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ASCII STARTUP 今週のイチオシ!第30回

時代が追い付いた授業支援システム:schoolTakt

タブレット1人1台授業に足りなかった答え コードタクトが示す未来の教室

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 紙と鉛筆、そして黒板。おなじみの授業風景が、大きく変わろうとしている。

 2015年に設立された株式会社コードタクトは、近い将来実現するであろう1人1台タブレット時代に向けた授業支援システム「schoolTakt」(スクールタクト)を開発・提供している。ブラウザ上で起動するこのソフトは、授業において教員と生徒間のインタラクティブなコミュニケーションを可能にし、生徒の主体的な授業参加を促すとともに、教員の業務負担の軽減に寄与する。

 ユーザーはすでに1万3000人を超え、海外進出をも視野に入れる「schoolTakt」の構想を手がけたのが、コードタクト代表取締役である後藤正樹氏だ。経営者・エンジニアのほかにプロオーケストラ指揮者という異色の顔を持つ後藤氏に、同社のサービスと教育現場が抱える課題について話をうかがった。

コードタクトの後藤正樹代表取締役

生徒の思考を可視化する教育用ICT

 「schoolTakt」は、1人1台でのタブレットやPCなどの端末を持つ環境下で学びを支える授業支援ソフトだ。その概念を後藤氏は次ように解説する。「今まではいわゆる紙と鉛筆の世界観があって、過去のログは全てそれぞれの生徒自身のノートのみにたまっていた。そのような授業にタブレットやPCが組み込まれたとき、ツールとして『schoolTakt』が加わることで、ログの共有が簡単にできるようになる」

 「schoolTakt」が実際に公教育の現場でどのような使われ方をしているのか、一斉授業を例に見てみよう。

 まず、教員と生徒はそれぞれ「schoolTakt」のトップ画面からログインをする。教員が生徒に課題を出題する場合には、既存の教材のPDFを使用することもできるし、システムにあらかじめ用意されているテンプレートや素材を選択して生徒の画面上に一斉配布もできる。生徒が課題にきちんと取り組んでいるかどうかは教員側の画面にリアルタイムで表示されるため、授業に対して受け身な生徒がわかり注意を払うことができる。一方生徒側はブラウザ上のボタンから「分かった・分からない」の意思表示をすることができるため、教員はそれにあわせて授業ペースを配分できる。

各生徒の進捗状況が一覧で把握できる

 また、先生対生徒という構図で使用するだけではなく、生徒同士が他の生徒の画面にコメントを残しあうケースも。教員側の画面では誰が誰に対してコメントをしたかという関係性を図示化して把握することができるため、生徒の人間関係もつかむことができる。アプリではなくブラウザ上で動くため、タブレットの種類を選ばず、さらには授業の様子を動画配信することもでき、遠隔授業にも対応している。

授業中のコメントをもとに生徒間の関係性をマッピングすることもできる

 こうしたインタラクティブなやりとりを実現させた背景には、後藤氏が予備校講師時代に抱いたある違和感があった。従来の授業にありがちな「黒板の文字をノートに写すだけ」いう受動的な姿勢では、生徒は脳を十分に活用しているとは言いがたい。ブラウザ上で双方向コミュニケーションをすることによって、生徒の思考を可視化し、主体的に参加できる授業をつくりたいというのが後藤氏の願いだ。

教壇に立った自らの経験から生まれた「schoolTakt」

 教育・IT・音楽を中心に自社サービスを展開する株式会社コードタクトが設立されたのは2015年1月だが、現在事業の中核となる「schoolTakt」の構想はずっと以前に生まれていた。

 大学では物理学科を専攻し、大学院に進学した後藤氏は、高校時代に始めた指揮の勉強をするために音大別科とのかけもちで勉学に励んだ。その際、ダブルスクールの学費を稼ぐためにはじめた予備校講師の経験がきっかけとなって、教育現場のさまざまな問題点に対して、「ICTを使って現場をよくしよう」という考えに至る。目の当たりにしたのは、授業のための資料作りに追われる教員や、授業に対して受動的になりがちな生徒たちだ。

 みずからも教壇に立った経験を持つ後藤氏は、教育現場が抱える問題点を解決するためICTで支えるサービスの構想に至る。だが、「もともとITは得意な方ではなかった」という後藤氏は、大学院卒業後サイボウズをはじめとするベンチャー企業でエンジニアとしての業務を通して、まずはプログラミングを学んだ。そこで大学院時代の先輩にあたる現スマートニュース社長の鈴木健氏らに感化され、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の未踏ソフトウェア創造事業に応募。そのときに採択されたテーマが現在の「schoolTakt」の原型となった。

 その後、メンターとしてアサインされた夏野剛氏とともに1年間をかけて「schoolTakt」の原型をつくりあげるも、2010年当時は公教育においてタブレットを使って学ぶという構想が受け入れられることはなかった。時期尚早と感じた後藤氏は、オンライン英会話のCTOなど別事業を手がけながら週末プロジェクトとして「schoolTakt」の構想をあたため続ける。

 光が射し込んだのは2014年のことだ。公教育におけるICT推進の第一人者として知られる東京都多摩市立愛和小学校の校長(2016年7月現在は小金井市立前原小学校の校長)である松田孝氏が「schoolTakt」の原型に興味を持ち、研究授業での利用打診が来た。その現場に中央官庁の関係者も居合わせており、結果的には2014年12月、文科省と総務省合同での教育プロジェクトへの協力要請につながった。

 このような経緯を経て2015年に株式会社コードタクトを設立した後藤氏だが、モデルを立ち上げた2010年から現在まで「schoolTakt」の基本的なコンセプトは変わることなく、動作改善や機能追加など細かなアップデートを重ねてきたという。開発当初は、現場に環境がなくニーズさえもわからない状況だったが、焦ることなくじっくりと時間をかけてつくり込んできた成果が実を結んだ。

 では実際、どのような工夫で教育現場への浸透を図るのか。

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