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前田知洋の“タネも仕掛けもあるデザインハック” 第3回

色をデザインする~黒が隠す感情、視覚的トリック

2012年10月29日 09時00分更新

文● 前田知洋

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ローベール・ウーダン

 マジシャンのというと黒の燕尾服にシルクハットを想像する人が多い。その理由は、19世紀のフランス人マジシャンのロベール・ウーダンが「観客と同じような格好」をするために、当時の正装だった燕尾服を着たことから。ウーダンは舞台の照明も明るくして、ファンタジーに登場するような魔法使いのような演出もやめた。そんなスタイルは世界中に広まったから「現代マジックの父」と呼ばれている。

マジシャンの衣装に黒が多い理由

 僕はさすがに燕尾服は着ないけれど、衣装に選ぶジャケットは黒が圧倒的に多い。マジックに興味を持つ人と話すと「服の中に隠したウサギが見えないように、細く見える黒を着るんでしょ?!」なんて誤解する人もいるけれど、僕が黒いジャケットを着るのは、こんな理由から。

  • 慣習的な理由
  • 見る人の気分に作用する
  • 視覚的な効果

 慣習的な理由は、ロイヤルファミリーがご来賓するフォーマルな席でも通用するし、テレビのバラエティ番組のようなカジュアルな場所にも着ていくことができるから。日本ではドレスコードが告知されることが少ないので、会場についてみたら、意外にフォーマルだったり、カジュアルだったり、そんなときにも黒いジャケットは対応できる。

 黒や紺といった、ダーク系の色は見る人に少しだけ圧迫感をあたえる。世界中の多くの警察官の制服に黒や紺が多いのはそんな理由からだといわれている。着ている人を魅力的に見せる効果もあって、アメリカでは「(警察官や軍人など)制服を着ている男に一目惚れしてはいけない」なんて格言みたいなフレーズもあるくらいだ。

 最後の視覚的な効果というのは、膨張色(実際より大きく見える)、収縮色(実際よりも小さく見える)ことではない。黒い服は影やシワを見えにくくするから、緊張やリラックスといった身体の状態をわかりにくくする。

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