編(各社グローバル事業の統合)も控えている。庄司氏は顧客のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援する“DX Enabler”としての役割と同時に、NTT Com自身の変革も果たしていくと述べ、これからの成長戦略と今年リリース予定の新サービスなどを紹介した。

NTTコミュニケーションズ 代表取締役社長の庄司哲也氏

「グローバル/クラウド/マネージドサービス」を軸に変化し続けた20年間

 NTT Comの設立は1999年7月であり、今年はそれから20周年を迎える年だ。庄司氏はまずこの20年間で市場環境がどのように変化し、それに呼応してNTT Comではどのようなビジネス戦略を取ってきたのかを振り返った。

 NTT Comは、NTTグループ内で「長距離/国際通信」と「インターネット」のビジネスを担う企業として誕生し、当初の法人向けビジネスはネットワークや回線事業、個人向けビジネスはOCNのISP事業が主体となった。設立時に掲げた企業広告のコピーは「Change Communications.」であり、「長距離、国際通信、インターネットを変えていく」企業姿勢を示した。

1999年、NTTコミュニケーションズ設立当初の企業広告

 NTT Comが大きな転機を迎えたのは2011年。サーバー仮想化やクラウドサービスが普及し始める中で企業ICTのモデルは保有から利用へと形を変え、他方では多くの日系企業がグローバル進出やサプライチェーンのグローバル化などに取り組んでいた。こうした動きに呼応し、NTT Comでは新たに「グローバルクラウドビジョン」戦略を掲げ、グローバルビジネスの加速へと大きく舵を切った。グローバルで統一仕様のサービスメニューを提供し、ICTの側面から顧客企業のグローバル展開を支援していく。クラウドサービスやマネージドサービスの展開開始と強化もこの時期だ。

 そして2010年代後半に入り、NTT Comが新たな自社のミッションとして掲げているのが「DX Enabler」という言葉だ。Software-Defined技術、基盤ICT技術の発展も背景として、AI/IoT/ビッグデータといった技術がビジネスモデルを変革し、業種の垣根を超えてビジネスが拡大する時代となった。既存市場を“破壊”するディスラプター企業も次々に登場してくる。そうした時代環境の中で、顧客企業がDXに取り組み新たなビジネスモデルを創出するのを支援するのがNTT Comの役割というわけだ。

 「DXはもはや避けて通れない。NTT Comとしても顧客企業のDXにどう貢献できるのかが問われている。そこでDXを戦略の中心に据えるために『DX Enabler』を宣言し、事業展開をすることにした」

2010年代後半におけるNTT Comの事業戦略

 20年間を経て、NTT Comの事業構造も大きく変わったと庄司氏は語る。

 「創業当時(2001年度)には『音声・データ通信』のビジネスが87%を占めていたが、(2017年度には)57%まで縮退した。他方で『クラウド基盤』や『マネージドソリューション』といった(音声・データ通信以外の)ビジネスが12%から42%まで拡大している。また海外収益比率も7%から25%へ拡大し、4分の1を占めるまでになっている」

NTT Comの事業構造(2001年と2017年の比較)

 グローバル化/クラウド化/マネージドサービス化という3つの基本戦略を軸に変化を続けてきたNTT Comだが、これまでの変革も「まだ道半ば」であり「さらなるトランスフォームが必要だと考えている」と庄司氏は強調した。今年7月には後述するNTTグループ内でのグローバル事業統合が控えており、さらに2024年にはNTT固定電話の完全IP網化といった動きもある。市場と顧客の大きな変化がこれからも続くからだ。

今年度も顧客企業の「データ利活用」支援がテーマ、多数のサービスインを計画

 NTTグループでは現在、中期経営戦略として「Smart Worldの実現」を掲げている。このビジョンは顧客企業のDX=事業活動支援にとどまらず、より広範な「社会的課題の解決」や「SDGs=持続可能な社会の実現」までを視野に入れたものだ。庄司氏は、NTT ComがDX Enablerとして活動し、顧客企業のDX化を支援することでSmart Worldが実現していくと述べたうえで、NTT Comとしての2019年度の目標や提供予定サービスについて説明した。

 2019年度の大きな事業テーマとしては、昨年度から掲げる「顧客企業におけるデータ利活用の支援、促進」を挙げている。その動きをさらに加速させるために、「データ利活用を通じてDXを推進する顧客を支援するサービス群」と「データ利活用の基盤となるインフラサービス群」の2レイヤーでサービスの開発と提供を進めていく。

NTT Comが提供する「データ利活用を支えるサービス群」(2019年度に提供開始予定のものも含む)

 まず、顧客のデータ利活用を直接支援するサービスのレイヤーでは、「COTOHAシリーズ」「サブスクリプションビジネス支援サービス」「データマネジメントサービス/機能」の3つに注力する。いずれもNTT Comの自社開発サービスに加えて、NTTグループやパートナーとの協業も進め、ラインアップを強化していく。

 NTTグループの日本語・自然言語処理技術をベースとしたCOTOHAシリーズでは、あらゆるビジネスシーンでAIを活用可能にする“COTOHA Everywhere”の実現を目標として、サービスラインアップを拡充していく。前日にも「COTOHA Voice Insight」をローンチしているが、さらに2019年中には、質問の意味を理解したうえで多数の回答から最適な回答案を抽出するサービスもリリース予定だと説明した。

日本語・自然言語処理AIサービス「COTOHAシリーズ」のロードマップ

 サブスクリプション支援サービスについては、顧客企業がサブスクリプションモデルのビジネスを検討する中で、さまざまな課題にも直面していると説明。その課題を解決するべく、フロントエンド/バックエンド/商流管理の機能をフルパッケージした、SaaS型の安価なプラットフォームを提供する準備を進めていると述べた。ここではNTTグループでビリングシステム(課金システム)の実績を持つNTTコムウェア、サブスクリプションビジネス向けソリューションを持つビープラッツと協業しており、今秋からのサービス提供開始予定。

顧客企業がサブスクリプションモデルのビジネスを展開するうえで必要となる機能群をパッケージ化して提供する方針

 データマネジメントの領域では、標準的な機能群をサービスとして提供していくべく開発を進めていると語った。ここでもNTTグループ企業やパートナーの技術/製品を取り込んでいく方針で、たとえばCOTOHAシリーズやThings Cloudといった自社サービスのほか、Deeptector(NTTコムウェア)、iQuattro(NTTデータ)、DataRobot(データロボット)などの名を挙げ、サービスラインアップを構成していくことを説明した。

データマネジメント領域では、NTT Com自身のプロダクトだけでなく、NTTグループやパートナーのプロダクトも組み合わせて、包括的なサービスラインアップを揃えていく

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