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松村太郎の「アップル時評」ニュース解説・戦略分析 第45回

ため息の出るような、途方もない存在:

アップルがMacProでめざした理想のデザイン WWDC 2019

2019年06月06日 09時00分更新

文● 松村太郎 @taromatsumura

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●Mac Proは機能からデザインへと昇華した

 新しいMac Proはアルミニウムのタワー型という、コンピュータとしてはオーソドックスなスタイルへと回帰しました。しかしケースにも内部のシステムにも、アップルらしいデザインが施されています。

 デザインの基本はステンレススチールの磨かれたフレームから。ケースの上部はハンドルのように持つことができ、足は車輪に付け替えて簡単に移動させることもできます。

デザインの基礎となったフレーム

ケースの上部はハンドルのように持つことができる

 このフレームに上面と底面の板をつけ、さらに外装のケースを被せる仕組みとなっています。上面のラッチのような部品で簡単に着脱でき、ケースを外せば簡単に360度どこからでもアクセスできるようになります。

 プロセッサ以外をユーザーが手軽に組み替えられる「モジュール」の思想が前提となっていることが、こうしたデザインを生んでいます。メモリは最大1.5TBまで拡張できるほか、Mac Proには最大8つのPCI Expressスロットが利用できます。

モジュールによる拡張

●モジュールで拡張する

 アップルはグラフィックスやストレージ、動画編集を高速化させるAfterburnerなど、ニーズに合わせて拡張することができる「Apple MPX Module」を用意しています。

 たとえばRadeon Pro Vega II Duoグラフィックスモジュールを2つ差し込んで、最大56.8テラフロップスの性能を実現できます。標準構成で用意されるRadeon Pro 580Xは5.6テラフロップスであることから、10倍のレンジでグラフィックスの拡張ができるということです。

 また、アップルは動画編集を加速させる新しいモジュール、Afterburnerを用意しました。これはFinal Cut Pro等で用いられるProRes・ProRes RAWコーデックのアクセラレータで、最大8K動画3ストリーム、4K動画12ストリームの同時再生に対応します。

●特徴的な筐体のパターンも最大パフォーマンスのため

 MacProの正面は、「ラティスパターン」と言われる不思議な構造になっています。板の表裏から互い違いに半球がくりぬかれて作られた、目の大きなメッシュ構造で、強度と開口部を十分に確保しながら、表面積を最大化することに成功しました。これによって、ケースの金属自体の廃熱を効率よくこなしながら、外気を取り込むことができます。

目の大きなメッシュ構造

 そのすぐ背後には、1分間に300Lの空気を取り込める巨大な3つのファンが備わっています。ここで取り込んだ気流は、モジュールの間を吹き抜けるほか、底にあるブロワーに空気が集められ、メモリやSSDを効率的に冷やしていく仕組み。

 この設計を実現する理由もまた、パフォーマンスに関係します。

 CPU向けには最大300Wを供給できますが、廃熱効率が悪いと最大の性能を発揮できません。Mac Proが用意するのは最小構成で8コア3.5GHz Intel Xeon Wプロセッサ。最大構成は28コア2.5GHz Intel Xeon Wプロセッサで、Turbo Boost時には最大4.4GHzとなります。その性能を発揮するためには、十分な冷却システムが必要というわけです。

 また、筐体自体に強力な冷却システムを持たせることで、先述のMPXモジュール自体に冷却ファンを備える必要がなくなり、グラフィックスカードを2枚搭載しても、ストレージを更に拡張するスペースが残されているなど、1台のマシンのスペースを最大限に活用できるようにしています。

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