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スケールアウトNAS「アイシロン」のすべて 第1回

ファイルシステムもボリュームも1つ!

従来型NASの限界を打ち破るアイシロン

2012年10月10日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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企業で取り扱うデータがうなぎ上りで増加しているというのは、システム管理者やエンジニアであれば、誰しも実感しているところ。こうしたデータ爆発に対して、最適なストレージとして注目を集めているのが、スケールアウトNASの始祖とも呼べる「EMCアイシロン(以下、アイシロン)」だ。

目の前にあるデータ爆発にどう対応する?

 「ファイルサーバーの容量が足りない!」「いくらディスクを増設してもデータが収まらない!」「NASを増やすと性能が落ちてしまう……」という悲鳴は、多くの会社の情報システム部から聞こえてくる。企業で扱うデータは加速度的に増大し、しかも多様化している。この傾向は、調査結果からも明らかで、データベースに格納されている構造化データはもちろん、いわゆるファイルで扱われている非構造化データ、さらには複製データ、らにマルチメディア系の「コンテンツデポ」と呼ばれるデータなどが、一様に増加しているのが昨今の傾向だ(図1)。特にわれわれがファイルとして扱う非構造化データの増加スピードは年間で45.6%と著しく、2013年には販売されるストレージ容量のうち、8割がファイルベースになると言われている。

図1 構造化、非構造化を問わず年々増加するデータ /出典:IDC Japan, 2012年5月「国内ディスクストレージシステム市場 2011年の分析と2012年~2016年の予測」(J12430103)

 もちろん、ビジネスがテキストやワード文書、メールだけで成り立つのであれば、このような問題は発生しない。しかし、最近ではオフィスにおいてもマルチメディア化が進展し、写真や動画など大容量のデータが扱われるようになり、これらがネットワークやクラウドを介して、相互に行き交うようになってきた。そして、これらを保護したり、加工るために、次々とデータのコピーが作られる。この結果、まさに雪だるま式にデータ量が膨れあがっていくわけだ。

 「卵が先か、鶏が先か」のたとえの通り、データの格納庫であるハードディスクの低価格化が進んだこともデータ爆発に拍車をかけている。コストをかけずにデータをファイルサーバーに保管できるのであれば、エンドユーザーが使用しないデータを残しておいても情報システム部には目をつぶってもらえる。こうしているうちに使用しないデータが溜まり、整理できない状態まで拡大してしまうのだ。

 さらに、昨今はビッグデータの時代が到来している。人間から生み出される業務データやSNSのデータだけではなく、機械によって生成されるセンサーデータまでを分析し、企業の競争力増大や社会インフラの拡充に活かそうというビッグデータは、大容量ストレージを前提としたソリューションである。今までのようにいやおうなく増えるデータだけではなく、ビッグデータを見越して戦略的に増やそうというデータも登場してきたわけだ。いずれを扱うにしろ、こうした「データ爆発」は企業の情報システム部にとって避けて通れない問題である。

容量も性能も頭打ち! 従来型NASはもう限界

 こうしたデータ爆発という現状に対して、これまで企業のデータの保管場所として機能してきたのはご存じNAS(Network Attached Storage)である。汎用サーバーをベースにしたファイルサーバーに比べて、性能が高く、設定や管理が容易なNASは、2000年代の前半、多くの企業で導入された。部署や拠点に分散していたファイルサーバーをセンターのNASに統合するプロジェクトがあちこちで走っていたのも記憶に新しい。しかし、1990年代後半に設計された従来型NASは現在のようなデータ爆発を想定しておらず、さまざまな面でその限界を露呈しつつある。

 従来型NASの最大の欠点は、拡張性の欠如だ。HDDの容量が1TBを上回るようになった昨今では、物理容量でペタバイトクラスまでカバーするストレージ製品が増えた。しかし、実際、論理的な単一ボリュームでは数テラバイトで、多くても100TBが限界だ。そのため、容量がオーバーした場合は、また別のボリュームを切り出さなければならず、ボリュームやファイルシステムがどんどん増え、設定や管理の負荷は大きくなる(図2)。新規にボリュームを構成するにも、まずRAID設定やボリューム設計などを行なったのち、ディスクアレイとファイルシステムを構築。その後、エンドユーザーに公開するマウントポイントとユーザーやフォルダーごとの共有設定をボリュームごとに行なう必要がある。これらの作業を手動で行なうのは、きわめて手間がかかり、大きな負荷とコストが生じる。

図2 拡張性に限界のあるNASが複数あると、複雑になる

 また、従来型NASでは単一ノードでカバーできる容量を超えてしまう場合、いったんストレージを停止し、マイグレーション作業を行わなければならない。これでは人が増えるたびに、建物を増築したり、引っ越しを行なわなければならないのと同じ。データの増大に対応しているとはいえないだろう。

 このような従来型NASの課題を解決すべく、開発されたのがスケールアウトNASである。スケールアウトNASは増え続けるデータに対応すべく、あらかじめ「拡張できるよう」設計されたNASであり、今まで多くのストレージユーザーが感じていた不満を解消する。具体的には、複数台のディスクアレイ装置を相互接続し、単一のボリュームとして見せかけ、容量を自由に拡張できるようにした仮想化ストレージ製品といえる。もちろん、容量の拡張だけではなく、パフォーマンス、信頼性、データ保護などをユーザーの不満をすべて解決すべくさまざまな仕組みが盛り込まれている。

 このスケールアウトNASの始祖が、今やEMCの戦略製品となった「アイシロン」である。

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