来たる2012年10月2日、AMDはデスクトップ向けGPU内蔵CPU「AMD AシリーズAPU」のラインナップを、開発コードネーム“Trinity”ベースの製品へアップデートする。
価格の手ごろさに加え、内蔵GPU性能の高さで話題を集めた製品の後継だけに市場でも期待は高まっているが、今回の新APUの発売に先立ち、内蔵GPUを使ったゲーム系ベンチと消費電力のベンチのみ先行公開できることとなった。編集部で入手した評価キットを元に、早速レビューしてみたい。
モデルナンバーは「A○-5xx0」に、内蔵GPUも7000番台へ
まずは第2世代AシリーズのAPU(以降これをTrinityと呼ぶ)の情報を整理してみよう。Trinityは昨年から発売された第1世代のAシリーズ APU(開発コード「Llano」)を置き換えるものだ。Llano世代の製品には“A○-3xx0”というモデルナンバーがついていたのに対し、Trinityでは“A○-5xx0”と、5000番台の番号で識別される。
製造プロセスはLlanoと同じ32nm、アーキテクチャはBulldozerコアを効率化した“Piledriver”を使い、下位2モデルを除き物理4コア版が主力となる。動作クロックはLlanoが定格3GHz(A8-3870Kの場合)までだったが、Trinityでは最高3.8GHz、さらにTurbo Core時に4.2GHzまで上がるなど、動作クロック的にもかなりの強化になっている。
以下にAMD資料から判明した各モデルのスペックを示す。なお、価格は本記事がアップされる9月27日時点では非公開扱いとなっている。
| CPUスペック | ||||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| モデルナンバー | A10-5800K | A10-5700 | A8-5600K | A8-5500 | A6-5400K | A4-5300 |
| CPUコア数 | 4 | 4 | 4 | 4 | 2 | 2 |
| CPUベースクロック | 3.8GHz | 3.4GHz | 3.6GHz | 3.2GHz | 3.6GHz | 3.4GHz |
| ターボ時クロック | 4.2GHz | 4.0GHz | 3.9GHz | 3.7GHz | 3.8GHz | 3.6GHz |
| キャッシュ搭載量 | 4MB | 4MB | 4MB | 4MB | 1MB | 1MB |
| 搭載GPU | Radeon HD 7660D | Radeon HD 7660D | Radeon HD 7660D | Radeon HD 7660D | Radeon HD 7540D | Radeon HD 7480D |
| ストリーミング プロセッサ数 |
384 | 384 | 256 | 256 | 192 | 128 |
| GPUクロック | 800MHz | 800MHz | 760MHz | 760MHz | 760MHz | 723MHz |
| TDP | 100W | 65W | 100W | 65W | 65W | 65W |
今回注目したいのは内蔵GPUの型番。第1世代の製品には「Radeon HD 6550D」など、HD 6000番台の型番が付いているのに対し、Trinityでは最新のHD 7000番台に更新されていることだ。
ただこのHD 7000番台という型番を鵜呑みにはできない、ということだ。考えてみれば、HD 7000番台のGPUは28nmプロセスで製造され、アーキテクチャはGCN(Graphics Core Next)であるはずだが、Trinityは前述の通り32nmプロセスでCPUコアと統合され、さらにAMDの資料によるとアーキテクチャは「VLIW4」となっている。
つまるところ、HD 6000世代の設計をそのままHD 7000番台として付けたもの、ということになる。考えてみれば、今年5月に先行して登場していた「モバイル版Trinity」でも、GPUコアはHD 6000番台だった。今回のデスクトップ版Trinityも、同じ設計になっていると考えるのが妥当だろう。
チップセットはA85に
ソケットも変更される
Trinityに対応するチップセットは新開発の「A85」のほか、既存の「AMD A75/A55」が利用できる。しかしTrinityのソケット形状は新しい「Socket FM2」が採用されており、Llano世代で使われていた「Socket FM1」とはまったく互換性がない。
この改変の理由は、Trinityの電源管理機能を強化するため、電源供給の設計を大きく変えざるを得なかったためだ。具体的な設計面の差異は不明だが、後ほど消費電力テストで実力を見ることにしよう。
ただ、ユーザーの目から見れば、Socket FM1仕様のA75マザーはTrinityでは使えないというのは何とももどかしいのも事実。マザー買い替え価格とセットで考えなければならないのが残念だ。
Socket FM2(左)とFM1(右)のピン配列を比較すると、中央あたりのピン配列が微妙に異なることがわかる。中央にある黄金の▼マークの位置関係と比較するとわかりやすい。ピン数もFM1より1本少ない904本で構成されている
| チップセットのスペック | ||||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| チップセット | A85 | A75 | A55 | |||
| PCI Express構成 | 1x16/2x8 | 1x16 | 1x16 | |||
| CrossFire対応 | ○ | × | × | |||
| SATA構成 | 6Gb/s×8 | 6Gb/s×6 | 3Gb/s×6 | |||
| FIS-based Switching | ○ | ○ | × | |||
| USB 3.0 | 4 | 4 | 0 | |||
| USB 2.0 + 1.1 | 10 + 2 | 10 + 2 | 14 + 2 | |||
Trinityに対応したチップセットは3種類。A75/A55はLlano世代から存在するが、Socket FM2を装備していないとTrinityでは使えない点に注意したい。FIS-based Switchingとは、SATAのポートマルチプライヤーにおける方式なので、一般ユーザーにはあまり関係ない。
※お詫びと訂正:記事初出時、チップセットのスペック表の一部に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。(2012年9月27日)

この連載の記事
-
第473回
デジタル
Ryzen 7 9800X3Dと9700Xはどっちが良いの?! WQHDゲーミングに最適なRadeon RX 9060 XT搭載PCの最強CPUはこれだ! -
第472回
sponsored
触ってわかった! Radeon RX 9070 XT最新ドライバーでFPSゲームが爆速&高画質に進化、ストレスフリーな快適体験へ -
第471回
デジタル
8TBの大容量に爆速性能! Samsung「9100 PRO 8TB」で圧倒的なデータ処理能力を体感 -
第470回
デジタル
HEDTの王者Ryzen Threadripper 9980X/9970X、ついにゲーミング性能も大幅進化 -
第469回
デジタル
ワットパフォーマンスの大幅改善でHEDTの王者が完全体に、Zen 5世代CPU「Ryzen Threadripper 9000」シリーズをレビュー -
第467回
デジタル
Radeon RX 9060 XT 16GB、コスパの一点突破でRTX 5060 Tiに勝つ -
第466回
デジタル
Radeon RX 9060 XTは6.5万円でVRAM 16GBのお値打ちGPUになれたか? -
第465回
デジタル
遅れてやってきたPCIe5.0 SSDの大本命、リード14GB/秒超えのSamsung「9100 PRO」を実機レビュー -
第464回
デジタル
Radeon RX 9070シリーズの仕上がりは想像以上だったことがゲームベンチでわかった -
第463回
デジタル
Ryzen 9 9950X3Dは順当進化。3D V-Cache搭載Ryzenの最強モデルだがクセありな部分はそのまま -
第462回
デジタル
RTX 5070の足を止めた「Radeon RX 9070 XT/ 9070」レビュー - この連載の一覧へ











