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SOUND TECTORのデスクトップゲーミングスピーカーはどのように作られた?

感動した俺は山形県に飛んだ、パイオニアのゲーミングスピーカーが「驚きの音の良さ」

2025年03月24日 12時00分更新

文● 貝塚 編集●ASCII

提供: パイオニア

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東北パイオニアで、SOUND TECTORの開発陣に話をきいた。写真左から、回路設計を担当した設楽一美氏、機構設計と機器の動作確認やデバッグを担当した海和健史氏、主に音のチューニングを担当した玉井遥氏、商品まとめ・ソフトウェア・音のチューニングを担当した髙垣洋平氏

フロントスピーカー、ウーファー、エンハンサー
3点セット生み出す驚異的な臨場感

 パイオニアのゲーミングスピーカーが、ゲーマーやオーディオ好きのあいだで話題になっているらしい。

 はじめにそう教えてくれたのは営業のMさんだ。

 会社に行ったとき「首にかけたりして使うんだよ!」とMさんが話していたので、「ああ、なんかネックバンド式のゲーミングスピーカーなんですかねー」と言ったら、違うらしい。

 コンパクトフロントスピーカー「TQ-FG3000」、スリムパワードサブウーファー「TQ-WG3000」、リアサウンドエンハンサー「TQ-RG3000」を3点セットで使うことで、7.1chのサラウンド環境をコンパクトな環境で実現するという製品らしいのだ。

コンパクトフロントスピーカー「TQ-FG3000」(写真手前右側)、スリムパワードサブウーファー「TQ-WG3000」(写真奥)、リアサウンドエンハンサー「TQ-RG3000」(写真手前左)

 なにやら、珍しい感じだな。おもしろそうだな。そう思った私はひとまず試してみることにした。

 結論からいうと「なにこれ、ものすごくいいぞ?」ってなった。驚きがあった。

 3点セットという構成から私は、「まあ、前と後ろから音が聞こえるんでしょうね。そしてサブウーファーで重低音も補強されているのでしょう」と、予想して聴いたのだが、左右に大きく広がっていくような、コンパクトなボディーからは予想できない音の広がり方をしている。想像をはるかに超えている。

 マルチで出力する場合、それぞれのスピーカーとスピーカーの音のつながりが課題となる(帯域が被ってしまい濁ったり、明瞭感が薄れたりする)ことも多いが、そういったこともない。3点のスピーカーが一体となって、ゲームの世界の音をとても自然に鳴らしている。

 特にリアサウンドエンハンサーは斬新。3D音源対応のゲームで使うと、背後の音の定位がリアルになり、振り向く前に敵の位置を把握できるほど、音の精度が高い。

 単にゲーミング用スピーカーというよりは、コンテンツの持っているサウンドステージで体が包み込まれるような感覚を味わわせてくれるデバイス、そんな風に言った方がいいかもしれない。特にFPSやオープンワールドのゲームでは、音の距離感や方向性が明瞭になる分、没入感は桁違いに向上する。

東北パイオニアで見た“音作り”へのこだわり

 私は感動した! この音がどんな場所でどんな風に生まれたのか。それを知るために、私は山形県天童市にある東北パイオニアの開発・製造拠点を訪れた。

 この拠点は、1966年設立の歴史ある工場で、現在は主に「carrozzeria」ブランドやカーメーカー向けのスピーカー、本稿で紹介しているゲーミングブランド「SOUND TECTOR」シリーズ、同社のフラグシップブランドである「TAD(Technical Audio Devices )」などを開発・製造している。

パイオニアの歴代オーディオ製品をアーカイブしている展示室

 敷地は非常に広大で、生産ラインだけでなく、様々な測定室や検査室、実験設備が数多く存在。さらにパイオニアの歴代オーディオ製品をアーカイブしている展示室もあり、その歩みを辿ることもできる。

 ここで目を引いたのが、スリムパワードサブウーファー「TQ-WG3000」に採用されている「HVT(Horizontal-Vertical Transforming)」技術の模型。もともと車載向けに開発された技術で、ボイスコイルの水平方向の動きを、テコの原理を使って垂直方向に変換し、薄型で高性能なウーファーを実現するというものだ。

HVT(Horizontal-Vertical Transforming)」技術の模型。

ボイスコイルの水平方向の動きを、テコの原理を使って垂直方向に変換し、ユニットの厚みを大きく抑える技術

 無響室や残響室といった高度な音響試験設備も整えている。無響室は室内の反響音を極力抑え、測定マイクの軸上の音だけを測定する設備。一方、残響室は無響室とは真逆で、音の減衰を最小限に抑えて、スピーカーのエネルギーを測定する設備。測定データは様々なシミュレーションにフィードバックされる。

無響室は敷地内に5室。立ち入るとすべての反響が消えた「無」の世界

 特別に無響室に立ち入らせてもらった。感想は「え、本当に無なんですが」というところ。この無響室は二重構造になっており、外側には分厚いコンクリートの部屋がある。無響室は内部は吸音ブロックを壁一面に回らせているだけでなく、コンクリートの部屋の中に浮いた構造になっており、外部の騒音は勿論、振動さえも排しているそうだ。

 ふだん聞いている音は、壁から跳ね返ってきた音が混ざっている音なのだと知った。無響室や残響室は、毎日予約で埋まっていることが多いらしい。それだけハイペースに、開発に伴う測定が繰り返されているのだろう。

 「不思議な感覚で、耳がおかしくなったかと思いますね」と呟くと、「そうでしょう。でも、エンジニアになって毎日入ると、慣れちゃうんですよ」とパイオニア社員の方。

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