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マイクロソフト・トゥディ 第198回

Office 365、Apache Kafka / DataFu、Voldemort - MSのLinkedIn買収は何を変えるか

2016年06月30日 10時00分更新

文● 大河原克行、編集●ハイサイ比嘉

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PCにこだわりすぎた結果、追う立場に回ってしまった

 マイクロソフトは、創業以来、創業者であるビル・ゲイツ氏が掲げた「すべての家庭に1台ずつのPCを設置する」ことや、「すべての指先で情報を利用できるようにする」ことがビジョンとなっていた。これらに共通しているのは、デバイスやOSの普及であり、いわばPCを核とした取り組みを加速することであったともいえる。後任のCEOとなったスティーブ・バルマー氏も同様に、やはりPCを中心とした方針を打ち出してきた。

 しかし、PCにこだわりすぎた結果、スマートフォンやタブレットの市場展開に遅れ、PC市場では王様であったマイクロソフトが、デジタルデバイス市場においては追う立場に回ってしまった。もう少し早い時点で、「PC中心」から「人中心」へと基本戦略を移行させていたならば、デジタルデバイス市場においてマイクロソフトはもっと違ったポジションにいた可能性がある。

「人」中心の考え方をもとに、モバイルやクラウドを使う環境にフォーカス

 そうした反省から、現在のマイクロソフトは「人」を中心として戦略を考え始めているのだ。マイクロソフトが掲げる「モバイルファースト、クラウドファースト」の基本姿勢もデバイス中心の方針のように聞こえるが、ここで打ち出しているのは、デバイスに捉われない「人」中心の考え方をもとに、モバイルを使う環境、クラウドを使う環境にフォーカスするというものだ。モバイルデバイスそのものや、クラウドサービスそのものに的を当てた戦略ではない。

 そして、今回のLinkedInの買収も、人を中心とした同社の基本戦略に当てはめてみれば、重要な一手であることがわかる。むしろ、買収した狙いが明確になるともいえまいか。

 「地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする」という意味で、LinkedInの買収は避けては通れなかったといえる。

Officeの普及率が高い日本とLinkedIn

 だが、日本においては、LinkedInが米国ほど普及はしていない。そのため、日本における買収効果は限定的にならざるを得ないとの見方もある。

 しかし、中長期的な視点でみれば話は違ってくる。

 LinkedInは独立した形で事業運営が進められることになるが、マイクロソフトの傘下に入ったことで、マイクロソフト製品との連携が、今後どんな形になって進むのかが注目されるからだ。オープンソース関連でも、LinkedInは、分散メッセージングシステム「Apache Kafka」、Hadoop用ライブラリコレクション 「Apache DataFu」、NoSQLデータベース「Voldemort」と関係が深く、気にかけている方もいるだろう。

 とりわけ日本は、世界的に見てもOfficeの普及率が高い国である。Officeユーザーにとって、LinkedInとの連携がメリットのあるものになれば、逆に、LinkedInが日本で普及するきっかけができるかもしれない。これまでのLinkedInにはできなかった展開が、日本でも期待されることになる。

 日本のユーザーは、マイクロソフトによるLinkedInの買収が、我々にとって中長期的にどんなメリットをもたらすのかといった点に注視しておくべきだろう。


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