教育機関へのタブレット利用が進んでいる。佐賀県は全36校ある県立高校の1年生6600人にウィンドウズタブレットを導入し、端末費5万円の生徒負担が賛否両論を呼んだ。同様に、東京・荒川区も区内の全小中学生にタブレットを配布。約1万2000台を導入する見通しという。
文部科学省は2020年までに「子どもたち1人1台の情報端末による教育」を実現する方針だ。すでにタブレットを使った教育は低学年まで広がっている。東京都の多摩市立東愛宕小学校は、ディー・エヌ・エーの小学1年生向け教育アプリを使ったiPadでの授業を実践。さらに、幼児教育にiPadを取り入れた私立聖愛幼稚園の例もある。
IDCジャパンによると、2013年の国内教育分野タブレットソリューション(端末および付随設備、アプリなどを含む)市場売上額は260億円。2018年には759億円まで増加すると予測している。ベネッセも小中学生向けタブレット講座や幼児向け教育アプリを準備するなど、関連ニュースを挙げるだけでもキリがない状態だ。
とはいえ、タブレットを使った教育がすんなり浸透するとは断言できない。端末代金の負担に加え、大きな問題なのが教員のスキルだ。
ベネッセ教育総合研究所の調査では、授業のICT活用を不安に感じている教員は5割強。ICT活用における課題として、「自身のICTスキルが不足している」と感じている教員は7割に上っている。
教育関係者は「中学校1、2年生くらいまでは、情報端末の使い方を指導すれば聞いてくれる。ところが3年生くらいになると、子どもたちの方が知識量で上回ってしまう」とため息をつく。「また、端末を使い込んでいる子どもがクラスに一人でもいると、最新情報が瞬く間に生徒間で共有される。教師は一瞬で追い抜かされてしまう」(教育関係者)
文部科学省は教員向けICT研修マニュアルの策定を決めた。指導力を高めるのが狙いだが、ITのトレンドはすさまじい速度で移り変わっている。多忙を極める教育現場で、どこまで教師ひとりひとりが情報を収集し、スキルを磨けるかは未知数だ。
東京オリンピック開催の年には、本当にタブレットが電子教科書になり、ICTをフル活用した授業が実現しているのだろうか。タブレットではないが、かつて京都府の八幡市教育委員会が英語学習用に導入した600台のニンテンドーDSが、わずか3年で使われなくなった例もある。
端末を「買っただけ」にならないよう、導入後の経過もきちんと検証しなくてはならない。
