1966年「ウルトラマン」放送開始から今年で50年。12月8日には大量のお宝つき豪華本『ウルトラマン トレジャーズ』も発売された。円谷プロダクション代表取締役大岡新一社長に、ウルトラマン初代シリーズについて話を聞いた。
ウルトラマン トレジャーズ
●発行発売:エフェットホールディング株式会社
●企画編集:Team Treasures
●仕様:B4変型 ※ハードカバー付
180P、写真約500枚、収蔵レプリカお宝資料50点
●価格:1万7000円(税別)
●全面協力:円谷プロダクション、M1号 他
●URL http://ascii-store.jp/p/2016090600001/?aid=expedition15
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(使用期限は2016年12月31日まで)
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特撮の社会的立場を高めた
円谷英二の功績は大きい
── 空想特撮シリーズ当時の円谷プロダクションについて教えてください。
まず円谷英二さんは東宝で特撮をやってきたヒットメーカーでしたよね。特撮が東宝の中でドル箱になっていた。そうなるとだんだん枠の中にはめられて、本来やりたかったものづくりとはちがうものになっていったんじゃないですか。
テレビが始まって10年くらい、新しいメディアとして茶の間に何かを届けたいと考えたのが英二さんの本心だったと思いますよ。それで『ウルトラQ』が立ち上がり、『ウルトラマン』に変わっていったという流れだと思います。
── 1960年代当時、特撮はどんな立場にあったんでしょう。
まだ社会的認知を受けていませんでしたよね。
映画というのは俳優さんがいて、名のある監督が作品を作り、劇場で公開して興行収入がどうこうというもの。そこで認知されていたわけでしょう。特撮自体はまがいものというかインチキくさいものと考えられていたんです。ストップモーションとかドロンと消えたりというのは忍術映画から始まったものでしたから。
本来映画というのはドラマツルギー、人間ドラマを描くものと考えられていた。その考えとはまるで違う、せいぜいよく言えば「便利屋」のような位置づけだったわけですよ、特撮というのはね。
円谷さんは戦前「ハワイ・マレー沖海戦」というすごい作品に携わっていいて、評価はされたけど、結果として戦後、公職追放になった。そして復帰したとき「ゴジラ」という作品に携わって、興行的には黒澤明に並び立つまでになった。そのときようやく特撮というジャンルが映像作品の中で確立ができつつあるという状態になってきた。だから円谷英二の功績が非常に大きいと思うわけです。
『ハワイ・マレー沖海戦 [東宝DVD名作セレクション]』太平洋戦争の幕開けとなった真珠湾攻撃と、マレー半島沖の海戦を描く。監督は『加藤隼戦闘隊』の山本嘉次郎。大河内傳次郎、原節子、藤田進が共演
── 円谷英二さんあっての特撮であり、ウルトラマンだった。
当時の多くのスタッフたちは、日大から円谷英二さんを慕って円谷プロに集まってきたわけですからね。バイト時代からそのまま作品に関わってきたところがあるから、やっぱり円谷英二というカリスマにすごく惹かれていたと思います。
みんなが円谷英二さんを「おやじさん」と呼んでいたらしいんだけど、まずはとにかく、おやじさんに気に入ってもらいたいと考えたんじゃないでしょうか。スタッフはみんな基本的に円谷英二をの方を向いていたんじゃないかと思います。結果的に、その裏側にテレビの視聴者がいたとは思うんですけどね。
── 円谷英二さんの天才性がすべての中心になり、動いていったと。
円谷英二さんというのはいろんなものを発明した人でもありますしね。いわゆる「パン棒」、カメラを操作する器具も円谷さんの発明品でしょう。
船についている高射砲みたいな機関銃の台座。あれは全体に重いからギアで動かしているわけですよ。アメリカの映画はそれと同じ仕組みの「ギアヘッド」という装置でカメラのパン(キャメラを左右に振る)やチルト(キャメラを上下に振る)をしていた。でもそれだとなかなか不便でうまくいかないというので、円谷さんがギアヘッドに棒をくっつけたんだと。
これは余談だけど、終戦後に公職追放にあっているから生活が苦しいわけじゃないですか。それでメシのタネとして、今でいう「証明写真ボックス」の原型を発明したことがあったんですよ。撮ってすぐ現像してお客さんに届けられるボックスを作った。特許申請とかはしてないだろうから、本人が作ったと証明はできないんですけどね。
── 放送局で映画品質の特撮番組を作ろうというのは英断です。そこもやはり円谷さんの影響力が大きかったんでしょうか。
当時、円谷英二さんはまだ番組も決まっていないうちから数千万円もするオプチカル・プリンターを購入すると決めたんですからね。見ようによってはすごいけど、見方を変えれば無鉄砲ですよね。それを結局TBSが買ってくれたわけじゃないですか。
プリンター自体はTBS局内にあって『ウルトラQ』で使わせてもらってたけど、オプチカル・プリンターを買うなんて当時テレビでは絶対にありえない話なわけです。もちろん東宝は持っていたと思うけど、フォーヘッド、3つの映像を重ね合わせられるオプチカル・プリンターを使うなんてテレビでは初めてなわけだからね。
TBS局内に設置された、オックスベリー社フォーヘッド方式オプチカル・プリンター1200シリーズ。使用する際は写真のような指示書を使った。合成カット場面、使用尺数、合成作業日などが記入され撮影の舞台裏が垣間見える。写真は『ウルトラQ』第11話「バルンガ」の濃度テストで使われたもの(『ウルトラマン トレジャーズ』ふろくとして復刻)
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