11月6日から、数年ぶりにスウェーデンに滞在しています。秋の終わりは着々と近づいているものの、東京とあまり変わらない感覚で過ごせる季節でもあります。
こうして日本を離れてみると、日本で盛り上がっている“携帯料金引き下げ”議論も、少し違った角度から見えてきます。料金引き下げには期待したいものの、その前にぜひ実現してほしいことを、筆者としても提案しておきたいと思います。
キャリアに“SIMフリーモデル”を売ってほしい
携帯料金を安くする方法として最も有力なのが、MVNOの活用です。MVNOがもっと使いやすくなれば、実質的な料金引き下げにつながるでしょう。
大手キャリアの中で、比較的MVNOが使いやすいといえるのがNTTドコモの端末です。SIMロックを解除することなく、ドコモ系のMVNOを自由に使うことができます。iPhoneやXperiaのように3キャリアから同じモデルが販売されている場合、真っ先にドコモ版を検討したいほどです。
これに対してMVNOが使いづらいのが、KDDIの端末です。11月にはKDDI系のMVNOから、新たにVoLTE対応のSIMカードが登場します。その一方で、VoLTE対応端末ではMVNOを利用するにあたって、SIMロックの解除が求められるようになります。これはいかにも時代に逆行した仕組みに感じます。
さらに11月17日以降、KDDIでは“LTEフラット”などのデータ定額が必須になり、スマホを従量制の料金で使うことができなくなります。これらの仕様変更により、KDDIからスマホを“一括0円”などの安値で購入し、プランを従量制に切り替え、MVNOのSIMカードで運用するといった“節約術”は使えなくなるでしょう。
KDDIの施策からは、端末を安値で売る以上、通信料金で確実に回収していきたいという気持ちが伝わってきます。このように端末と通信を一体化したキャリアの販売手法は批判の的になっていますが、だからといって端末と回線を分離し、キャリアに端末の販売を禁止するというのは、いかにも非現実的な提案です。
特に日本では、3キャリアでネットワークが異なるため、自社のネットワークで動作保証する端末をキャリアが売ることは、理にかなっている面もあります。
そこで、キャリアには端末の販売を継続してもらう代わりに、“SIMフリーモデル”の販売を義務付けるのはどうでしょうか。従来の“SIMロックモデル”のほかに、同じ端末をSIMフリーの状態でも販売させ、両方の価格を明記することを義務付けるのです。
場合によっては、SIMフリーモデルの価格は高くなるかもしれません。たとえばSIMロック版が一括8万円なら、SIMフリー版は10万円といった具合にです。また“月々サポート”など、毎月の割引も対象外となるでしょう。そのためSIMフリーモデルを積極的に選ぶ人は、かなり限定されるはずです。
しかしSIMフリーモデルの登場により、いま“格安スマホ”と呼ばれているSIMフリー端末との間に、より公平な競争が期待できます。キャリアのSIMフリーモデルが10万円なら、“格安”SIMフリー端末の本当の安さが実感できるようになるからです。
SIMカードをもっと身近なものにしてほしい
もうひとつの提案は、SIMカードをもっと身近なものにしてほしいという点です。最近、家電量販店にはSIMカード売り場が続々と登場しています。特に、本人確認がいらないデータ専用SIMは、とても購入しやすくなっています。
しかしその主流は、買い切り型のプリペイドSIMより、クレジットカードなどを登録して使うポストペイド型のSIMカードです。プリペイドSIMも外国人観光客向けにバリエーションは増えているものの、OCNモバイルONEの1GB版が3200円など、それほど気軽に購入できる価格ではありません。
日本でも、プリペイドのSIMカードがもっと買いやすく、簡単に使い捨てられるものにならないでしょうか。しかしSIMカードはキャリアからの貸与品であり、ユーザーに所有権はありません。
たとえばMVNOの場合、ドコモなどのMNOがMVNOにSIMカードを貸与し、それをさらにユーザーに向けて貸与する形になっています。その根拠は、SIMカードが「電気通信設備の一部であるから」とNTTドコモは説明しています。
そこにはある種の歴史的経緯があるとはいえ、使い終わったSIMカードを返却しなければならないというのは、いかにも面倒です。海外ではSIMカードを無料で配っていることも珍しくなく、キャリアショップの店員がSIMカッターで切ってしまうこともあります。
もしSIMカードの所有権をユーザーに移すことができれば、日常的に買ったり、切ったり、捨てたりと、自由に扱えるようになるはずです。こうしてSIMカードをもっと身近なものにすることが、MVNOの活用につながるのではないでしょうか。
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