メジャーアップデートがなくなり、常に最新のOSに
これまでマイクロソフトは、数年に一度OSを大幅にアップデートし、その時にはOSの分の費用負担を求める、というビジネスモデルだった。費用負担を伴う機能の大幅アップと名称変更こそが、「OSのメジャーアップデート」だった、と言える。同じPCでもOSがメジャーアップデートすると、マイクロソフトに新しいOSの対価を支払う必要があった。
だがWindows 10では、OSのメジャーアップデートそのものがなくなる。数ヶ月のスパンで機能アップと不具合修正の双方が行われ、同じ「Windows 10」という名称の中で進化を繰り返していくことになる。PCにCPUが必要であるのと同じように、OSというパーツの対価として、マイクロソフトはWindowsから利益を得る。しかしそのサイクルは、今後、どこまで機能が上がろうと、理論的には「すでに対価を払ったもの」なので、追加の出費は生まれない、ということになる。今後のWindowsは、どこまで進化しようと「Windows 10」なのである。
一見、マイクロソフトが一方的に損をするようにも思える。しかし、それは見る方向が異なっている、と言える。
Windows 10でOSアップデートのあり方が変わる
これまで、OSのアップデートは色々難題だった。アップデート作業は難しく、きちんと情報収集してから進めないと、失敗してしまうかもしれない。機能が上がるのはいいが、費用負担もある。「別に新機能はいらない」という発想の人にとって、OSのアップデートは邪魔な存在だった。だからこそ近年は、PCのOSだけをアップデートする人は減り、OSは古いままPCを使い続ける人も多かった。古いOSが残り続けることは、セキュリティ対策の面でも、ビジネス展開的にもマイナスだ。最新のOSに特化したビジネスの方が、出てくるコンテンツにしてもサービスにしても、より有利である。
もちろんユーザーとしては、新しいOSについていく義理はない。Windows 7や8からのアップデートについても強制でも自動的なものでもなく、あくまで、自分が望んだ場合に限られる。
一方で、OSをWindows 10に移行した場合には、その後のアップデートのあり方は大きく変わる。現在、Windows Updateにてセキュリティ対策アップデートが自動で降ってくるように、機能アップを含むアップデートも自動で降ってくるようになり、OSの進化は連続的になる。コスト負担がない、という意味では、スマートフォン用OSやマックのOS Xのやり方と同じだが、一応あちらは「メジャーなバージョンの区切り」がある。それすらなくなる分、マイクロソフトの方がドラスティックなやり方と言える。企業などの場合、そうした進化が動作確認に追いつかないため、アップデートのサイクルをシステム部門が判断できる仕組みがある。だがどちらにしても、今までのように「メジャーバージョンアップを契機に動作状況を確認する」考え方は通用しなくなり、定期的に確認していくものになるだろう。
(次ページ、「ビジネスの方針転換を選んだマイクロソフト」に続く)
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