契約書レビューの負荷から法務部門を救う「LegalForce」正式版リリース
攻めの法務に必要なレビュー機能をクラウド型で提供
2019年4月2日、LegalForce(リーガルフォース)はβ版として開発を進めてきた契約書レビュー支援サービス「LegalForce」の正式版をスタートした。発表会に登壇したLegalForce CEOの角田望氏は、日米のリーガルテックの違いや日本における法務部の現状を説明しつつ、LegalForceをデモで紹介した。
「ロボット弁護士がやってきた」に驚き、日本でもリーガルテックを
LegalForce CEOの角田望氏は、国内の大手弁護士事務所に勤めていたが、労働集約的で属人的な契約書のレビュー業務に疑問を感じていたという。「日々、決まったコメントを繰り返し、抽出するというレビュー業務をなんとか機械化できないかと考えた。そんなとき『ロボット弁護士がやってきたと』いう米国のニュースを目にし、ショックを受けた」(角田氏)とのことで、2017年4月にLegalForceを立ち上げた。CIOも同じ弁護士で法務面での知識やノウハウが豊富なほか、自然言語処理の研究で高い実績を持つ京都大学の情報学研究科の森信介氏、末永幸平氏が参画しているのも強みになっているという。
欧米は日本に比べてリーガルテックも約5年ほど先行しており、2017年は223億円、2018年は約1000億円の資金が投下されている。LegalForceと同じようなレビューの自動化に関しても、SealやLawGeexなどが先行。すでに大企業の1/3がAIをレビュー業務に組み込んでおり、おもに定型契約書がAIでレビューされている。
1000億円規模の資金調達が進む北米に対して、日本のリーガルテックへの資金投入はこれまで数億円程度にとどまっていた。しかし、2018年は投資も18億円に拡大し、LegalForceも約6.1億円の資金調達を実現した。法務部門での期待も高まっており、これまでリスク回避を目的とした「守りの法務」だった日本企業も、グローバル化や規制強化、イノベーションなどの潮流を受け、事業の推進や実現に必要な「攻めの法務」への脱皮が求められるようになった。
その一方、法務部門の業務は契約書レビューに約6割の時間が割かれており、レビュー依頼1件が戻るまで5~10営業日かかってしまうという。もちろん、人手を減らせば、スピードは上がるが、レビューの品質は下がる。しかも、司法試験の合格者数が低減傾向にあり、法務人材の需要に供給が追いつかず、採用は困難になっているのが現状。こうした法務部門において、LegalForceを使って定型業務を自動化できれば、攻めの法務にフォーカスすることが可能になるという。
Wordファイルからリスクのある箇所や必要条項を指摘
LegalForceがメインで提供するのは、リスク検出の機能だ。今までの契約書レビューでは「相手に有利で、自社に不利な条項」や「必要条項の欠落」を見つける必要があったが、これまでは人手と時間をかけるしかなかった。これに対して、LegalForceは過去に保持した数千件のチェックリストを突合することで、精度の高いリスク検出を実現するという。具体的には契約書のWordファイルをLegalForceに登録すると、リスクのある箇所や必要条項などを指摘してくれる。
また、過去の自社条文やLegalForceのライブラリから条文を検索したり、類似した条文を比較することも可能になっている。さらにレビューの件数も可視化でき、チーム内での業務負担の偏りを解消できるという。
大企業の法務部門や弁護士事務所などをターゲットとしているが、約9割が法務部門だという。2018年8月にβ版をリリースし、約250社がトライアルを実施で、レビュー件数は8000件にのぼる。昨日からスタートした正式版の申し込みは42社で、うち31社が上場企業とのこと。基本料金(ユーザー1人を含む)は10万円/月で、追加ユーザーが1人あたり2万円/月となっている。今後は強みである自然言語処理を活かして、法務実務への実装を進めていくほか、多言語対応や契約書種別の拡大、PDFへの対応なども計画している。