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ABEJA岡田CEOが語った「ゆたかな世界を実装する」AIとは

2018年はAI運用元年:SIX 2018

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”泥臭い現場”に最新AIを導入

 SIX 2018にはABEJAの関係者だけではなく、多くの顧客/パートナー企業がABEJA導入事例を中心とするセッションを行なったが、キーノートにはその代表として3社 ― LIXIL、パルコ、武蔵精密工業が登壇している。以下、それぞれのコメントの概要を紹介する。

LIXIL 理事 マーケティング本部 デジタルテクノロジーセンター センター長 安井卓氏

 「LIXILがAIで取り組んでいることは『(顧客からの問い合わせに対する)回答品質の安定化』『ユーザ行動観察』『生産能力向上』の3つ。とくにキッチンの使い勝手を向上させるためには大量の画像を使ったディープラーニングによるユーザの行動解析→モデル構築が重要になるが、これまで教師データ作成のプロセス(アノテーション)に人手を介していたため多くのコストがかかっていた。ABEJA Plaftormを導入したことにより、タグ付けなどアノテーションが自動化され、運用が大幅に省力化、3カ月かかっていた作業が3日に短縮された。今後もABEJA Platformを活用してAIのしくみづくりを推進し、適用領域を拡大していきたい」

パルコ 執行役 グループICT戦略室担当 林直孝氏

 「『24時間PARCO』を掲げるパルコは、全国に3000のテナントを抱えるが、自社では商品を販売しないため、テナントの接客がビジネスにおいて重要。とくに人手不足の影響が大きい昨今では、最新のテクノロジーで接客を拡張する必要がある。その施策の一環として上野にオープンした新店舗「PARCO_ya」では全ショップにカメラを設置し、ABEJA Insight for Reatailを導入。ショップごとの入店客数、属性、買上率などを分析データとして提供し、接客の向上に努めている。今後はすべてのデータを統合し、その統合したデータをAIで分析することで接客の質を高めていく」

武蔵精密工業 代表取締役社長 大塚浩史氏

 「輸送用精密機具の製造をビジネスとする武蔵精密工業は、鋳造から組み立てまでの一貫生産体制が強みだが、生産性向上に取り組むにあたり、ミクロン単位の精度を要する検品作業の自動化が進まないという課題があった。2017年から実験的にABEJA Platformを導入、泥臭い現場にプロフェッショナルなディープラーニングの知見が採り入れられたことで現場の作業員の負荷も減り、検品の自動化も進んで大変助かった。ABEJAは”AIのよろずや”的な存在。これからは当社の知見も活かしながらAIプロフェッショナルパートナーとして、ともにディープラーニングの普及を目指していく」

 いずれも国内のそれぞれの業界におけるIT化を牽引する存在の企業だが、とりわけユニークなのは武蔵精密工業だろう。大塚社長が言うとおり、”泥臭い現場”の世界に最新のAIを導入したことで、熟練作業員と同じレベルで不良品を確実に検出するという、製造業界に特化したモデルを自ら作り出した。ユーザー企業でなければ生み出せないモデルを作り、さらにABEJAがその精度を高める役割を果たしている。2018年中には両者協働で試験運用に移行する予定だが、ユーザ企業がプロフェッショナルパートナーとしてともに開発に参加するというあたらしいパートナーシップのかたちとしても注目したい。

 岡田CEOはキーノートの最後に、「AIはまさに活版印刷と同じレベルの発明であり、2018年はAIの運用元年となる年。より多くの人々にAIを使ってもらえるよう、ABEJAはエコシステムの整備に力を入れていきたい。今日が日本におけるAIスタートだと思っている」と締めくくった。

 ABEJAは創業時から3つのコーポレートメッセージを発信し続けている。

 タグラインである「ゆたかな世界を、実装する」、ビジョンである「イノベーションで世界を変える」、ミッションである「テクノロジーの力で産業構造を変革する」――この3つのメッセージのどこにもAIやディープラーニングという言葉はない。

 だが、タグメッセージに込められた”ゆたかな社会”のためにはインパクトのあるイノベーションが必須であり、イノベーションを起こすためには最新テクノロジーがカギとなる。それこそが”活版印刷と同じレベル”のAIであり、ディープラーニングということになる。つまりABEJAにとってのディープラーニングとは、単なるコアコンピタンスというよりも、最新テクノロジーによる社会実装の手段、ゆたかな社会を実装するためのきっかけであるといえる。

 ABEJAはこの日、フェーズ2のスタートにふさわしい、もうひとつの発表を行なっている。

 コーポレートロゴの刷新がそれだ。ABEJAという社名はスペイン語のミツバチを意味しているが、ロゴもまた、ミツバチの巣を象徴するハニカム構造の六角形を用いてきた。新しいロゴではシンボルマークに「A」をモチーフにし、赤を中心とする6色のカラーパレットが使われている。「ミツバチが空を自由に飛び回り、ダンスでコミュニケーションをするように、ABEJAはイノベーションを愛し、エコシステムを創造する」というビジョンとミッションをより象徴したデザインとなっている。ミツバチは自然界のエコシステムを象徴する存在でもあるが、ABEJAもまた同じように、進化のさなかにあるAI/ディープラーニングの要となるべく、社会への実装を進めていくことを目指す。

ミツバチのようにAIエコシステムの要となることをめざすABEJA。左にあるのは刷新されたコーポレートロゴ

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