地球観測インフラ展開で変化したアクセルスペースの知財意識
「CEOが語る知財」:アクセルスペース代表取締役 CEO 中村友哉氏インタビュー
撮影●平原克彦
量産体制へ向けて、ハード技術の知財戦略も検討
AxelGlobe実現と並行して、今後は人工衛星の量産も視野に入れている同社。今までは完全に内製だったため、ハードなどの技術についてはブラックボックスで済んでいたが、パートナー企業に量産を委託する場合、新たな権利保護も考えなくてはいけない。
「量産といっても我々が一度につくるのは数十個。専用のラインを常に動かすほどの数ではないので、必要なときだけラインを組み立てて、終わったらばらし、違う衛星の製造ができるような、フレキシブルな“セミ量産”の体制がつくれないか、パートナーと相談している段階です」(中村氏)
当面は国内のパートナーに委託する予定。理由は、宇宙関連技術にはそもそも輸出規制があることと、セミ量産の手法が確立するまでは、パートナーと密にコミュニケーションをとる必要があるためだ。量産体制を確立させたのち、将来的に海外でライセンス生産する可能性についても検討しており、そうなればまた新たな特許戦略が必要となってくる。
また別の視点では、将来的に衛星画像の撮影頻度が増えてくれば、個人情報保護の問題も発生するかもしれない。展開によっては、知財以外の専門家へ相談していく必要もでてくるだろう。
「現時点では特許を押さえるべき部分は限られていますが、IPASに参加して専門家の方とディスカッションしたのはいい経験になりました。次に新しい課題が出てきても、誰に、どのように相談すればいいのか、といった勘どころが蓄積できました」
第1期のIPASは、2019年3月14日のデモデイでひと区切りとなるが、今後も同じ専門家と相談しながら進めていきたい、と中村氏。
「投資家から見て、知財の取得は、すごくポジティブに受け取られます。これまでは、ブラックボックス戦略を理解してもらっていましたが、AxelGlobeでは通用しなくなってくる。いいタイミングで投資家の方に説明できる知財戦略が立てられました。また、海外には同業他社もいるなかで、足元をすくわれることがないよう、守るべき権利は、しっかりと押さえていきたいです」
コストの高い海外出願に関しては、東京都の助成制度を利用しているとのこと。外国特許出願の費用は、こうした補助金や助成金制度をうまく活用するといいだろう。
次年度のIPASは、2019年4月~5月頃の公募を予定。知財戦略を何から始めればいいのかわからない、というスタートアップは、ぜひ活用してはいかがだろうか。