テラバイト単位のデータを扱うストレージにおいては、「マイグレーション」の手間とコストは大きな問題である。しかし、アイシロンでは、旧機種から新機種にデータを移行するマイグレーションの作業にコストが発生しないという。
新機種へのリプレースに必須
マイグレーションとは?
保守切れや陳腐化したストレージを新機種にリプレースする際に必ず発生するマイグレーションの作業。旧機種からデータや設定を新機種にまるごと移したのち、切り替えを実施。設定を変えずにサービスをそのまま利用するようにするわけだ。ここでは、ストレージのマイグレーションサービスを提供するあるSIerの話を元に、従来型NASでのマイグレーション手順を具体的に見ていく(図13)。
まずは旧機種の所属していたネットワークに、旧機種と異なるIPアドレスとホスト名の新機種を導入。ベンダーのレプリケーションツールやフリーのコピーツールを用いてデータの転送を行なう。しかし、動作中の場合にマイグレーションの作業を行なう場合、つねに新しいファイルが作られたり、編集されたり、削除されてしまう。そこで、定期的に差分を新機種に転送し、旧機種への最終差分を転送したのち、旧機種へのユーザーアクセスを停止。その後、旧機種をシャットダウンし、新機種のIPアドレスとホスト名を旧機種と同じものに変更して、再起動する。これにより、ユーザーは設定を変更することなく、新機種を利用できることになる。
SIerも頭を抱えるマイグレーションの実態
このようにマイグレーションの手順自体は決して複雑ではない。しかし、転送するデータ容量が数10GB単位で済んでいた頃であれば問題はないが、数TBを超えるとその手間とコストは今までと比較にならないくらい大きくなる。ベンダーが用意したレプリケーションツールではブロック転送になるものの、数日かかるケースもある。サイズの大きいファイルであればともかく、ファイル数が多いと、特に時間がかかるという。
さらにツール等が使えない異ベンダー機種間での転送は、汎用のツールやコマンドで転送する必要があるという。こうなると、両者の間にPCを挟む構成になるので、ますます転送時間がかかってしまうことになる。ツールによっては、転送に移る前の差分転送の計算で時間をとってしまうこともある。
マイグレーション作業で時間がかかるということは、プランニングが難しいというわけだ。前述したとおり、マイグレーションにおいては、新機種にホスト名とIPアドレスを付け替えなければならず、最終データの転送や設定変更による再起動で、どうしてもサービスのダウンタイムが発生してしまう。そのため、これを許容する時間帯を前提にプランを立てなければならないわけだ。
しかも、データ転送がきちんと時間通り、問題なく行なわれるか補償はない。データの種類によっては、途中で転送失敗に陥る場合もあり、想定した時間で終わらなければ、作業は振り出しに戻り、またプランを仕切り直す必要がある。
ここまででマイグレーションはきわめて時間と労力のかかる作業であることがわかる。そして、この時間と労力をアウトソーシングする場合、当然大きなコストがかかることになる。今回話を聞いたSIerでは、従来型NASの200TBのマイグレーションサービスとして約500万円という見積もりを出すという。内訳はおもに人的なコストだというが、200TBのデータ移行ともなると、依頼を受けてから要件確認、環境調査、構成設計、テスト、データ移行、検証、報告書作成など数ヶ月にもおよぶケースもある。慎重にも慎重を期するデータ転送作業、新機種への移行を問題なく実現するためのプランニングなど、本来ユーザーが行なう手間をアウトソーシングしていると考えれば、妥当な価格である。しかし、ユーザー側としては、新機種導入のためのコストから工面しなければならず、大きな負担だ。
マイグレーションがないのはスケールアウトNASだから
これに対して、アイシロンにはマイグレーションという作業が必要ない。というより、そもそもマイグレーションという概念がない。これはスケールアウトNASだからこそのメリットといえるだろう。
前パートで見たとおり、アイシロンでは複数のノードを単一のストレージと見なしており、ユーザーがアクセスしているIPアドレスやホスト名で横断的にクラスター全体にアクセスできる。そのためノード追加に関してもIPアドレスの付け替えなどもまったく考慮する必要がない(図14)。
また、アイシロンでは書き込みやデータの平準化も、容量に合わせて自動的に行なっている。そのため、基本的には新機種をクラスターに追加することでマイグレーションが行なえてしまうのである。旧機種をシステムから外す際も、管理画面でクリックするだけでデータを旧機種から新機種に移動させることができる。データの移動が終了したら、旧機種をシステムから外せば移行は完了する。
このようにアイシロンは大掛かりなデータマイグレーションの作業をまったく必要とせず、コストもかからない。言ってみれば、アイシロンを初めて導入するときに、以前使っていたストレージから1度だけマイグレーションを行なってしまえば、その後は新機種を導入しても一切マイグレーションの悩みから解放されるということである。
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このようにアイシロンはマイグレーションという観点でも優れたコストパフォーマンスを実現することがわかった。SIerにとっても、エンドユーザーにとっても優しいストレージというわけだ。次パートでは、アイシロンが新たに挑むビッグデータの領域について解説する。
(提供:EMCジャパン)
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