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前田知洋の“マジックとスペックのある人生”第52回

EMP攻撃!?個人でできる機器の守り方

2017年09月26日 17時00分更新

文● 前田知洋

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 今回は、少しシリアスなテーマで恐縮です。このところ、メディアなどで話題になるEMP攻撃ですが、EMPとは「Electro-Magnetic Pulse」、日本語なら「電磁パルス」のこと。これは、大気圏など、高高度でミサイルによる核爆発をおこし、電磁パルスで電力インフラや通信機器などを破壊することが目的です。

 記事によっては「EMPで文明崩壊」なんて、恐ろしいフレーズも登場します。しかし、「煽る」のはメディアの特性でもありますから、ここでは、少し冷静に影響や対処方法を考えてみたいと思います。「不安になるなら、正しく不安になる」これが大事だと筆者は思っています。

EMP攻撃の原理と影響

 EMP攻撃は高度30km以上で核爆発が起こし、爆発により発生したガンマ線が空気分子にぶつかり電子を放出。電磁波を発生させ、電子機器や電力インフラに影響を与える攻撃です。

 電磁波は、電場と磁場の波で、電波や光も電磁波の一種です。その電磁波は地上に届くと、電子機器の回路や電力インフラに一瞬(10ns、1/100,000,000秒ほど)の間、過電流を生じさせ、機器を破壊(ショート)させたり、誤動作(ダウン)させます。

 影響する範囲は、地表の100~1000kmほど。日本列島の長さは約3000km(うち、本州は約1300km)ですから、1回のEMP攻撃で、国内のほとんどの場所が影響を受ける可能性があります。ただし、電磁パルスによる人体への直接的な影響はありません。

影響をうける恐れのある機器

 電力線やコンセントに繋がれた電気/電子機器、航空機や人工衛星、放送機器など。広範囲の機器に影響を与えるため、自然災害に比べて復旧に時間がかかるのが特徴です。もし、飛行機や新幹線に乗っていたら、制御系等が電磁シールド(後述)されていることを祈るしかありません。

ファラデーケージによるシールド

 電磁パルスはファラデーケージで防護することができます。ファラデーケージとは、19世紀の科学者、マイケル・ファラデーが発見した原理によります。

 構造は意外に単純で、アルミや銅など、導体(電気が通る物)で囲まれた空間で、金網の箱やアルミ蒸着されたビニール袋などが知られています。鉄製の箱であれば、磁場の影響も受けにくいので電磁パルスに有効です。

 乱暴に説明するなら、鉄やブリキなどの金属製の箱の中に電子機器をしまっておけば、電磁パルスの影響を受けずらい。それがファラデーケージの原理です。

 ネットでは、EMP攻撃の対策として、大事な個人データ用にアメリカのサーバーを借りた人も居ます。なかには「(EMP対策に)ステンレス製のドラム缶を買った__…」なんて強者もいました。「非常時はマキでお風呂を沸かせる」のがその理由で、筆者も少し心が動きました(笑)。

無印良品の工具箱。鉄製なので重いですが、ファラデーケージにはうってつけ

ファラデーケージに入れるべき機器

 筆者がファラデーケージに選んだのは鉄製の工具箱。厚手の鉄板が使われているのがその理由です。かなり重いですが、持ち運ぶわけではないのでOKです。

 構造は単純ですが、注意点は、外箱と中に入れる電子機器を絶縁すること。箱をアース(接地)することも考えましたが、落雷や静電気とは違うので今回は却下しました。

 筆者がケージに収納するのは、ヘッドマウントタイプの高輝度LED電灯、腕時計、非常用ラジオ、保存用SDカードの4点です。

 スマホやノートPCは、基地局やインターネットプロバイダなどが長期に復旧しないことを考慮してファラデーケージには入れていません。

以下、選定の理由です。

ヘッドマウントタイプのLEDライト。電子スイッチ式なのでファラデーケージで防護

●ヘッドマウントタイプの高輝度LED電灯
 両手がフリーに使えるので、便利。最近のLEDライトは電子式スイッチが採用されているうえ、LED自体が電磁パルス(過電流)に弱そうなのが収納の理由です。省電力で高輝度、非常用の__点滅機能、防水、コンセントによる充電式ではなく、入手しやすいAA(単3形)電池を利用する製品を選びました。

●手回し発電式の非常用ラジオ
 非常時には、放送局も機能しなくなると予想できますが、おそらく最も復旧が早い放送インフラは、AMラジオ、FMラジオだと思っています。放送設備の規模や電力が小さくても放送可能であることがその理由です。スペックによると、1分間の手回しで75分間放送が聞けるのも頼もしいです。

手回し充電ができる非常用ラジオSONYのICF-B09

●腕時計
 近年はスマホにたよってしまいがちな時計ですが、スマホはEMP攻撃時には役に立ちません。時間を知ることも大切ですが、腕時計を入れた一番の理由は、オートカレンダー機能による日にちの確認のため。旅行のときもそうですが、日常から離れると、時間/日にち感覚に異常をきたすためです。

 収納する時計はソーラー式なので、たまに光にあてて充電する必要があります。普段は2つの時計をローテーションで使っているので、使わない方をファラデーケージに入れています。

非常時は時刻だけでなく、日付機能が大切

●SDカード
 中身は、家族や友人、ペット、旅行などの写真データがほとんど。最近は、画像データなどクラウドに保存している人も少なくありませんが、あれってサーバーはどこにあるんでしょうか…。

 できれば起きて欲しくないEMP攻撃ですが、それほど手間をかけずに機器を防護できるファラデーケージ。本当に電磁パルスに耐えられるかは未知数ですが「備えあれば、憂いなし」。心の片隅ででも、ご参考いただければ幸いです。

前田知洋(まえだ ともひろ)

 東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、英国チャールズ皇太子もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。

 著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。

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