今週はNVIDIA GPUのロードマップ アップデートをお届けしよう。まずは連載361回以降の製品アップデートから話をする。
いきなり前回のロードマップ図の訂正だが、GP104コアにはNVLinkが完全に省かれており、Multi-GPUの手段はSLIブリッジ経由ということが明らかになった。前回は「NVLink数削減?」と表現していたが、NVLinkそのものがない形になった。
もっともNVLinkを使おうとすると、基板上に別のインターコネクトを用意する必要が出るため、現実問題としてはコンシューマー向けとしては妥当な手段だろう。
ちなみにその大元になったGP100を搭載するTesla P100であるが、こちらは複数のバリエーションがあることも明らかになった。
もともとGTCなどで発表されていたのはMezzanineカードタイプのもので、こちらはI/FにNVLinkを持つ(おそらくはNVLinkと一緒にPCI Expressの信号も通っていると思われる)タイプであるが、これに続きPCI ExpressカードタイプのP100も発表された。
データシートによればMezzanineカードタイプのものもPCI Expressカードのものも、シェーダー数(CUDAコア数)は3584であり、単精度での演算速度がMezzanineカードが10.6TFlops、PCI Expressカードのものが9.3TFlopsとされる。
ここから逆算すると、Messanineカードタイプが1480MHz程度、PCI Expressカードタイプが1300MHz程度の動作周波数と考えられる。
またPCI Expressカードタイプには16GBのものと12GBのものがあるが、16GBのものが720GB/秒のメモリー帯域なのに対し、12GBのものは540GB/秒に帯域が減らされており、これは素直にHBM2のスタックが3つのみに減らされたと考えられる。
さて、Messanineカードタイプは、オークリッジ国立研究所のSummitと、ローレンス・リバモア国立研究所のSierra向けが最初のターゲットである。
ここは最終的にはPower9+Voltaという構成になるという話は連載340回でも書いたが、その前段階としてPower8とKeplerのシステムがまず導入される。
それに続き今年度にはCAPI I/FがNVLink対応となったPower8+とP100のシステムが導入、2017年度にはいよいよPower9と、予定が順調ならVoltaベースのTeslaが納入される。
画像の出典は、“Performance Beyond Moore's Law:OpenPOWER”
ただこれはIBMのPowerベースのサーバーと組み合わせるのは問題ないが、従来タイプのサーバーではNVLinkのI/Fを電気的にも物理的にも持っていないため、PCI Expressカードタイプも当然必要になる。
もちろん多数のTesla P100を利用する構成では、例えば下の画像のような形での接続も可能で、必ずしもMessanineカードタイプでは、インテルのCPUと組み合わせできないわけではないが、もう少し小規模なシステムを望む場合にはやはりPCI Expressカードの方が好ましいだろう。
画像の出典は、“NVIDIA TESLA P100:INFINITE COMPUTE POWER FOR THE MODERN DATA CENTER”
ちなみに、PCI Expressカードタイプの動作周波数がやや低くなっているのは、おそらく冷却の都合と思われる。
後述するGeForce Titan XはTeslaと異なり冷却ファンを持つ構成だが、連続稼動させているとしばしばThermal Throttling(温度が高くなりすぎるのを防止するために、動作周波数を自動でやや落とす仕組み)が発生し、ピーク性能が出ないという。
これはPCI Expressカードに収めるためにヒートシンクの体積に縛りがあり、放熱が十分でないことから発生する。このあたり、Messanineカードの方が冷却的には有利(少なくともPCI Expressカードのような「ガワ」がないだけでもだいぶ効率が良い)というあたりに起因すると思われる。

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