物欲や衝動買いに自信がある筆者ですが、今回は悩みに悩み抜きました。そのアイテムはDYSONのヘアドライヤー「supersonic(スーパーソニック)」。
3ヶ月ほど悩みながらも、ヨドバシで「ドライヤーの売れ筋ってどれですか?」とたずねて、「これが人気です!」と教えてもらった商品の約10倍の値段だと気がついて、さらに2週間悩みました。
前回のコラムでもチラリとかきましたが、新しく購入するつもりだった洗濯機代が浮いたので、背中を押されて物欲が爆発です。もちろん、自腹レビューです。
じつはDYSONの製品は3台目
ネットを眺めてみると、多くの人は製品のスペックが気になるのと同時に、DYSON社への評価も気になるみたい。つまり「外国製の家電」というイメージが不安なのでしょう。たしかに「家電」はライフスタイルがよく現れる商品でもありますので、そんな気持ちはよくわかります。
筆者がアメリカに留学したときも、キッチンのシンクの下の扉を「食器洗い機?」と思って開けたら、洗濯機があってビックリしたことがあります。日本人にとっては、キッチンで洗濯ってやっぱり奇妙です。まぁ、便利といえば便利、合理的なのでしょうけれど…。
そんなライフスタイルの違いを楽しんでしまう筆者ではありますが、DYSON社の製品を買うのは3回目です。どれも使いやすくて頑丈なので、企業としては個人的にかなり信用しています。
13年前に買った掃除機『DC12』は今でも現役。一度、調子が悪くなってサポートに電話したら、「電話口を掃除機に近づけて、電源ボタンを5秒押してください」っていわれました。音波で掃除機のプロフィールがわかるそうで、電話モデムっぽい機能を掃除機が内蔵していること知ってビビりました。けっこう未来的、画期的です。
次に買ったのがDC45…って、あんまり書くと「早くドライヤーのレビュー書け!」と怒られそうなので、その話はまたの機会に…。
驚いたのは、その風量
じつは筆者はあまり家電に興味がないタイプです。量販店に行っても滞在するのはコンピュータやカメラ機材売り場などばかり。なにげなく通りかかった、男性には禁断の美容器具売り場で、ディスプレイされたDYSONのドライヤーを顔に向けてスイッチを入れてみました。目も開けられないほどの、まるで暴風!に驚かされました。(次に値段を見て、また驚かされるわけですが…笑)。筆者の仕事、マジシャンは驚かせるのは得意ですが、驚かされるのは慣れていません。
物欲があるクセに小心者な筆者としては「ネットでもろもろをチェックして…」と、いったん買わずに帰りました。その日の「物欲係数」や「一目惚れ度」は、10点中3点くらいでしょうか。気に入りましたが、欲しいものリストの上位を占めるマンフロットのビデオ三脚や腕時計などを抜くほどではないことがその理由です。
しかし、洗髪して乾かすたびに物欲が…
筆者はおしゃれな方ではありませんが、仕事でショーやパーティに出演する以外にも、取材や撮影もあります。おそらく、普通の男性よりも洗髪や髪の毛をセットすることが多いかもしれません。髪を洗って乾かす度に「あのドライヤーがあればラクチンかも…」と物欲が首をもたげます。
「本体が高くても、1回あたり◯◯円だし…」なんて、キャッチセールスの人みたいな、あまり意味のない減価償却費を計算しだすと、物欲はマックスに!すぐさま、表参道のショールームに駆け込んで「ロンドンと東京のショップ限定です」の言葉に押されて革ケース付き限定モデルを購入しました(笑)
ドライヤーをかける時間が短縮しただけでなく…
使ってみた感想は、ダントツの風量でヘアドライの時間が短くなること。それは想定していました。想定外だったのは、風量が多いので低温で乾かすことでき、髪が艶やかになったこと。さらに髪の根元にも十分な風が入るので、セットが崩れにくくなりました。これは、筆者の硬めの髪質のせいもあるかもしれませんが、いままでは髪の毛全体の表面ばかりが乾いて内側(毛の根元)がしっかりと乾いていなかったことが原因です。
意外だったのは、一番よく使うのが風量も温度も最弱のモードなこと。美容師ほど手際が良くないですが、タオルドライの後の1~2分は最強で乾かし、すぐに最弱に切り替えます。それでも十分に乾きます。男性なのでアダプターはほとんど使わないのが残念ですが…。
革ケースは洗面台の引き出しにピッタリ入ったので、毎回の収納に使ってます。ただ、革ケースは旅行用を想定しているらしく、マグネットのロックが強いのが少し使いづらいところ。
背中を押したのは600台のプロトタイプ
革ケース付きで6万円弱という、贅沢なヘアドライヤー。筆者が「高価格でも購入しよう」と強く思ったのは、スタイリッシュなデザインではなく、製作までにプロトタイプを600台作ったという探求への熱意。自分の仕事もそうですが、それくらいの試行錯誤がなければ新しいものは生まれない。それは、毎年ニューモデルが発表されるような、危うげなメーカーのトレンドへの警鐘でもあるのかもしれません。
前田知洋(まえだ ともひろ)
東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、英国チャールズ皇太子もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。
著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。
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