ストレージの導入するにあたっては、製品の価格だけではなく、実効容量やトータルの運用コストにも考慮しなければならない。従来型NASと比べたアイシロンの実効容量やTCOについて、調査会社テクノ・システム・リサーチの池田英信氏に聞いた。
意外と知られていない実効容量の落とし穴
他社を凌駕する拡張性や性能を実現するアイシロンだが、登場当初から高価と言われてきた。スケールアウトNASという製品の性格上、最小ノードは3台でスタートしなければならないし(追加は1ノード単位)、ノード間を接続するためInfiniBandのスイッチも必要になる。高い拡張性とパフォーマンス、そしてデータ保護を実現するOneFSに関しても、その品質を担保すべく、それなりのコストが製品に反映されていると考えてよいだろう。この結果として、冒頭のような「高価」という評価に結びついているようだ。
しかし、ストレージ関連の市場調査で高い実績を持つテクノ・システム・リサーチマーケティングディレクター 池田英信氏は、従来型NASと比較しても、アイシロンは決して高価ではないと主張する。池田氏は、「古くからストレージを選定するにあたっては、物理的な容量を重視してきました。しかし、RAIDのような技術が一般化した昨今では、ユーザーが利用できる実効容量を重視すべきです」と語る。これはどういうことだろうか?
一般的な外付けストレージは単に複数のディスクを搭載しているだけではなく、これらを束ねて1つのディスクアレイを構成している。ここで利用されているのが、ご存じRAIDの技術である。RAIDは用途にあわせて複数のレベルが存在しているが、企業向けのストレージにおいてはRAID1や5などのデータ保護を重視したレベルを採用する。しかし、RAIDでデータ保護を実現するためには、冗長化ビットであるパリティを別途保存する容量が必要になる。RAID5であれば、3台のHDDのうち1台分はパリティ分として消費されてしまうのだ。
また、一般的なディスクアレイ装置では、ディスクの故障用のホットスペア領域や未使用領域が必要になる。さらに最新のストレージ製品は機能もリッチであるため、OSやファイルシステムなども肥大化する傾向にある。こうしたことを考慮すると、物理容量に比べ、実効容量はかなり小さくなってしまうのだ。結果として、RAIDを用いる従来型NASに比べて、RAIDを使わないアイシロンのほうが、高いコストパフォーマンスが得られるというわけだ。
(次ページ、200TBが必要なのに432TBの物理容量を用意?)
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