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西田 宗千佳のBeyond the Mobile 第79回

国内メーカーUltrabook第1号 dynabook R631の実力は?

2011年11月11日 12時00分更新

文● 西田 宗千佳

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バッテリー駆動時間は良好

 バッテリー駆動時間も良好だ。カタログ値は「約9時間」(JEITA測定法1.0による)。バッテリーベンチマークソフト「BBench」による計測では、最大5時間以上の動作が確認できた。カタログ値とBBenchによる実測値に開きがあるのはいつものことだが、これまで試した多くの製品と比べても、その開きは小さい。重量と用途のバランスを思えば、現状では満足できるレベルだ。

BBenchによるバッテリー駆動時間テスト
バランス設定 省電力設定
約3時間45分 約5時間13分

 この点でプラスに働いているのは、省電力ユーティリティーのわかりやすさだ。「TOSHIBA ecoユーティリティ」と呼ばれるこのソフトは、特にR631用に導入されたものではない。しかし、その価値はUltrabookのような製品でこそ生きる。消費電力がしっかりとグラフで可視化され、「どこをどう変えるとどのくらい消費電力を抑えられるのか」がわかりやすいため、自らのニーズに合わせて設定がしやすい。

 キーボード上にある「ecoボタン」で設定を切り替えられる、という機能があるが、これはこのような可視化がされているからこそ有効だ。ボタンで切り替えられるという要素はもう珍しくないが、「切り替えるとどうなる」ということがわかっているからこそ使いやすい。

「TOSHIBA ecoユーティリティ」。消費電力設定を行なうアプリだが、それ以上に、消費電力を可視化する機能が優秀でわかりやすい

 ecoユーティリティ同様に、東芝のパソコンに共通した使い勝手向上に寄与する要素なのが、「東芝高速スタート」だ。これは、終了時に「東芝高速スタート」アプリから終了すると、高速スタートモードでパソコンを終了し、次回の起動を高速化するものだ。R631の場合、実測でおおむね8秒から10秒の間といったところだった。高速起動・復帰は他社製品でも実現されているが、やはり快適さの実現には欠かせない。

「東芝高速スタート」。スタートメニューの一番上に登録されており、こちらから終了することで次回の起動時間を短縮する

Office 2010付属よりも
高解像度なディスプレーの採用を

 R631は快適なパソコンだ。だがこの快適さが実現できているのは、Ultrabookだからではなく、東芝が積み上げてきたものの成果が生かされているからだと感じる。完成度だけで評価するなら、第1世代Ultrabookの中でもトップクラスであるのは間違いない。

 だが他方で、「日本向けの仕様」であるがゆえのずれを感じる部分もある。例えば数多くのプレインストールソフトがあり、画面がアイコンだらけなのにはうんざりさせられる。また、13.3型ディスプレーであるにも関わらず、解像度は1366×768ドット。悪くはないが、ASUSの「ZENBOOK UX31E」や、MacBook Air 13型モデルが、似た価格帯でより解像度の高いディスプレーを採用していることを思うと、残念な仕様である。

 Office 2010のバンドルよりもディスプレー解像度を……、と考えるのは私だけではないはずだ。従来のノートパソコンのイメージであれば、Office 2010のバンドルの方が優先されるのだろうが、そろそろパソコン利用のフェーズも変わりつつあると思うのだ。Officeスイートも大切だが、交換が利かないデバイスであるからこそ、ディスプレー解像度の方を優先してほしかった。

 なお次回は、R631開発のコンセプトや、実現に当たっての課題をどう克服したのかについて、R631開発チームへのインタビューをお届けする予定である。

お勧めする人
・薄型で軽量なノートパソコンを求めている人
・コストパフォーマンスの良いパソコンを求めている人
dynabook R631の主な仕様
CPU Core i5-2467M(1.60GHz)
メモリー 4GB
グラフィックス CPU内蔵
ディスプレー 13.3型ワイド 1366×768ドット
ストレージ SSD 128GB
無線通信機能 IEEE 802.11b/g/n、WiMAX
インターフェース USB 3.0×1、USB 2.0×2、HDMI出力、10/100/1000BASE-T LANなど
サイズ 幅316.0×奥行き227.0×高さ8.3~15.9mm
質量 約1.12kg
バッテリー駆動時間 約9時間
OS Windows 7 Home Premium SP1 64bit版
予想実売価格 15万円前後

■関連サイト

■Amazon.co.jpで購入

筆者紹介─西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、アエラ、週刊東洋経済、月刊宝島、YOMIURI PC、AVWatch、マイコミジャーナルなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「iPhone仕事術!」(朝日新聞出版)、「iPad vs.キンドル」(エンターブレイン)、「メイドインジャパンとiPad、どこが違う? 世界で勝てるデジタル家電」(朝日新聞出版)、「知らないとヤバイ! クラウドとプラットフォームでいま何が起きているのか?」(共著、徳間書店)。「電子書籍革命の真実 未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)、「災害時ケータイ&ネット活用BOOK」(共著、朝日新聞出版)。最新刊は「形なきモノを売る時代 タブレット・スマートフォンが変える勝ち組、負け組」(エンターブレイン)。

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