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前田知洋の“タネも仕掛けもあるデザインハック”第68回

CASIO「MGC-10」、開発秘話

2015年06月23日 09時00分更新

文● 前田知洋

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 6月10日より7月24日まで、カシオ計算機製の多機能化時計の歴史を紹介する特別展示が「樫尾俊雄発明記念館」で開催されています。現在、Apple Watchをはじめ、スマートウォッチが世界中で注目を集めています。しかし、40年以上前から多機能腕時計を研究開発、発売をしているCASIO。1982年にはなんと「英和・和英辞書を搭載」した腕時計、T-1500が発売されています。

 今回の特別展示では、僕が監修し、2006年に発売されたマジックができるデジタル腕時計『CASIO MGC-10』も展示。今回は、そのときの開発の秘話を紹介していきます。

NDA(秘密保持)契約にビビる…

 こうした企業とのコラボレーションで一番最初に結ぶNDA契約。テレビの仕事でも「これはオフレコで…」なんて話は良くありますが、契約書にハンコを押すのはもちろんこれが初めて。契約書には「NDA契約を結んだことも秘密」なんて条項もあるので、話好きの筆者は、かなり気を遣います(もうNDA契約期限は切れています。笑)。さらに、机の上に「秘密」とか「機密」と赤字の入った書類もたまります…。商品の完成後に秘密と書かれた資料をお互いに返却して、ひと安心するわけですが…。

 じつは、製作の秘話なども、発売後2年間は勝手に書けません。そんなわけで、満を持して今回のコラムで初公開です。

マジックと時計の関係は意外に深い

 「マジックができる腕時計を作りたい」とお話をいただいたのは、2005年のことです。突拍子のない申し出にも思えますが、マジックと時計の関係は意外に歴史があります。

 漫画の巨匠、手塚治が「鉄腕アトム」で描いたように、テクノロジーの究極の目的は「生命を生み出す」こと。それを実現しようとしたのは、ピエール・ジャケ・ドローが18世紀の後半に作られたといわれる「歌う鳥の箱」。

 現代人から見ればたいしたことないかもしれませんが、当時の人たちはその小鳥の動きと鳴き声に本物のように錯覚しました(ぜひ下の動画もご覧ください)。もちろん、ここに使われているのは、ゼンマイと歯車など、17世紀頃から発展した時計の技術です。

精巧なメカですが、鳥のサイズは1センチほど。すごくちっちゃいです

ピエール・ジャケ・ドローが発明したといわれる「歌う鳥の箱」(動画はドイツ製リプロダクト)

時計の技術を使ったマジシャン、ロベール・ウーダン

 そうした時計の技術をマジックに利用しようと考えたのは、以前のコラム「色をデザインする~黒が隠す感情、視覚的トリック」でも紹介した、19世紀のフランスのマジシャン、ロベール・ウーダン。マジシャンのトレードマークになった、燕尾服とシルクハットを衣装として着たことで「現代マジックの父」としても有名です。

 そんなマジシャンと時計の深い関係から、CASIO社からのコラボレーションの依頼に筆者は二つ返事で答えました。


 

(次ページ、「パイロット版はAppleのwidgetで作成」に続く)

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