Aniwoの植野です。日本国内にいても、政治や紛争の話題だけでなく、イスラエルのスタートアップのニュースを目にする機会や話題が増えてきているように感じます。今回は、イスラエル人とのやり取りやビジネスの際に役に立てばと思い、日本とは大きくことなるイスラエルのビジネス文化やイスラエル人の特徴について紹介させていただきます。
ストレートな物言いと議論好きな性格
イスラエル人は議論好きである。日々のランチの内容のような些細なことから政治、宗教の話に至るまで、いつも議論をしている。
ビジネスのシーンでもその姿勢は変わらず、多くの場合にこちら側が話し終わるまでに何度も話をさえぎって質問を投げかけ、議論が始まる。さらに議論好きなだけでなく、ときにそれが怒っているように見えるほどにエスカレートすることもまれではない。
人の話は最後まで聞きなさいと言われ育ってきた日本人としては、はじめは戸惑うこともあるかもしれないが、常にストレートな主張をし、話をさえぎってでも納得がいくまで質問、議論をすることは非常に効率的で、逆に日本人だからといって礼儀正しいふるまいを期待されているわけではなく、積極的な質問、議論が歓迎される。
はじめてイスラエル人同士が議論をしているのを目の当たりにするときは、喧嘩をしているのではないかと見まがってしまうかもしれないが、決してそうではない。
人を紹介しあう文化
ビジネスにおけるネットワークの重要性は世界中どこでも同じだが、イスラエル人では特にそれを感じる。国民の人口が少なく、地域や学校や軍隊、大学など所属するコミュニティーも多いことから“Everyone knows everyone”という言葉があるほどイスラエル人同士はつながっていて、何か話をしていて困っているが自身では解決ができないようなことであれば、すぐに人を紹介されることが多い。
日本であれば、特にビジネスシーンでは社内の人を紹介するにも確認に時間がかかることがあるが、イスラエル人は打合せ中でも構わず紹介のメールを(相手への承認を得ないことも普通)送るか、電話をかけて人を紹介してくれることが多い。
ビジネス、スタートアップにおける情報の鮮度やスピードの重要性を理解しているがゆえの習慣なのであろうが、逆にイスラエル人からするとなぜ日本のビジネスパーソンが別部署の人など社内の人を紹介するのに時間がかかるのかが不思議に感じることがあるようだ。
働き方と時間感覚
スタートアップが盛んな国だと聞くと、起業家たちが毎日夜遅くまで仕事をしているようなイメージを持たれるかもしれないが、イスラエル人が遅くまで残業をしているというのはまれで、夕方か夜の早い時間には退社する人が大多数だ。彼らが最も大事にしているのは家族との時間で、シャバット(ユダヤ教の安息日)には大人になっても家族のもとに帰って食事をするということが多い。
日本人が遅くまで仕事をしている話題になると、「日本人は礼儀正しくて思っていることを言わないから会議が長くて残業しているんだろう」と笑われることがあるが、働き方改革が話題になっている日本がイスラエルから学ぶことも多いように感じる。
また納期などの時間感覚については、計画性をもって着実に業務をこなしていくというよりは、柔軟性をもって効率的に問題解決をしていくべきだという考え方で、締切りについては日本人からすると甘い感覚があるので、それを考慮した計画を立てる、あるいは契約の段階で明記することが望ましい。
以上が一部ではあるが、筆者がイスラエル人、ユダヤ人とのやりとりや日本企業とイスラエルのスタートアップの間でコミュニケーションをとっている中で感じるイスラエルのビジネス文化、イスラエル人の特徴である。
ユダヤ人は世界を牛耳っていてなんとなく怖い、というようなイメージもあるようだが、ストレートでまどろっこしくなく、常にアイデアとユーモアに満ちた世話好きな普通の人たちなので、違いを認識しながらも、うまく合わせるところは合わせながらイスラエル人とのビジネスがうまくいくことを願っております。
植野力(COO & Co-Founder/Aniwo)

2014年にイスラエルに渡り、独自のアルゴリズムでイスラエルのスタートアップと世界の投資家をつなぐ。マッチングプラットフォーム「Million Times」を運営するAniwo社を共同創業。昨年末より日本支社を担当。
●お知らせ
イスラエルのスタートアップ業界の解説と具体的な企業を紹介するイベントPitchTokyoの第12回を2/28(火) 19:00から、「イスラエルスタートアップ2016年の振返りと2017年の展望」(関連サイト)をテーマに開催します。イスラエル人起業家を交えたパネルディスカッションも開催しますのでご興味のある方はぜひお越しください!

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