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ASCII STARTUP 今週のイチオシ! 第74回

地方密着型の電力小売りに続くエナジーテック企業の戦略

実績ゼロから変える業界標準 パネイルが目指す電力業界の刷新

2019年04月26日 07時00分更新

文● 山下竜大 聞き手・編集●北島幹雄/ASCII STARTUP 撮影●曽根田 元

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電力の運用をクラウドプラットフォームで統合

 現在サービスとして展開されているパネイルクラウドは、電力流通コストを大幅に削減できるクラウドベースのプラットフォーム。電力需要データ、天候、気温などの運用データをクラウドで高速処理することで、さまざまな付加価値が生み出せる。

 最適な料金プランや電力需給状況などを分析から、電気料金の計算・請求処理・請求書発送、さらには小売電気事業者の切り替えなど、さまざまな機能を有する。

 このパネイルクラウドの開発にあたり、技術的にもっとも苦心したのは、関連企業とのミドルウェア連携であった。電力業界における広域連携機関や各電力会社などとシステム連携が必要だが、この連携のプロトコルとして、SOAP(Simple Object Access Protocol)と呼ばれる1990年代に人気だったプロトコルが業界標準技術として使われていた。

 これは当時のベンダーが作成して、いまに至っている仕様である。それ以前は、JX手順というさらにマニアックなプロトコルだった。「電力自由化によりSOAPが使えるようになった。この仕様を軽量プログラミング言語と連携させるのが最大の課題だったが、実現できれば電力業界にイノベーションを起こせると思った」(名越氏)

 「使用する言語により、一緒にモノづくりをするエンジニアの層が変わる。現状でJavaエンジニアを集める形で勝てない。Ruby on RailsやPythonのようなライトウェイトランゲージを語れるエンジニアを集めれば、モダンなテクノロジーを取り込んだ、新しいシステムが作れる」(名越氏)

 このシステムを作り上げるにあたり、電力業界の経験者を社内に持たなかったのも同社ならではの特長だ。電力業界は、安心・安全が基本・絶対であり、効率性や先進性は二の次の業界。機械化・自動化は、信用せず、最後は人の手による昼夜3交代の作業が当たり前の業界である。この常識を会社に持ち込まれると、スタートアップとして前に進めなくなる。そこで、あえて電力業界経験者を当初採用しなかった。

 また電力の小売りを経験したことで、これまでドキュメント化されていなかった電力業界の細かな仕様、暗黙の了解があることも把握できた。こうした知見をパネイルクラウドに組み込むことで、電力関連企業からの評価も高まった。すでに大手スーパーや学校法人、製造工場などがパネイルクラウドを採用。顧客数は、約2万ユーザーまで拡大した。

 「最も驚いたのは、電気料金の計算時に、少数点以下を切り捨てる、切り上げる、四捨五入するなど、電力会社でバラバラな仕様だったこと。当時は、そんなことも理解しておらず、毎日のように指摘を受けた。現在は、ほとんど指摘はなく、むしろよく理解しているという評価をもらっている」(名越氏)

 今後、さらに多くの大手企業がパネイルクラウドの採用を発表する予定だ。名越氏は、「新電力の人件費やシステム費、販売管理費などの経費は売り上げの10%程度。パネイルは、平均で3%程度なので、パネイルクラウドの採用により大幅な削減が期待できる。人が介在しない仕組みをとことん追求した結果だ」と語る。

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