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累計販売台数100万台突破のシャープ製ウォーターオーブン

水で焼く? 水蒸気で焦げ色が? ヘルシオの謎に迫ってみた

2012年03月12日 11時00分更新

文● 石井英男

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小学生でも分かる、ヘルシオのひみつ10

 ではさっそく、誰もが気になる素朴な疑問に対して、Q&A方式で答えていこう。


Q1:ヘルシオってどれくらい売れてるの?

A1:2011年に累計販売台数100万台を突破!

2004年9月に発売されたヘルシオの初代機「AX-HC1」

 ヘルシオは、初代機が登場した2004年から毎年新製品が発売されており、現行製品は第8世代となる。世代を経るごとに改良が施され、より便利で使いやすい製品に進化している。

 各世代ごとの販売台数は未公表だが、2011年5月に累計販売数100万台を達成したことが明らかにされている。7年弱で累計100万台というのはなかなかのハイペースであり、ヘルシオが市場で高い人気を得ていることがわかる。


Q2:ヘルシオ開発の経緯を教えて!

A2:開発のヒントは「ふぐ」だった!?

 ヘルシオは、家庭用オーブンレンジとして業界初の「過熱水蒸気を使った調理」を実現した画期的な製品だが、その開発意図には、調理レンジ製品のコモディティー化に歯止めをかける狙いがあった。

 シャープは以前から電子レンジやオーブンレンジを販売していたが、十数年前から電子レンジの平均単価が年々下がっていることに危機感を覚えていたという。それというのも、電子レンジの世帯普及率は2000年の段階で90%を超えており、製品として成熟を迎える一方、価格競争に突入していたのだ。

 そこでシャープの開発メンバーは、電子レンジに代わる「新しい調理器」をテーマに研究を開始した。これが、ヘルシオ開発のそもそもの発端であり、2000年春頃のことである。それから2000年秋までの半年間、電子レンジに代わる調理方法を探し続け、その結果たどり着いたのが過熱水蒸気だった。

 あるとき、山口県産業技術センターで「過熱水蒸気を使ったふぐの加熱殺菌」の研究をしているという話を聞きつけた開発メンバーたちは、さっそく現地に飛んだ。そして過熱水蒸気で加熱殺菌されたふぐを味見させてもらったところ、表面がぱりっとして、中はジューシーでとても美味しく、これはいけそうだということで、過熱水蒸気を利用した新型調理器の開発が始まったという。

100万台突破のベストセラー家電は、山口県産業技術センターによるふぐの加熱殺菌研究がヒントになって開発された

 しかし、過熱水蒸気を利用することが決まってからも開発は困難を極め、初代機が完成するまでに3年以上の歳月を要した。

 ちなみに、ヘルシオ初代機「AX-HC1」の(発売時の)実売価格は12万強と、当時の高級電子レンジと比べても「かなりお高い」ものだったが、その後、各社からヘルシオ対抗製品が発売されたことによって、これまで下がる一方だった電子レンジ/オーブンレンジの平均単価がピタリと下げ止まり、上昇に転じたという。

 ヘルシオは、従来の電子レンジの「安い、早い、便利」という評価軸に、「健康によい、美味しい」といった新たな評価軸をもたらすことで、市場のトレンドを大きく変えたのだ。


Q3:過熱水蒸気って一体何? 水蒸気や湯気とは違うの?

A3:水蒸気をさらに加熱すると過熱水蒸気になる!

 ヘルシオの最大のウリは、過熱水蒸気を利用して調理することだが、この過熱水蒸気とは一体何なのだろうか? まずはその謎から探っていきたい。

 水は、人間にとって最も身近で重要な液体だが、みなさんご存じの通り、温度によってその姿を変える。1気圧の環境においては、水は0℃で固体の氷に変化し、100℃で気体の水蒸気に変化する。つまり、水が液体として存在できるのは0℃から100℃の範囲だけなのだ(圧力が変われば異なるがここでは1気圧を前提とする)。

 水が加熱され、気体になったものが水蒸気だが、水蒸気は無色の気体であり、目で見ることはできない。ここで注意して欲しいのは、水蒸気と湯気(ゆげ)の違いだ。熱いスープや沸騰しているヤカンなどから、白い湯気が立ち上っているのを見たことがあると思うが、この湯気は水蒸気ではない。非常に細かな水滴の集まりなのだ。

 雲や霧など、白く見えるものはすべて水蒸気ではなく、水滴の集まりである。沸騰中のヤカンの口から出ている湯気をよく見ると、口のところから直接湯気が立ち上っているのではなく、口のすぐ近くは透明で、そこから少し離れたところから白い湯気に変わっていることがわかる。

 このヤカンの口から出ているものこそ無色透明の水蒸気だ。これが外気によって冷やされて細かな水滴――湯気となることで、はじめて視認できるわけだ。

 さて、水が加熱され100℃になると水蒸気に変わるが、その水蒸気をさらに加熱すると、さらに温度が高い水蒸気になる。これを過熱水蒸気と呼び、通常の水蒸気よりも高い熱エネルギーを持つ。

 ヘルシオの場合、過熱水蒸気の温度は300℃を超えており、通常のオーブンと比べても遜色はない。それどころか、過熱水蒸気が食品に触れて水に変化する際に、大量の熱(潜熱)が発生するため、食品に伝わる熱量は、オーブン加熱の約8倍にもなるのだ。

※オーブン230℃調理時の1m3あたりの熱量と比較した場合。過熱水蒸気1m3あたりの熱量(230℃):298kcal/m3、熱風1m3あたりの熱量(230℃):35kcal/m3

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